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タンゴ・葉山・遊散歩(5)

タンゴは極端に短い足で、巨大な黒いバナナのような長細い胴体を支えている。歩き方は独特だ。散歩の時の歩き方は大きく分けると、緊急足と探索足の2種類だ。

緊急足は前方に他の犬の姿を認めた時、俄に始まる。まさに緊急発進なのだ。一気にその同類に近づこうとする。そして、近づくと楽しく仲良しごっこをしてくれればいいのだが、そうはいかない。多くの場合、吠えまくり隙あらばやっちゃうぞの戦闘態勢になってしまうのだ。

これまでに一度だけ、飼い初めの頃だったが、よそ様の愛犬君とガチンコになりかけたことがあった。私のロープコントロールが不完全だったのだ。以来懲りて、同類との接近遭遇には充分な注意を払っている。

ごく稀に、近づいても吠えもせず、仲良しルンルンの時もあるのだが、なぜその相手とはいい仲になれたのかはよくわからない。で、基本的に、同類さんには近づけないようにしている。

探索足は、匂いを嗅いで何かを感じ取った時に始まる。
ひたすら辺りを探索する。
ぐるぐると匂いを嗅ぎ回ることもあれば、そろりそろりと路上の草や石ころに鼻面を近づけて歩く。時には頑固に立ち止まって動かなくなってしまうこともある。

こんな時こちらがつい油断していると、口に入れるべきではないものを口に入れ、あまつさえごくりと飲み込んでしまうのである。で、お腹を壊して悲しい結末になってしまう。だから、路上物はタンゴより早めに発見し正体を確認しておかなければならない。油断大敵なのである。

私が外出から帰ってきたり、テーブルからいい匂いがしてきたり、おやつだよと声をかけたりした時には(これは甘えておくと後々僥倖が待っていると思っているのかどうかはわからないが)あの長細い胴体をゆらゆらくねくね揺りながらやってくる。モンローウォークなんぞと呼ぶことは御法度だが、タンゴなりの愛嬌なんであろうか?


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