5月の読書感想文:私は幽霊を見ない/藤野可織先生
私が好きになる人(性別問わず)の特徴として、ひとつこういうものがある。
それは、大真面目に何か物事に取り組んでいることだ。
取り組んでいることが何であれ構わない。
それが他人にとっては、なんで?って思うようなものでも問題ない。
その人が、そのことに情熱を持って、愛を持って、真剣に取り組んでいる姿が好き。
そんな私にとって今回の本は、ドタイプな本だった。
だって、幽霊を見ないことについて真剣に考えてはるから。
各章、大マジメに幽霊を見ない(見えない)ことについて論じているのだ。
何かに情熱を捧げている方の行動や考えは、新たな世界を見せてくれるので、とってもinteresting だ。
私が面白いなと感じたエピソードは、
藤野先生のご友人のお姉様がイギリスに留学中、金縛りにあってイギリス人の女性に話しかけられていたが、英語が分からないため、起きてから考えるとそんなに怖くなかったと。
それを受けて藤野先生は、せっかく何かを伝えたくて現世に戻ってきたのに、言語が通じない人のもとに出たせいで伝わらないのは可哀想だなぁと思ったそうだ。
数年後、藤野先生がアメリカへ留学中、宿泊先が幽霊が出るといういわく付きののホテルだったため、
私は英語が得意ではありません。他の人は英語が話せるし、通じるので、その人の方へでてください。
というような英訳を必死に覚えて、寝ていたという話だ。
このエピソードめっちゃいい。
お酒の席で聞いたらビール3杯はいける。
結局このホテルでも、藤野先生は幽霊を見なかったそうだ。
◯◯◯
ご自身が幽霊を見ない(見えない)ので、どうして自分は幽霊を見ないのか、どういう状況下だったら幽霊が見れるのか、心霊スポットに行った場合は…など、見えない状況に対して真剣に考察しているところが、この本の魅力だ。
そのなかで、実際に幽霊の存在を肌で感じとった(見たり、金縛りにあったり等)知人の方のエピソードも各章あるのだが、それが結構怖いのもある。
面白いエッセイ本だなぁと思いつつ読んでいると、急に怖いのが混ざるので、そのバランスもすごくよかった。
私はこの本を読んで、もし自分が不慮の事故にあったりで、突然この世から去ったとしたらどうしようと考えた。
もしそうなった場合、友人たちに連絡してもらうために、私のスマホのパスワードを教えないといけないから、夫の前に出ないといけない。
幽霊ってレベルがあるのだろうか。
たとえば、部長クラスじゃないと、現世の人間とは話せないだったら困る。
私のレベル(?)だと、物を落とすとか家鳴りのような音を鳴らすことしかできなかったらどうしよう。
今のうちに夫とモールス信号を勉強しとこうか。
思いがけず終活のことまで考えてしまった。
ただ面白いだけでなく、思考の幅も広がるとても良い本だった。
ぜひ暑くなるこの時期にオススメしたい。