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写真集に出会う場所 in 東京

はじめに


年末年始に日本に帰国した時に、東京で写真集を多く扱っている書店や古本屋をいくつか行ってみました。今回の帰国で行ったところを中心に紹介したいと思います。

シリコンバレーに移住してからは、写真集はほぼオンラインで購入しています。ネットで検索して注文するだけで、手元に配送されるのでとても便利ですが、これを続けていると自分が知っている大御所写真家の有名な写真集に偏ってしまいます。世の中にはもっと面白い写真集が多くあるのに、「未知なる写真集に出会う」チャンスを失っていると感じます。

最近口癖のように言っているのですが、東京は本当にすごい街です。写真集に関してもすごいです。日本や海外の最新の写真集から、レアものの古本、そしてマニアックなZineまで多くの写真集に出会い、そして購入することができます。



大型書店系

東京にはたくさんの大型の書店があって、そこに行けば多くの写真集が売られています。これだけでもすごいことだと思うのですが、さらに写真集のセレクションに力を入れていて、写真好きな人をワクワクさせてくれる書店があります。

Ginza Six 蔦屋書店

まずはGinza Sixの蔦屋書店。ここに行けば有名なものからこだわりものもまで比較的広い販売スペースにずらりと並べられていて圧巻です。どんな写真が日本で注目されているのか理解できるので、日本帰国時は行くようにしています。ネットで話題になっていたあの写真集はこんな大きさでこんな感じなんだ、とか、気になってるあの写真家の人はこんな書籍を出しているのか、とか気づくことが多いです。


今回は東京都写真美術館で写真家・ホンマタカシ氏の写真展「即興」をみた後だったこともあり、ホンマタカシのカメラ・オブスクの作品を詳しく理解するために、写真集「The Narcissistic City」と雑誌IMA「ホンマタカシの現在地」を購入しました。こんな感じで少し深掘りしてみたい写真家の写真集や書籍を探しに行くには最適な場所だと思います。

麻布台ヒルズ 大垣書店

続いては麻布台ヒルズの大垣書店。麻布台ヒルズといえば、昨年11月24日に東京都港区にオープンしたばかりの大型複合商業ビルです。日本に帰国した際は話題になっている新しい場所に行くようにしていて、今回はが麻布台ヒルズに行ってきました。

ぶらりとビルの中を歩いていてたまたま見つけたのがこの大垣書店です。調べてみるみと京都の書店で東京は初進出とのこと。中は、東京のカルチャーの最先端を行く麻布台ヒルズにぴったりのこだわり抜いた店舗でした。

写真集コーナーは、先の蔦屋書店ほどの売り場面積はないのですが、置かれている写真集のセレクションが秀逸です。洋書を中心に、オシャレなホテルやオフィスのロビーやカフェに置いておくのにぴったりのセンスのある写真集が並んでいました。麻布台ヒルズにくる客層に合うように選んでいるのでしょう。加えて、有名な大御所写真家のものでも、少し変わったものが置かれていて、写真集好きな人の好奇心を刺激する出会いを提供してくれる感じでした。

今回私が購入したのはZineのような小型の写真集です。左がアメリカのニューカラーを代表する写真家Stephen Shoreの「Los Angels, CA February 4, 1969」。彼の作品はの多くは大判カメラ撮ったカラーのアメリカの風景で、アメリカ全土をロードトリップをしながらじっくりと撮った写真が人気です。しかし、この写真集はある日のロサンゼルスの街をモノクロのスナップで撮った写真を集めたもの。ちょっと珍しい作風です。

右のはRobert Adamsの「Hope is a risk that must be run」。彼もアメリカの大御所写真家で、ニューカラー以前からモノクロでアメリカのなんでもない街の様子を大判カメラで撮った作品で知られています。この写真集ではそうした写真は一切含まれず、コロラド州の核爆弾の工場に近い街で暮らす人々の様子を撮ったスナップ写真を集めたもので、意外な構成になっています。(この写真集は色々と調べていくと面白いことがわかったりするのですが、長くなるのでまた改めて書きたいと思います。)

