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<キャリア論>読了メモ 「日本人が外資系企業で働くということ」


概要

欧州での外資、内資の海外法人の経験を豊富に持つ筆者(シーメンス日本法人元社長の藤田研一氏)が、特に経営観点で、日本企業や外資系企業(欧州、米国)での組織の違いや仕事を進めて行く上での文化的な違いについて中心に述べている。端的に言えば外資と内資の組織論

印象的だった内容ピックアップ(一部GOTOの解釈あり)

・日本で営業している(具体的には外資企業日本法人で製品・ソリューション営業をしている)ときに耳にする、「導入事例は他にあるのか?」という質問は、日本固有のものである(実際、本社側にその件を持っていてもなぜ疑問に思うのか?と訝しがられることが多い)。この背景としては、日本の前例主義があり、横並びの村社会的文化がある。その前例主義の文化的特徴としては、集団規模による安全性を求める気質、不確実性の回避である
・「日本は異質」であることを早期に認識することが重要である
・筆者経験によると、本社側から日本法人の出張時には、「日本出張大成功レポート」が(典型的には)書かれてしまう。日本法人側の立場としては、このレポートを信じて明日にでも受注を期待する本社と、「長いお付き合いでの関係構築」を望む顧客との間で厄介な立場に追い込まれるケースがある。日本では顧客との関係構築に時間を要するため(スリムな=リーンな組織では日本組織はコストパフォーマンスが低いため、なおさら)日本法人のディレクターやマネジメント層の無能論やリーダーシップ不足論に発展する可能性があり、ジレンマをかかえることが多かった、とのこと
・欧米契約書は低コンテキストであるため、契約書は長くなり、日本はこうコンテキスト文化であるため、契約書の言葉の定義をあまり細かくする必要はなく、逆に契約書は短くなる、といったように文化的な違いが如実に出る。
・日本の人事は村社会の掟ともいうべきであり、村社会のルールが変わればそれは大きなルール変更としてニュースになることが多い(例:成果主義の導入、メンバーシップ型からジョブ型雇用への変更などが大々的にニュースになるなど)。このようなことがニュースになること自体が、世界的にみるとかなり特殊である。
・演繹法と帰納法の違い。日本はカイゼン文化に代表されるように、今までのプロセスを踏まえた帰納法的なアプローチを好む傾向にあることを認識すべき
・レポーティングラインがマトリックス組織であることはよくあるが、本国上司と所属国の管理元(カントリーマネージャーなど)を持つ場合に、非常に悩ましい状態となることが多い(筆者曰く、例えるなら嫁姑問題的な状況だということ。→そういった意味でも職場と家庭での文化のスイッチをきちんと切り替えることが中長期の仕事と家庭の両立で必要である、とのこと)
社外でも使える人=社内で出世できる人=転職できる人という図式が成り立つので、定期的にも、職務経歴書や履歴書で記載できる内容を確認する。それがひいては(意外にも)社内の出世にもつながるチェックポイントとなりうる
・外資ITは、外銀や外資保険業界に比べれば、肉も草も食べる雑食系のサバイバル能力の高いグループといえる
外資系の全体的な特徴として、時期的な区切りは3年である(どの業界の外資にも共通しているとのこと)。次のポジション、プロモーションか転職か。大体は3~5年で変化が起こることが多い
・筆者が外資系で勤められた理由は、つまるところ性に合っていたからということ。自由と自己責任の世界で生きることが性に合っていたと回顧し、結論付けていた

まとめ(GOTO所感)

外資系日本法人社長の経営観点での外資系の仕事の進め方、リアリティのある実務経験から考察されており、実践的にも非常に参考になった。業界に拠らない外資系の共通点として挙げられている傾向について述べられている点について、GOTO自身の外資系での経験と照らして納得できることも多く、非常に説得力があった。特に印象深かったのは、社内で出世(昇進)できるひとは、転職できる人、という構図であるという点で、転職市場から見た自分の立ち位置を確認する(外部の求める人材市場に自身をさらし続ける)ことが特に必要だという内容は、今後の転職活動を考えていく中でも、非常に参考になる内容であった。


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