見出し画像

初デートの話②

どうも、筒子丸です。

この話の続きなのでまだ読まれてない方は是非こちらを先に読んでいただく事をお勧めする。


20にしてドキドキガクガクの人生初デートを終えた俺は、完全に脈アリ(だと当時の俺は思っている)女の子を日本に残し、アメリカ留学へと飛び立った。留学中は本当に授業に行って向こうのオタク達と遊ぶという変わり映えのない日々で、オタクとばかり連んでいたからか女の影は一切なかった。(それは日本でも変わらずだが。)YとはLINEこそ続けてはいたものの1日に1往復、話さない時は1週間以上話さないみたいな童貞のクソLINEだったので俺はすごくやきもきしていた。そんな毎日だったが年末が近づいたある日、母からLINEが届いた。

「飛行機代はいいから年末は帰って来なさい」

これは…!Yと会う絶好のチャンスではないか!
しかも年末ならクリスマスも近い!クリぼっち回避!やったー!

母親からの1行LINEでそんな脳内お花畑を繰り広げ、俺は早速Yを誘った。

「冬休み帰る事になったから会いたいんだけど24とかって空いてる?」

童貞にしては大胆な物言いだが、俺はこの一言を送るか送るまいかで30分くらい迷っている。
しばらく返信はなかった。気が狂いそうだった。行けるか?行けるのかこれは!?

ピロリン♪

来たっ!!!スマブラのオンライン対戦半ばでコントローラーを放り出して俺はスマホを見る。

「ごめーん、24はバイトなんよ。26は?」

24に働いてるY、いい子すぎだろ…!これは行ける!!俺はその日、26にYに思いを伝える事に決めた。

そして時は流れ俺は日本へと帰国、そして当日。

今回の俺はこれまでとは違っていた。前回の右も左もわからないデート経験なしのクソガキではない。俺はデートをした事がある!!店まで予約してやったぜ、小洒落たイタリアンとか取っちゃってこんなの絶対落とせるだろ!無知であるが故の自信過剰。今振り返ると顔を手で覆いたくなる。

時間も今回は10分前に来た。30分前に来るのはクソ童貞だけだ。(ちゃんと童貞)

「おまたせ!ちょっとだけどおかえりw」

「ありがとw いやーやっぱ日本はいいね、Yがいるし」

「何それーww」

そんなジャブを打ちながら奥渋谷の小洒落たイタリアンへと向かう。

「アメリカはどう?」

「いやーオタクの仲良くなっちゃってハイになりながらゲームばっかしてるw」

「ちょっとーw ダメじゃーん」

「勉強もちゃんとやってるから!」

「ほんとにー?」

「あ、ここだわ」

思ってたよりも洒落てて少しビビる俺。いや、ここは大人の余裕を見せなくては。俺はできる大人なんだ。

余裕を見せようとするもこの後に告白が待ち構えているのが恐ろしくて気が気じゃない。会話の内容もあんまり入って来ない。半ば上の空だ。だがそんな俺の脳にでも、はっきりと刻まれた会話がある。

「んー筒子丸にならこれ見せちゃってもいいかなー」

Yが少しにやけながら言う。

「え、何何見せてよ」

「えーどうしよー」

そんなに迷うって何だ?何なんだ?そう思う俺が次の瞬間見せられたのは予想だにしない物だった。

「んー、じゃあはい!これ!」

渡されたスマホを見るとそこに写っていたのは観葉植物だった。なんだよ、なんでこれをもったいぶって……………





って大麻草やんけこれ〜〜〜〜!!!!!!!

法律は守れ〜〜〜!!!!

エネル顔になりそうな自分を必死に抑えながら平静を装ってYに聞く。

「なんでこんな写真あんのwww」

「友達が大麻売っててそれの育てる手伝いしてんだよね」

とんでもねえ女好きになっちまったよ俺!!!!
でも大麻育ててても好き!!!惚れたら負け!!

「やっばwwwww 捕まんないでねwww」

「流石にそんなヘマしないよーw」

さっきまで俺のドキドキ♡セカンドデートだったのに世界観が一気に地元最高!になってしまった。そこからYがバーテンのバイトを通して様々な客と出会い、ここでは書けないような色んな経験をさせてもらった話を聞き、俺はドン引きするどころかより一層Yを好きになってしまっていた。

「んじゃ今日は帰国祝いって事で私が出すよ!」

「いや悪いって俺出すよ」

「バイト3個かけもち舐めないでもらっていいですか?お金ならあるので」

「いいんすか?んじゃごちそうさまです」

「うん!」

そうしてYの押しに負け、奢ってもらってから再び渋谷の寒空の下へと出た。あとは告白するだけ。俺の膝はもう生まれたての子鹿のようになっていた。

「こっからどうする?」

「なんかイルミネーションやってるらしいし行かない?」

「いいねー、行こっか」

デートプラン、ちゃんと考えてんねんこっちは。
そこで告白するだ俺は!!!