どちらもへーっと思って思わず買ってしまいました。麻布台ヒルズの大垣書店がなかったらこうした写真集には出会うことはなかったでしょう。


麻布台ヒルズ・大垣書店で出会った写真集




専門書店&ギャラリー書店系

さて大型書店系の次はもう少しこじんまりした専門書店です。東京中を探せば写真やアートの書籍を専門に扱っているお店はまだまだたくさんあると思います。

NADiff

NADiffはアートブックショップ&ギャラリーとして展開していて、東京都写真美術館の中にもストアがあります。私も東京都写真美術館の写真展を見た後に図録を購入するのに利用しています。開催中の写真展に関連する写真集や書籍が目立つところに並べられていたり、過去に写真展を開催した写真家の写真集などが多く販売されていて、東京都写真美術館をよく利用する人には便利な書店だと思います。

また同じく恵比寿に、NADiff a/p/a/r/tという本店があます。この本店の方にはこれまで行ったことがなく、今回初めて行ってみました。アート系の方がメインのようですが、写真関連の書籍や写真集も売られています。あまり時間がなくてじっくり見れなかったのですが、昔の写真季刊誌「deja-vu」のバックナンバーの一部が置いてあったりして、ちょっとびっくりでした。


PGI

PGI (Photo Gallery International)は東麻布にある商業ギャラリーです。川田喜久治をはじめとして日本の戦後の写真文化をリードしてきた大御所写真家の方々が所属しています。

今回の帰国では行けなかったのですが、2022年8月に訪問しました。当時川田喜久治の「ロス・カプリチョス 遠近」という展示をやっていて、これをみるのが目的でした。帰りにストアの方を見てみると、川田喜久治の写真集が充実していて、ここで写真集「20」と「Vortex」に出会いました。(
詳細は以前にnoteの記事まとめています)

このように写真家が所属している商業ギャラリーがある場合は、そのギャリーにいくとその写真家の写真集が充実していることがあります。特定の写真作家について理解が深めたい場合は、商業ギャラリーをのぞいてみるのが良いかもしれません。

ずらりと並んだ川田喜久治の写真集 2022年8月撮影


ワタリウム美術館

ワタリウム美術館は外苑前にある美術館です。初めて行ったのは1992年に開かれた福原信三の写真展でした。あと1994年のアウグスト・ザンダーの写真展にも行った記憶があります。

今回の帰国では行けませんでしたが、2021年7月に帰国した際にたまたま前を通りかかり、昔を思い出して立ち寄りました。ミュージアムショップOn Sundaysでは、多岐にわたった写真集が販売されていました。

Zineも充実していて、サンフランシスコをモノクロで撮影したBlake Kuninの「Foundation」というのを見つけて思わず買ってしまいました。私の知らないサンフランシスコの街並みが写されていてかっこいいZineでした。Zineが充実している書店では、こうした全く知らない写真集との出会いがあったりするのが楽しいです。


2021年7月撮影



古書店系

これまで新品の本を発売している書店を紹介してきましたが、ここでは写真集の古書を販売している書店について書きます。

book obscura

吉祥寺にあるbook obscuraは、吉祥寺駅から井の頭公園を抜けて少し歩いたところにある写真専門の古書店です(新刊も扱っています)。井の頭公園の雰囲気も良く、東京にいたら休日に通いたくなる店です。1年前にも訪れたこともあるので、今回で2回目です。

店内はおすすめの写真集がわかりやすく置かれていたり、テーマを決めて展示されていたりするので、自分好みの写真集を見つけやすく工夫されているのがとても良いです。

今回はここでずっと昔に東京駅で見た植田正治写真展の図録を見つけて、懐かしくなって思わず購入してしまいました。古書系書店ではこうした昔買えなかった図録や写真集との出会いがあってやめられません。

