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『怪物はささやく』について

 久しぶりにnoteに投稿しようと思った。
#映画感想文 というタグを見つけたので、映画について、思い出そうと必死になった。
 タイトルを思い出そうと必死になった。
 内容は、なんとなく、脳裏に焼き付いているのに、なかなかタイトルが思い出せなくて、でも、やっと、思い出した。

 そうだ。『怪物はささやく』だった。

 どうしようもない絶望の中で、どうしようもなく、生きている。
 必死になって、そのときにできる最大限の選択をしているはずなのに、どうしようもない現実が、ただ、目の前に広がっている。

 そんなじっとりとした絶望を感じる映画。

 不思議な怪物が奇妙にも、現実に現れるのだけれど、ただ、そこに広がっているのは、やっぱり、息苦しい現実。

 主人公の少年は、必死にもがいて、必死にあがいて、必死に生きようとしているけれど、どうにも、息苦しい。

 そこにたまに現れる不思議な怪物。

 陰鬱で、恐ろしい、怪物。

 怪物が現れる風景が、けれど、どこか、美しい。

 少年の人生を映しているかのように、映画自体の色合いは暗く、静かに、静かに、映画は進み、心にじっとりと染みこんでくる。

 少年の表情、薄暗い風景、怪物の雰囲気、そうして、少年の心。苦しみ。叫び。

 映画を見終わって、やがて、タイトルを忘れても、その味わいが、心の奥底で、じんわりと広がっている。

 冒頭からラストまで、息が詰まるような苦しみが広がるけれど、これが現実なのだと、怪物が突然に現れる世界なのに、頷いてしまう。

 映画を見て、現実逃避をしようとして、確かにそこにはダークファンタジーのような恐ろしくも美しい怪物のいる風景が広がっているのに、ただ、そこから感じるのは、必死に生きようとする現実だけ。

 どんなに頑張っても、どんなに必死になっても、なかなかうまくいかないという少年の悲壮な姿に、息苦しい現実が当たり前のように鎮座しており、けれど、その向こうに、どうしてか、希望を感じた。

 怪物と少年の対峙。怪物と少年の会話。怪物と少年の別れ。

 なかなか打開できない現実が、どうしようもなく、リアルで、どうしようもなく、美しく感じた。

 主人公の少年の生きざまに、とても、人間らしい姿を見た。

 とても、良い映画だったと思う。素晴らしい雰囲気で、落ち着いた雰囲気の映画だった。

 

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