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【ピコピコ音楽レビュー その1】 Aphex Twin - Selected Ambient Works 85-92 (1992)

こんにちは、ゴーヤです。

始まりましたピコピコ音楽レビュー。
将来的にピコピコ音楽(テクノ、エレクトロ)を鳴らしたい大学生が、ピコピコ音楽を中心に自由にレビューしていく記事となっております。


今回はピコピコ音楽界を大きく揺るがしたといわれるワープレコードの中でも圧倒的な存在感を放つ、テクノ界のモーツァルトこと、
エイフェックス・ツイン!!!
彼の1st アルバムになります。伝説はここから始まったわけだ…!

Aphex Twin - Selected Ambient Works 85-92 (1992)
最も有名なアー写。かわうぃーね。

事前に何曲か聞いてはいましたが、アルバムを通してきちんと聞くのは初めて。
タイトルにアンビエントとあるので浮遊感ある曲がそろってるのかな?
早速聞いてみよう!レッツピコピコ!


曲別レビュー

①Xtal

事前に聞いていたやつですね!
てかまじで一年前くらいに聞きまくってた曲です。

気持ちいいミニマルなテクノの印象だったんですが、
思ったよりも反響音がすごい。ディレイしまくり。

近未来的なイメージがありましたが、よく聞いてみるとレトロチックな音質
最近のクラブっぽいテクノが苦手でなんでこれが聞けるんだろうとちょっと前から疑問でした。
なるほど、何気に親しみやすい音をしていらっしゃる。

感動させようとかそういう作為性を微塵も感じさせませんねこの人は。
純真無垢な響きで、何の疑問も生じずにスッと入ってくる。
一曲目から名曲過ぎて大分語れますよこれは。

②Tha

九分!?長い!(笑)
急にアンビエントっぽい長さに。
一曲目の存在感がすごすぎたので、アンビエントアルバムということを忘れていました。

不安要素多めな曲。
閉塞感がすさまじいです。
でもこれこれ!この不穏な感じが彼の曲の醍醐味だよ!

なんとまあビートの空間性がえぐい。
普通のアンビエントだったらメロディがふぁあーーーみたいな感じだけどこの曲はドラムマシンが一番空間的だ。
箱に動物をいれて行動だけを観察してるような、機械的な怖さがあります。
でもやっぱきもちい。一瞬やった。

③Pulsewidth

クラブ!?
エイフェックスツインによる、激しいEDM苦手勢のための優しいクラブミュージックだ!
ありがとな配慮してくれて。

激しくしない代わりに気持ちいいノイズ入れたり、リズムで遊んだりしてくれる。まさにヤリ手だね、彼は。
弾けるようなドラムに高揚感あるシンセのフレーズが抜群にポップ!
彼の作品の中では、大分聞きやすい部類に入ると思います!

④Ageispolis

一番ピコピコしてるのが来ました。
ここまで聞きやすい部類のポップ・ツインが連投されている。

わかりやすくアンビエント+テクノといった曲展開。
テクノ味のあるフレーズで始まったかと思いきや、ピコピコとした硬い印象は徐々に薄れていき、浮遊感のあるサウンドへと変化していくちょっと内省的なポップ・ツイン。
展開が多くて楽しい曲ですね。そして何気にグルーヴィ。
波の音とかも入っていて、効果音も面白いです。

ぶっちゃけここまで全部事前に聞いてます!(笑)
ここからが未知の領域です。

⑤ I

完全なるアンビエント
どことなく水の流れを連想させる。
水中にいるようです。
こもったような音象と神秘的なメロディが水中の怖さ、美しさを同時に表現しています。
短いのがちょっと惜しい。もうちょい聴いてたい!

⑥Green Calx

急に危険地帯に入ってきたようなサウンドになってしまいました。
USJ のジュラシックパークを思い出します。WARNING!!! 
水分量多めで暴力的な響きの音がグロテスクさを演出。
生物的な動きを機械で表現しているようです。
重いものが突進してくる、そしてそれを上から俯瞰して見てるよう。
楽し気にグロを鳴らすのがまさに狂気、まさにツインという感じ。

ドラムの強弱がドラマチック!
繊細な音楽性だからこそ成せる業ですね。
ツインの代名詞、金属音がやってきた。
これが「Alberto Balsam」に繋がるんだ…!熱いね…!!

⑦Heliosphan

全体を包む雰囲気はダークですが、力強く疾走感のあるドラムの感じや、縦横無尽駆け回るシンセ?のフレーズ等が泥臭いエモーションを演出してます。
かっこいいです!
シンセが生み出す神秘性がやっと希望を感じる音に変換された!