小宮山書店

小宮山書店は神保町にある古書店で、2Fに写真集専門のフロアがあります。今回初めて訪問したのですが、2Fに行くとレアやビンテージな写真集、そしてオリジナルプリントなどがずらりと並んでいてびっくりしました。日本や海外の大物写真家の写真集をコレクションしている方にはたまらない場所でしょう。海外からここを訪れる人も多いそうです。


最近私が気になっているアメリカの写真家Richard Misrachの写真集もいくつか販売されていて、その中に以前から興味のあったSan Franciscoのゴールデンゲートブリッジを撮った写真集「Golden Gate」を見つけました。初版ということでかなり良いお値段がついていて購入は諦めましたが、気になっていた写真集の実物を偶然見つける体験はワクワクします。


書店以外

東京には写真集の新書や古書を扱う書店が充実していますが、書店以外にも写真集に出会える素晴らしい場所があります。

東京都写真美術館

恵比寿にある東京都写真美術館には図書室があり写真集や図録が収蔵されています。貸し出しはしていませんが、希望のものをお願いすると出してきてくれて図書室内で閲覧ができるそうです。特定の写真集を見たいという方は、まず次のページからネットで蔵書検索をしてみるのがいいかもしれません。


写真集食堂めぐたま

恵比寿にある写真集食堂めぐたまは、日本を代表する写真評論家の飯沢耕太郎氏が所有する写真集6666冊を手に取ってみることができる食堂です。

年末に訪れた時には残念ながら満席で入れなかったのですが、短時間だけ写真集を見せていただくことができました。圧倒的な写真集の量に驚きました。次回の帰国時には必ずリベンジしてじっくり見たいと思います。


余談


今回日本に帰国して気になったのは神保町周辺のギャラリーの動きです。この辺りでの写真系のギャラリーというのは聞いたことがなかったのですが、今回2箇所見つけました。残念ながらどちらも年末年始の休業に入っていたため、中に入ることはできませんでしたが。最近、日本の写真集の人気が高まっていることと何か関係しているのでしょうか?このトレンドを全く理解できていません。。。

KOMIYAMA TOKYO G

KOMIYAMA TOKYO Gは、小宮山書店が店舗の近くに新たにオープンしたギャラリーです。小宮山書店に置かれていた案内で知りました。”G”はギャラリー、グループ、グラウンドなど複数の意味を持ち、様々なフェアを開催予定となっているので、写真やアート作家の個展だけでなく、フェアなどのイベントをやっていくようです。どんな感じのスペースとなっているのかとても気になります。

小宮山書店にあった案内


Super Labo Store Tokyo

Super Labo Store Tokyoも神保町周辺にあるのですが、Webサイトを見ると「写真をテーマにしたコンセプストスア」となっていて、店内には「スーパーラボ」が出版する写真集やこのストア限定商品などが陳列されているとのこと。展覧会、トークショー、サイン会などが随時開催されているらしいです。


私がここを知ったのは、元プロスケードボーダーで写真家のEd Templetonが12月に日本に行って訪問していたのをインスタで見たからです。昨年Apertureから写真集「Wires Crossed」を出したので、そのサイン会でした。最初渋谷・原宿とかのスケボーショップかと思ったのですが、調べてみると神保町の「Super Labo Store Tokyo」でした。

写真集を出版している「Super Labo」のWebサイトを見ると、すごい写真家たちが写真集を出しています。ぜひアーティストページをぜひ見てください、びっくりします。店内の作りもポップな感じで、海外からの旅行者とかにも人気が出そうな感じです。今回中に入れませんでしたが、次回は絶対行きます。


この記事では、今回の帰国で行った書店や以前に行ったことのある書店について紹介しました。加えて余談として今回訪問できなかったけどとても気になる2つの店舗も追加しました。

東京は本当に写真集と出会える場所が豊富で素晴らしいですね!


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