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宇宙からの贈り物2

あまりにも微弱に響く彼の声は、まるで終焉を控えた人の最後の遺言でもするかのように低音波につながる。
「袋に何が入っているのは知っている。それはサムの気持ちを込めたものだ。感謝だけだ!もっと近くに来て! "



47年間、小屋で過ごした歳月の痕跡で床の木の色はすでに汚れやほこり、そして得体の知れない有機物の混合にされたバイオフィルムの黒光りが流れる。すでに泥まみれになったズボンにはあまり申し訳ない気持ちが入らない。今日は床に胡座をかいて座り彼の声に最大限集中しようと近付いた。 


ここに来るたびに少なくとも2時間程度、その人との対話に集中するがまだ約68%程度しか理解ができない。しかし時には彼の目を通して言語は足りない32%を満たし溢れるように共感し、理解することもある。
「今日までどのように過ごしましたか?今日も声がよく出ないようですが健康は大丈夫でしょうか? "
「うんうん!私は、ここに住んでいるから、病院は一度も行ったことない。常に元気!ただし、最近の天気がこれでうまく動けず、作っておいたお粥もすぐ腐ってしまって、ちょっと気分が悪い! "


微かに響く彼の声に私が持つ聴力を最大限に上げてみるが周りに落ちる雨音と風に揺れる鐘の形をした風鈴と合わさり妨害される。
しかし彼の表情と半分閉じられた目から流れ出る言語は苦しい聴力を軽く突破し私を理解させる。

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