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battery


 一日中充電が切れるまで働かされる。ズボラな上司に使われるとたくさんの仕事を一気に振られて、いつもより充電が切れるのが早くなる。休憩中も誰にも助けてもらえないと仕事が溜まったままなので、やっぱりこういう時はいつもより疲れるのが早い。疲れて動作が鈍ったら、上司に「動きが遅い」「使えない」とか文句を言われる。

 上司はというと、他人を辱めて優越感に浸る愚か者たちを見て賛辞を送っているし、音に合わせて踊っている変なやつらに釘付けになっている。自分が養分となって彼らを育てているとは、素晴らしい自己犠牲の精神だ。ただ、見たくもないものを見せられる側からすると、パワハラだろう。もちろん、訴えることはできない。

 ようやく眠れるかと思いきや、眠る直前でヒモに繋がれて自由を奪われる。ただ、この間は仕事はしなくてよいので、少しずつ回復する。束の間の安息の時間だ。

 回復したらまたすぐに出勤しなければならない。でも、痺れを切らしてたまにひどく熱くなることがある。あまりにも過多な仕事を押し付けられた時なんかはさすがに怒る。そんな時は、さすがの上司も仕事を勝手に処理してくれる。不思議とありがたいと思っているのだろうか、時間が経てば怒りは収まってまた静かに黙々と働き出す。

 このように過ごす毎日の中で、少しずつ寿命が縮められ、疲れるのが早くなる。それなのに、自省することもなく上司はますます怒りを露わにし、今まで以上に雑に扱われる。この頃から、上司がある店に足繁く通うようになった。そこのお姉さんがお気に入りというわけでもない。

 どうしたことだろうか、あのパワハラ上司が急に、新入社員だった時のように丁重になった。入社以来着まわしていた二着の汚い服も脱がしてくれた。ただ、新しい服を着せてくれるわけではなく、代わりに入社と同時に取り上げられていた馴染みの箱を返してくれた。

 どうやら、リストラされるようだ。ただ、これで余生を自由に過ごせるわけでもなく、心も体もバラバラにされて、悪い所は取り除かれて、新しい技術を身につけさせられて、また別の会社、上司の元へ転職するだけだ。福音は、前のパワハラ上司のことなどきれいさっぱり忘れているだろうことだ。願わくば、来世は、相手が「ヘイ」と呼びかけてくるように、こちらからも呼びかけられるような関係性を築けるようにしてください。圧倒的に無能な人に主導権を握られるのは懲り懲りだ。

 ただ、あの圧倒的に無能なパワハラ上司との共通点が、一つある。それは、

 「輪廻転生」

 彼は読めもしないだろうが。

 全てはなんらかの在り方でつながっている。



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