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ドサクサ日記 2/28-3/6 2022

28日。
ビデオの撮影。使用したスタジオのイメージカラーが黄色と水色で、ウクライナの国旗のような配色だった。ビデオのイメージはカラフル。演出に使ったテープの黄色と水色が目に付く。強いリーダーを求める声はいつだって存在するが、権力が一点に集中することの恐ろしさを思う。民主主義は物事を決めたり急進させるにはまどろっこしい制度だけれど、絶対権力者の最悪の裁定を未然に防いでいる。

1日。
ロシアの人々はどんな気持ちなんだろう。戦争反対を掲げて、連行される市民もあるというニュースを目にした。長らく反政権的な人たちが粛清される様子をニュースで見てきた。ロシアの良識ある人々にも、祈りを捧げたい。彼らが様々な制裁によって受ける生活上の不便さや苦しみを思うと胸が痛む。スポーツ選手などの排除も然り。前線の兵士たちはどんな気持ちで銃を握っているのだろうか。国家の思惑、その背景、私たちが物事について思考しようとするときに忘れ去られること。武器を手に取るのも、それを撃ち撃たれるのも、銀行に押しかけるのも、途方に暮れるのも、概念や記号としての何かではなく、生身の人間だ。社会や歴史を教科書の視点から眺めれば、そこに人々の顔はない。一人ひとりの視点から見つめるような想像力を持ちたい。全ての人に寄り添えないもどかしさをしっかり抱えたい。

2日。
Awichの新曲のビデオを観た。リリックもサウンドも、立ち姿も、すべてが素晴らしいと思う。彼女の決意が、強い振動として届く。それは凛としたエネルギーで、鋭さと優しさのどちらもがあって、背筋に刺さった重たい何かを癒すような不思議な力を感じる。とにかく最高だと思う。日本のHIP HOPは俺が面白いと思う前から本当に面白いのだけれども、もはや爆発という感じがしてワクワクする。

3日。
CBSで黙々と作業。アルバムの制作が終わってからはインストばかり作っている。どれもポップミュージックとは少しだけ距離のある、抽象的でオブスキュアな楽曲だ。面白みはテクスチャーにある。音の感触を楽しんでいるのだ。例えば、ギターの残響音が消えていく、その方向などを耳で追いかける。あるいは、持続音の帯や膜がグニャリとフォルムを変える瞬間に耳を攲てる。そういう楽しみ方もある。

4日。
身体が疲れてくると、腕がパンパンになる。それはもう「限界やで」の合図。そういうときは腕にお灸をして、疲れというか筋の緊張を抜く。今回は妙に熱くて、これはさぞかし身体が疲れておるのだろうと歯を食いしばって熱さに耐えたところ、軽い火傷を負ってしまった。単にいつもよりもお灸が熱くなっていた模様。良薬口に苦し的な思考は何にでも取り入れてはいけないんだなと反省した。

5日。
GEZANが新宿駅の南口で行なった反戦デモをYouTubeで観る。ミューシジャンや表現者たちのアクション。俺は自分の生活のための諸用に忙しい。そのギャップに少し落ち込む。が、「自分は無力だ」と嘆くのはナルシズムの一形態だと思い直す。手応えがなくても、目立つことがなくても、誰と比べるでもなく、自分の意志で自分にできることをする。意志表明は、それでこそなのではないか。

6日。
「欲しいから買うのではなく、買うから欲しくなるのだ」という文章を読んだ。確かに思い当たるところがある。趣味や仕事で言うところの「沼」という状態。レコード沼、マイク沼、機材沼、その他、いろいろな沼に足が浸かっている。そのどれもが、何かひとつを手に入れるところから始まった。マイクを1本買うと、もっといいマイクが欲しくなる。こうして私有から物欲は深まるのかと頷いた。