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「アルジャーノンに花束を」

先日読んだ「生命倫理のレッスン」の中で、「読んでほしい本」として、「アルジャーノンに花束を」が紹介されていた。



実はタイトルは知っていたけど、一度も読んだことがなかった。
でも色んな人が推しているので、読んでみる事にした。

幼児並みの知能を有したチャーリイが、「頭をよくするため」の手術を受ける。もともと努力家だったこともあり、知能はみるみるうちに向上していく。

しかし急速な知能向上に対して、情緒的な成長が追いついていかない。また賢くなったあと、家族や友人から受けていた仕打ちに初めて気づき、苦しむようになり、どんどん気難しくなっていく。

その後、アルジャーノンに起きた異変により、自分の運命を悟った後、やり残したことがないようひたすらに行動するチャーリイと、その後待ち受ける運命のところは、帰りの電車の中で一気読みしてしまった。

…正直なところ、小説には苦手意識があったけど、3日間で読み終えてしまった。もっと早く読めばよかった。

賢くなったら色んなことがわかって、友達ができる、と思って手術を受けた。願った通り、いやそれ以上に賢くなったのに、友達を失い、孤独に陥っていくというジレンマ。

どんなに賢くなっても、悲しい過去や、屈辱感はチャーリイの奥深くに残っている。
以前は思い出すことがなかったのに、知能が向上してから鮮やかに思い出し、苦しんでしまう。

知能向上と共に性的欲求もはっきりしてきたが、家族から受けたトラウマのせいか、恋心を抱いた人には不器用にしか振る舞えないし、たまたま会うようになった女性とベッドに入ることにもなってしまう。

このようなシーンでは、小さなチャーリイが、賢くなった後のチャーリイを見ている、という描写が出てくる。幼い頃の傷は、安易に消えないということを示唆しているのか。

チャーリイはたまたま知能だったけど、美しさや地位といったものが向上した時、本人、そして周囲の人がどう変わるのかということを考えずにはいられない。またその向上に翳りが見えた時、気分や他人がどう変わるのかについても。

「私がここに来る前も人間だったことを彼は認識していない」
「高いIQをもつよりもっと大事なことがあるのよ」

人間として生きていくために、何が必要なのか。
そんなことを思わずにはいられなかった。

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