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ドサクサ日記 8/14-20 2023

14日。
友人や知人が美味しいと言って食べているものが、自分にとっては美味しいと思えない、むしろ口に合わないということがときどきある。技術的な面から考えると、味の優劣がジャンルごとに存在するのは理解できる。そういう物差しは別として、何を美味しいと思うかは自分で考える。そうしないと、この時代にあっては、先入観とか同調への欲求に振り回されて、何がなんだかわからなくなってしまう。

15日。
仕事の合間に、インドネシアに行くための荷物のパッキング。バンドのなかでは最も能天気でズボラなので、荷物が一番少ない。他のメンバーはルーティンがあるようで、いつどこに行くのにも一定の荷物の量がある。1泊2日でもカートを引いてくるような人たちだ。俺はと言うと、1泊2日なら普段使っているデイバッグにパンツと靴下とTシャツを入れておくだけ。万が一のために海パンもパッキング。

16日。
インドネシアへのフライト。機内食のインドネシア料理が美味しかった。食事の後はひたすら寝て過ごす。時折、右肩が痛んで起きる。少しずつ良くなっている気もするけれど、寝ている間の、ふとした瞬間の寝返りのときに痛む。そして疼痛。機内はネットも使えず暇なので映画を観た。みっつだけあった邦画のなかから『死刑にいたる病』をセレクト。行きの便で観るのにはちょっと重い内容だった。空港に到着してから、楽器や荷物をピックアップして市内へ。高速はものすごい渋滞。しかし、白バイや警察車両が先導してくれて、スルスルというよりいはグイグイと強引に渋滞をすり抜けて行く。VIP待遇のようで恐縮する。他にも空港内のイミグレーションカウンターより内側にエージェントたちが顔パスで入って来ていたり、いろいろ不思議に思うところがたくさんあった。ルールがよくわからない。

17日。
独立記念日ということで、街なかはとても静か。道路も空いていて快適だった。ライブを主催する会社のオフィスに出かけて、取材を受ける。久々にみっちりと時間を使った取材だった。オフィスのトイレに行くと紙が置いておらず、便器のとなりからホースが伸びていた。庭に水でも撒くようなそれは、尻を洗うのに使うらしい。ついでにトイレ全体も洗ったりするらしい。難しそうなので使わなかった。

18日。
ジャカルタでコンサート。とても楽しい時間だった。2000年代はインドネシアの経済がそこまで良くなく、アジカンが来たとしても参加できない人がたくさん居ただろうという話を聞いた。あれから10年以上経って、経済が成長したお陰で今回は多くの人がライブを観ることができたのだという。富にまるわるコントラストがあるにせよ、何もかもあるような日本にいると、成長という言葉に追い回されて疲れてしまう。しかし、グローバルサウスと呼ばれるような場所ではこうした問題が今日的に転がっている。我々が宿泊している神殿のようなホテルは日本に比べて割安だけれど、ホテルの周りにはゲットーと呼ぶべき粗末なプレハブ住宅がいくつもあり、あまり綺麗とはいえない河川でくっきりと区切られていた。そういう部分に目をやらずに、ただのパッセンジャーとして通り過ぎるのは難しい。たくさんの人が楽しんでくれている風景が嬉しかった。多くの曲での大合唱も感動的だった。海外公演は渡航費の問題もあって、チケットの価格が高額になってしまう。そのあたりに少しの申し訳なさがあるけれど、金額には換算できない素敵な時間を過ごせたと思う。インドから来たという家族に、「お前たちはインドでも人気があるからムンバイやデリーにも来るべきだ」と言われた。まだまだ旅が続きそうで嬉しい。

19日。
現地での休日。喉がイガイガと痛む。独立を記念したという大きなモスクを見学して、スーパーに買い出しに行き、あとは体力の回復に努めた。夜からホテルのレストランで山ちゃんの誕生日を祝ったが、目を開けているのもギリギリというくらいに疲れてしまったので、誕生日会を中座。肩やら腰やらが痛いので素直には寝付けず、ウダウダしてから就寝。そして4時の礼拝の音楽で起床というルーティン。

モスクの中庭。ひとつひとつの茶色のブロックは、礼拝用のひとマスとのこと。日射ですごく暑い。
美しいモスクの内部から見えるジャカルタの高層ビル。ジャカルタは東京みたいな大都市。
巨大な礼拝堂の中心部。中央では結婚の式典が行われていた。このモスクはインドネシアの独立と宗教の多様性のシンボルであるとのこと。メッカには行けない人たちにとっての聖地だという。

20日。
現地でソロ曲のビデオ撮影。Mブロックというところに行くと、どういうわけかバンドのファンのひとたちがたくさん集っていた。皆、インドネシアでも遠くの地域からやってきたのだという。サインなどをしながら談笑。地元のレコード屋で少しショッピングができて嬉しかった。こういう時代だから、もはやどの国にも格好いいバンドや音楽があって、それを知ることができる。スマホが試聴機になった。ホテルに戻って休憩後、荷物をパッキングをして空港へ。チェックインしてから搭乗まで3時間もあったので、ジャコウ猫の糞から集めた高級コーヒー豆をお土産として買うなどしたあとで、ビンタンの生ビールをひたすら飲んだ。東南アジアのビールはどれも口に合う。料理や気候に合うように作られている気がする。そして不思議とそんなにトイレが近くならない。たっぷりと汗をかくからかもしれない。

グッズやレコードにサインをしている俺。どうして俺の居場所がわかったのかは謎。