ドサクサ日記 2/12-18 2024
12日。
スタジオで作業。没頭するぞ！というときは、ほかほか弁当屋でほかほかの弁当と味噌汁を買い、それを食べてからぶっ通しで作業を行う。海苔弁は安いのに美味しい。この値段でいいのだろうかと心配になる。例えばアメリカで、5ドルくらいの値段でこんなに手の込んだものを食べられる可能性は低い。いつからかデフォルトで醤油マヨネーズがつくようになったけれど、フライはタルタルソースのほうが断然好きだなぁとか、そういうことを思えるのも贅沢なことだと思う。プレミアム海苔弁はご飯が少なくて中年の身体には丁度良いが、注文するときに罪悪感がある。このようなセレブ海苔弁を食べていいのだろうかという葛藤がある。でも、本来は弁当に限らず世の商品の価格が1.5倍くらいで、従業員の給料が現在の2倍くらいあったほうが誰にとってもヘルシーな社会なんだろうと想像する。消費税キツい。
13日。
ウミネコカレーで録音。この日はインドから帰ってきた雄人君のベースとコーラスを録音。作業が終わってからドラムの藤村君も合流してカレーを食べ、カクヤスに行ってハートランドビールとウイスキーと炭酸水を買ってきて乾杯した。雄人君は可愛らしい笑顔をキープしたまま、俺がトイレに行くたびにグラスにウイスキーを継ぎ足し、俺はそれをチビチビ飲んでいるつもりが、ベラベラに酔ってしまった。
14日。
深酒をすると明け方にこのまま死んでも構わないという気持ちになってしまう。ここから先の勇気がないので、実際に自死することもできずに、グズグズのまま朝になる。お酒はいつかやめないといけないと思っている。あるいは、飲むときの決まりごとを作らないといけない。でないと、良くない結果が待っているような気がしている。自分を律するのは難しい。夕方にはビールを飲んでしまうのが怖い。
15日。
AVMAのノミネート作品が発表になった。どの作品もユニークで素晴らしい。賞に協力してくれる仲間が増えて、少しずつ運営に対するプレッシャーが緩和されている。けれども、アワードというのは権威的な性格があるので、慎重にやらないといけないなと思う。今年は賞を含むかたちのNPO団体を設立しようと考えている。そして、宿泊型の安価なスタジオを作って、多くの人の助けになるような活動を始める予定でいる。そのときには多くの人に応援してほしい。この賞の趣旨をあらためて言葉にすれば、新進気鋭の音楽家の優れた作品に贈られる賞だ。中堅も受賞できる新人賞だとも言える。ビジネスとして人気者を追認する賞でもなければ、ブレイクしそうな才能ある人に贈られる賞でもない。録音作品の制作というとても難しい作業の達成に対して贈られる作品賞でありたい。文化に対する一石でもありたい。
16日。
AFOCの新曲の取材で代官山へ。佐々木君はセクシーなのに天然で、チャーミングで格好いい。なんとも複雑な魅力の持ち主だと思う。もちろん音楽に対しても熱い。グランジの遠山君にも久々に会った。愛と熱で薄らと空転している感じが良い。ブロードキャストのバス村の話で盛り上がった。彼の生配信はいつも一桁の視聴者数だが、時折、俺と遠山君がその中に含まれていることがわかって笑った。
17日。
豊洲でイベント。ミキ、かが屋、フジファブリック、アジカンという謎のメンツ。内容はほとんどカオスで、ミキの30分に渡る長尺の漫才、フジファブリックの変態プログレ的なライブ、加藤君の怪談、潔とチャンダイとかが屋による料理、いつもよりダイナミックなかが屋のコント、そしてアジカンのライブという破茶滅茶なタイムテーブルだった。本番直前には観客の9割が「もう十分笑ったので余計な出し物はいらんよ」的な気を全身から発していて、俺たちがステージに上がったときには安堵みたいな空気が広がったように思う。漫才やコントで爆笑したり、音楽に身を任せたりするのは楽しい。しかし、様々なニュースを目にする度に、こんなことしてていいのかなという気分になる。パレスチナでは暴力によって多くの子どもたちが日々に命を落としている。悲しいけれど、これは同じ世界の出来事で、この日に俺たちが歌うことや笑うことを控えたとしても、状況は1ミリも変わらない。だからと言って、別に関係ないと居直るわけにはいかない。そういうやりきれなさを抱えたまま、笑ったり踊ったり歌ったりしたい。そうするしかないんだと思う。そうして、例えばこの日に養ったエナジーを持って帰って、その力でまた、悩んだり考えたり、あるいは行動したいと思う。そうやってまた集まればいいと思う。
Photo by 山川哲矢
18日。
ライブの後はぐっすりと寝られない。疲れてバタン、みたいなことはできなくて、昂ってなかなか寝つけない。さらになぜか朝早く起きてしまうので、仕方がなく珈琲を飲んで部屋を片付ける。そのうち眠くなって二度寝、ご飯を食べて三度寝。散歩に出かけて、スーパーでカワハギの刺身を買った。カワハギの肝から出た汁でトートバッグが汚れてしまって凹む。刺身は美味かったが、肝はやや生臭かった。