みやすけの詩 蒼き花々の喧騒

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清らかな 川の流れ
風の囁き 細やかに雑音が踊る
言葉の覚束ない世界に
乱反射する 水滴
それは湿潤した花々の喧騒

鬱蒼とした景色の中で 呼び掛ける
走り抜ける あなたの声のする方へ

行かないで
この両手から零れる 水に
映る 幾重にも混ざった 感情の澱が

苦しくて 重ねた掌に 瑞々しく 淀む
愛する意味さえも まだ理解しないままに
恋を謳う言葉だけが ただ 零れ落ちて行くから

ねぇ この場所で出逢ったのは
必然だったの?
流れる川 せせらぐ風の冷たい聲に
身を屈め 怯えていた
聴こえる 心象を湛え 忍び寄る あの足音が

行かないで どうか

ねぇ どうして
硝子のような瞳に 映る
過ちを犯した過去の因縁が 今になって
この胸を擽ぐるのは

もう 耐えられない
噴き出した 花々の切ない祈りに
手を伸ばした 鈍くなって行く感覚
そして沈黙の瞬間
花弁が散る 色鮮やかな死相を 閃かせ
終焉を告げる足音を立てながら

此処は何処?
溢れる涙 幾重にも交わる 感情の綾が
深く この胸の鼓動を 揺さぶるから
お願い どうか
降り出した雨に 肌を打たれ
ただ 零れ落ちて行くのは 嫌だから

行かないで

花々の華やかな舞いに 揺られて
静まり返る
水を湛え 溢れ出す 言葉を欲するように
あなたを捜した
もうこれ以上 傷つきたくはないから

清流は波立ち 鼓動を打つ
僅かな 記憶に遺るのは そう
いつも微笑む あなたの姿だったから

誇らしく 咲き誇る 小さな花の聲に
見護られ 戯けて魅せる

和やかな流れの最中で 静まり返った 花々
明滅する 生命の燈 浮遊する記憶に
まるで応えるように 手を翳した

水中に溺れ 小石に揉まれて
毀れて行く 命を喪った 倒木

この淋しさに 寄り添うのは きっと
もう既に 役目を終えた あの花弁だったから
舞い散る 零落の刻
その姿は とても綺麗だったから

「行かないで」

零れ落ちる 泪 それは花弁に滴る 輝き
それは最期の瞬間を 彩る 最愛の徴
だったから

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