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ドサクサ日記 3/7-13 2022

7日。
戦争反対という行為や意志について考える。いまどこかで起きている戦争についてだけに留まってはいけないように思う。まだ起きることすら予見されていない、遠い未来の戦争にも反対すること。ぐっと想像を身体に引き寄せるならば、わたしやあなたの子供や孫が戦争に駆り出されない未来でもいいかもしれない。わたしたちの日々の生活の延長に未知の戦争があることを、想像力によって拒否したい。

8日。
全身がズルズルに疲れてしまって、その疲れのせいでよく寝られない。「疲れているんだったらぐっすり眠れるはずだろう」と言う人もあるかもしれないが、疲れによってバキバキに緊張した筋肉がまったく弛緩せず、ゆえに本来リラックスするための睡眠時にあっても身体はバキバキのままであるため、緊張したまま寝るみたいなことになってしまっている。脱力したい。来世があるなら蛸になりたい。

9日。
友人の音楽ライターたちとAPPLE VINEGAR -Music +TALK-というポッドキャスト番組を始めた。僕が主催しているAPPLE VINEGAR賞のことだけではなくて、音楽にまつわるいろいろなことを話題にしようと思っている。好きな音楽を語る場がひとつでも増えるということはとても楽しいことだし、それを多くの人とシェアできるのは素敵なことだ。毎週水曜日の午後18時に更新していく予定。

10日
ネットで商品や作品を買ったときに、不意に評価を求められることがある。「良い/悪い」の二元論も難しいが、星マークで換算させられるのもなかなか大変だ。星5つがマックスである場合、星3つくらいが標準的な評価なのかもしれない。しかし、平均よりは優れていると感じるが、その程度について話すのが難しい案件も、星3つの次は星4つしかない。個人的には、3つと4つの間に踊り場が欲しい。

11日。
3月11日を普通の日として過ごすことは、自分の人生が終わるまではできないと思う。どうしたって特別な日だ。とはいえ、今日もやらなければならないことが静かに積み上げられている。そんな生活のなかの細やかな何かを、しっかりと噛み締めたい。無味無臭の何かをしがむように過ごすのではく、苦かったり、甘かったり、なんかよく分からん味だったりを、いちいち確かめながら生きたい。

12日
アジカンの結成25周年のライブ、初日。とても良い夜だった。ゲストも含めて、仲間たちと目が合う瞬間に幸せを感じた。そう思うよりも先に、毛穴がキューっと収縮した。25年も音楽を続けられていることは、幸福以外の何ものでもないと思う。それぞれの長い人生のなかで、偶然居合わせてくれるオーディエンスたち。人生にとっては一瞬だけれど、本当に美しくて、掛け替えのない体験だと思う。

13日。
ツアーファイナル。最高だった。一緒に演奏してくれた皆、俺たちを支えてくれているスタッフ、参加してくれたオーディエンス、画面の向こうで楽しんでくれた人たち、様々な事情で参加も鑑賞もできなかった人、すべてに感謝したい。派手にそこら中を転げ回る自意識に振り回された時代をくぐり抜けて、真っ平らな地べたから、みんなのことを愛おしく思う。それはまあ、実際にはお互いのことをほとんど知らないわけで、街中で「やあ!」なんてことはできないけれど、それでもこのタフな時代を一緒に生きて、とにもかくにもこの音楽で一瞬でも繋がることができたという事実は、俺たちが何かをシェアできるんだということを証明していると思う。何もかも違う。考え方も、生まれた場所も、育った環境も。それでも、あの音色や音像を前にして心や体がほころぶ、その一瞬が象徴することを信じている。

Photo by 山川哲矢