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ドサクサ日記 12/26-1/31 2022

26日。
東京ドームの傍にあるホールで中村佑介とトークセッション。とても楽しい時間だった。中村君はトークが本当に面白い。この面白さを消すまいと、トークの途中から漫才のタイム感を模倣しながら相槌を打ってみたくなった。M-1の動画を観たのが原因だと思う。やってみると難しい。なるほど、漫才は相槌の間までデザインされているのだと理解した。とんでもないことだ。弾き語りはとても楽しかった。

27日。
高いビルの一室から眺めると、渋谷の街の激変ぶりがよくわかる。とはいえ、パッセンジャーとして断片的に眺めているがゆえ「激変」だと思うだけで、いつも利用している人にとっては変化し続ける街の現在でしかないのかもしれない。都会の片隅の雑多な卑猥さが、真新しいコンクリートで洗い流されていく。それが洗練や繁栄なのか、あるいは喪失や枯渇なのかはわからない。その両方かもしれない。

28日。
大阪。FM802のフェスに出演。画面越しではあったが、ヒロト&マーシーの勇姿に感動した。少年の頃に胸打たれたロックンロールが、今でも瑞々しくころがっている。なんと素晴らしいことか。細美君にはエルレガーデンの新しいアルバムのレコーディングの話を聞いた。エルレのライブも素晴らしかった。ブランクをむしろジャンプ台にしてどこまでも突き抜けてほしい。終演後の皆の笑顔が最高だった。

29日。
「演奏者など誰でもいい」というような音楽(というか音源)は案外に多い。リスナーの側に100%立って耳馴染みなどについて考えれば、ある程度演奏のアベレージが整っていて、聞き手に干渉しないようなビートやピッチ感が好まれるのだと思う。すべてサンプルに差し替えてしまえば、録音は意味を失ってしまう。たとえ凸凹としていても、それでこそ人間の演奏であり、記録する意味ではないかと思う。

30日。
CDJは楽屋エリアが広いので落ち着かない。ふんぞり返ってる人を見かけると落ち込む。案外、そういうのはみんなに見られている。ステージからの客席は壮観だった。ここ数年のことを思うと感慨深い。ゆえにBe Alrightの歌詞が沁みた。佐野元春さんにも久々に会えてよかった。いつでもポジティブで、ユーモアがあって、格好良くて優しい。こういう大人でありたいと思う。理樹にも会えて良かった。

31日。
長い1年が終わった。プラネットフォークスというアルバムを完成させて、なんとかツアーを行うことができた。時代とは関係なく、なかなかタフな瞬間が多かった1年だったと思う。乗り越えられたのは仲間たちのおかげだ。本当に感謝している。そして、様々な場所で目の当たりにしたオーディエンスたちの表情や仕草、身体から発せられたエネルギーにも救われた。来年も素敵な音楽をたくさん作って、多くの人に感謝の意を伝えたい。直接「ありがとう」という歌は書かないけれど、どんなときでも、自分が意を決して書いたものを受け取ってくれる人がどこかいる。それを実感できることの心強さ。書き始めたときより、はるかにリスナーのことを俺は信頼している。こんなふうに書く日が来るとも思わなかったが、とても誇らしいことだと思う。だから胸を張って、どこまでも転がって行こうと思う。

写真:山川哲矢

おまけ。