連載小説「和人と天音」(7)
翌朝、天音が教室に入ると黒板の前に男女の生徒がかたまっていた。男子の中には肘で隣の子を突き放すような動作をして、もみ合っている数名や、「またかよー、おら知らね」と大声をあげる者もいた。女子は数名づつかたまり声をひそめて話していた。重なり合うようにして群れている生徒たちの背中に、天音が近づいた時、女生徒数名の笑い声があがった。一人の女生徒が振り向いて天音と目が合った。その子は、反射的に眉を上げ上半身をびくっと動かし、すぐ前の子の肩を叩いて振り返らせた。
「ああ、市川さん」