日が昇れば世界は元通りとかそんなうまくいかないって
「この世界でお前と話通じなくなったら終わりやから」
「え?」
聞き取れるかどうか微妙な声量で、ヤマトが言った。
ミーンミーンミーン。
アブラゼミが窓の外で盛大な賑やかし。
ヤマトの横顔は相変わらず綺麗だ、とミナミは感心した。
髪を後ろにまとめ、ピアスホールから光が差し込んでいる。
「それ、あける時痛くなかったの?」
「もんどりうったよ」
「だろうね」
近所の溝川から拾ってきたビデオデッキをセッティング。
本日は映画会。夏に見る『ホーム・アローン』はこれまた格別だ。
裸に靴下。水着にニット帽。夏のサンタ。
小さい脚立に座りながらショートホープを吸うヤマトが、壁に立てかけたテレキャスに徐に手を伸ばす。
ぺちん。ぺちっ。ぺち。
へたくそな音が放出される。
「あのひとの、ママに会うためにっ」
パトカーのサイレンがすべての幸福を掻き消した。
「悪い大人がいるもんだねえ」
ゆるんだ弦のまま、ヤマトは手を止めることなく言った。
ハマショーの『MONEY』がすきです。