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ヤマトきゅんと恋に似たもの

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2022年7月の記事一覧

日が昇れば世界は元通りとかそんなうまくいかないって

日が昇れば世界は元通りとかそんなうまくいかないって

「この世界でお前と話通じなくなったら終わりやから」

「え?」

聞き取れるかどうか微妙な声量で、ヤマトが言った。

ミーンミーンミーン。

アブラゼミが窓の外で盛大な賑やかし。

ヤマトの横顔は相変わらず綺麗だ、とミナミは感心した。

髪を後ろにまとめ、ピアスホールから光が差し込んでいる。

「それ、あける時痛くなかったの?」

「もんどりうったよ」

「だろうね」

近所の溝川から拾ってきたビ

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熱帯夜の少年少女

ヤマトはチェッカーズを聴きながら、首の回らない扇風機に向かってメンチを切っていた。

ご機嫌斜めなヤマトもそれはそれで見ていられるな、と思いつつミヤビは「どうしたん? バイトで嫌なことでもあった?」と聞いた。

「……確かに、確かに俺はこないだ店長から『この失敗作が!』って言われたけど、それは問題じゃないねん」

にゅい、っとほっぺたを引っ張りヤマトが答える。

傍にあるスマホの最終履歴は東京都内

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