リズムのノイズっぽさが泥臭さを増し増しにしてます。
なんかラスボス戦前の勇者の音楽に聞こえますね。
あくまでゲーム音楽って感じです。やっぱ俯瞰してる。

⑧We Are the Music Makers

これまたクラブっぽい。DJの声が響き渡ります。
アンビエントな音響はもちろん地続きで使われていますが、そういったふわふわした世界観というよりは肉体的なセッション感が強め

歪む音がダーティでエロチックな魅力を発揮してきました。
レトロでダーティな音同士がぶつかり合い、複雑に絡み合って、グルーヴィな気持ちよさを発揮しています。
もちろんアンビエントな響きもあるのでもう完ぺきとしか言いようがないです。

⑨Schottkey 7th Path

金属っぽい響きの痛々しいリズムに、シンセの不穏なフレーズが地味~でイヤ~な怖さを演出しています。
なんだかすごくやりきれない気持ちになる曲です。
工場の大量生産が及ぼす、あの先の見えない不安さ。
それでも生産は続く、そういった狂気を感じます。
容赦なく進んでいく日常からの痛みが表現されているようです。

シンセなどの上物の楽器は淡々と進むのですが、アンビエントな響きのものや低音がひっそりと展開していきます。
まるで日常に押し殺されてきた感情がぐにゃぐにゃと動き出すようです。

⑩Ptolemy

変な感情になるクラブ曲
ドラムマシーン大暴れでめっちゃ楽しい。リズムの引き出しが多くて飽きが来ません。
変な曲です。低音も高音も全部変な音。
ああもうそろそろ狂気の底に吸い込まれそうです。
ここまでくると笑けてきます。

この顔になってきた。

だんだんツインも遊び足りなくなってきたようで、リズムに加え、音響やなんやかんや全部で遊ぶようになってきました。
これまたグルーヴィでした。こりゃかっこいいわ。

⑪Hedphelym

もうなんだこれ。自分を抑えられなくなってますね。
すっっっっっごい不協和音。
でもその不協和音が気持ちいいってタイプの曲。
Radioheadの「Idioteque」味があります。教会の音のようです。
段々つかめなくなってきました(焦) どこに向かうんだこれ…。

メロディをかき消すほどの不協和音。
でもやっぱシンセは温かみのあるレトロな音でどうも嫌いになれない。

⑫Delphium

こういうポコポコしてる音大好きです。気持ちよすぎる。
ディレイを活かした陶酔感のあるナンバー。
これは大分テクノっぽい。普通に他のアーティストが鳴らしていてもおかしくはないですね。
しかしドラムの音色が「うにょっ」としてて不穏さはぬぐえません。
やっぱそう気持ちよくはいかないかあ…。

⑬Actium

きましたよラストナンバー!
このアルバム内で最も気持ちいい曲!(※主観)
ザラザラしたベースとザラザラしたドラムがザラザラしてる曲。
ザラザラ過ぎて、つかめな過ぎて、メロディが超引き立ってる!
もうこれはノイズ音楽でいいのでは。
ですがそのメロディがなんとも安心感のある展開で、すごく落ち着きます
聞きやすいので最後のナンバーにふさわしいですね。


全体レビュー

一枚目とは思えないほどの完成度の高さでしたね。
やはりエイフェックス・ツイン、他のテクノアーティストとは一線を画すといいますか、まず根底としてこれはテクノなのか?というところまで怪しくなってきました。(まじかよ)

他のテクノアーティストと比較してみても、ぶちあがる展開が無さすぎるし、逆にミニマルなものを想像しても、音にリズム以外で感情の動きがあります。
アンビエントと言われて私が想像するのは、ブライアンイーノのような壮大で自然的で感動的なもの。
ですがこのアルバムは、水中の中にいるような、くぐもった不鮮明な音です。

しかし、それがなんともリアル。
シリアスだともとらえられますが、私はそう考えたくはないです。
なんだかこう、暗い方向に展開しそうなところをなんとか誤魔化してる感じがするんですよね。Radioheadの影響元としても知られていますが、やっぱり似て非なる存在。
暗く、深い方向に行こうとしていることをさらに上から無邪気に笑っているかのような視点です。
まさにあの写真のようにね。

また出てきた。

最近は科学信仰時代絶頂期で、依然としてテクノロジーが人間の感情を超越する存在として、資本主義社会ではとてつもなく大きな権力を発揮しています。
その中でもエイフェックス・ツインはそういった科学の無条件な権力性を暗示する存在として90年代に台頭したのかなと。
そしてあの顔は完全に仮面だと。
テクノという舞台に立たされ、現代社会を風刺しろ命令されたのかもしれません誰かに。
結果として、エイフェックス・ツインはめちゃくちゃテクノミュージシャン、そして役者だなあという印象に落ち着きました。


一曲一曲は何気にきつい!
次からは色々変えてやってみます!こうご期待!

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