寒空の下、青の洞窟へと向かう。向かう途中、俺はYの手が握りたくなった。酔いがそう思わせたのか、それともそれだけYの事を好きになっていたのかはわからない。でも俺はずっとYの手をチラチラ見ながら、握るタイミングをずっと考えていた。

「あそこ美味しかったねー、筒子丸センスいいと思うわ」

「だろ?任しとけって」

他愛もない話をしていると青の洞窟に着いた。

「わー、綺麗だねー!」

「ね、ここ野郎としか来たことなかったけどなんか見え方違うわw」

「何それww でも私もこういうとこ来たことないなー、なんかカップルばっかでやんなっちゃう」

「だよなーw」

これ、いけるか?いけるのか!?もう告白しちまった方がいいのか!?

判断しかねているといつの間にか青い幻想的な世界は、ただの渋谷の街頭へと変わっていた。

「綺麗だったねー、やっぱカップルしかいなかったけど」

「ね、久々にああいうとこ行ったわ」

「良かったらもうちょい散歩しない?新宿とかの方まで」

「いいね、しよっか」

今思うとYは俺に告白させる猶予を与えていたのかも知れない。でも俺が人生でした事のある告白は中2の時にいきなりLINEで「好きです、付き合って下さい」と送り罰ゲームだと思われたあれだけ。面と向かって告白なんてした事がないしやり方もわからない。そうして歩いている内にもタイムリミットは着々と近づいてくる。する?しない?どちらにせよ駅に着いてしまう前に決めないと不完全燃焼で終わる。さあ、早く決めろ筒子丸!


そうこうしていると駅に着いてしまった。

「んじゃ今日はありがとね、また留学帰って来たらご飯行こ!」

「うん!」

できなかった。当時の俺は臆病すぎた。俺の頭は後悔でいっぱいだった。ニューデイズで小瓶を買って一気に煽った。俺の馬鹿。何で好きの一言も伝えられなかったんだ。俺は泣いた。帰りの電車で人目も気にせずに泣いた。友達にも電話した。

「お、俺ぇ……告白できなかった……」

「お前さ……後悔するぐらいならしとけよ」

「ビビっちゃった……怖かったんだよ……」

「まあまたご飯行こって言ってくれたんだろ?留学終わって帰って来たらすればいいじゃんよ」

「ヒック…う、うん…そうだな……」

こうして俺は多大なる後悔を胸に上の空で正月を過ごし、アメリカへと帰った。別に何も気まずくなんてないのに、俺が一方的に気まずくなってあまりLINEもしなくなった。そして帰ってYと会う事を考えながら、アメリカのオタク共に激励されて俺は留学を終えた。

帰国の便を取って真っ先に俺はしばらく話していなかったYにLINEを送った。

「留学終わったよー!来週末とか良かったらご飯行かない?」

「いいね!」

この一言で終われば良かった。続きなんていらなかった。でも、この一言には続きがあった。

「彼氏に行っていいかどうか聞いてみるね!」

俺は絶望した。ずっと胸に抱えていた後悔は超新星爆発のように膨れ上がった。俺があの時行かなかったから痺れを切らしたのか、元から脈ナシだったのかはわからない。でもどちらにせよ今Yに彼氏がいる事実は変わらない。俺はあまりのショックで、もうYに返信する事はできなかった。

「クソッ!クソッ!クソッ!クソおおおおおおおおおお!!!!!!」

Yからもらったスマホリングを引きちぎってゴミ箱に捨てた。

「俺が、俺が臆病だったから……」ポロポロ

また泣いた。告白できなかったあの晩よりも泣いた。部屋が涙に沈んでしまいそうなくらい泣いた。

こうして俺の儚い恋は終わった。そして俺は誓った。これから好きになる人には例えそれが勘違いだったとしても、向こうからしたらイキ告に感じたとしても、後悔のないように思いだけは伝えようと。その日、俺は少しだけ強くなれた気がした。

ここから先は

0字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?