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Around The Planet Folks #5

『5-hours Liner notes』のDe Arriba編が公開になりました。De Arribaは個人的に思い入れの強い曲なので、インタビューは僕と古川さんの対話に近い内容になっています。

 かなり赤裸々にボーカル録音の模様が公開されています。僕のプライベートスタジオCold Brain Studioの風景も、ここまで公開するのは初めてだと思います。以前にミシマ社で「凍った脳みそ」という本を作ったんですが、スタジオ創設の経緯はそちらに詳しく載っています。笑えるので是非。

 De ArribaのMVはこちら。アルバムのなかでも、一番歌詞に思いを込めていると言える曲です。古川さんとの対談のなかでも言っているけれど、聴いてくれる人たちを信頼しているからこそ、アイロニカルな表現をしています。

 ネットの中では人々が互いに言葉の礫を投げ合って、ほとんど日替わりで誰かがその的になっています。どれくらいクリックされて見られるかが収益になっている構造上、毎分毎秒、その対象となる新しい話題が探されているわけです。ゴシップだろうが、陰謀説だろうが、失言だろうが、何らかのスーパープレイだろうが、派手に燃えれば何だっていい。それこそが収益になるわけですから。

 私たちの正義感とやらもその構造の歯車ひとつでしかなくて、誰かに認められたいというような欲求や、正しく強い側でありたいという欲望は煽られ続けて、人を社会から叩き出したり叩きのめすことが娯楽になっていると感じます。

 もっとも、自分もそれについては無謬とは言えない。誰かを踏みつけていないとは言えない。何気なく興味本位で開いた記事を、クリックしたその指先が次の生贄の存在を肯定しているとも言えます。構造の一部である、いやむしろ燃料のひとつであった、と言えると思います。

 焼け野原になるまで、私たちは見ず知らずのままお互いに辛辣な言葉を投げ合うのか。あなたが怒りを向けるそれは、本当に世に問われるべき社会的な不正なのか、あるいは個人的な人間らしい失敗のひとつなのか。単に誰かを打ちのめしたいのか、社会の構造や仕組みを変えるべく話し合いたいのか。

 いろいろな問いが立ち上がります。内側にも外側にも。

 短文では表しようもないそれぞれの人生を、短い言葉で表された感情の集積が燃やし尽くす。そのような社会を本当に望んでいるのか、考えざるを得ないなと思います。実を言えば、ほとんど諦めに近い気持ちをずっと持っています。私たちは分かり合えるわけがない。しかし、その暗闇を、真っ暗闇だとは思っていない。だからこそ書いた曲でもあります。