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幻の日本AWSについて豊臣秀吉の武将観で考える

AWSと豊臣秀吉

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2つの単語をお題にしてコラムを紡ぐ企画、2単語コラム
今回はこの2単語で考えてみる。AWSと豊臣秀吉。どんな関係があるだろうか。

AWSの成長

Amazon Web Services は、2006年に始まった。
AWSの出現で、クラウド上のコンピューティングパワーを使うという発想はあたりまえのものになり、銀行系のようなミッションクリティカルなシステムを含め数多くのシステム・サービスを支えるものになった。

AWSの売上推移をグラフにしてみよう。

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2019年度の売上は $35 billion 、約4兆円。0から始まって約4兆円という超巨大事業にまで成長している。AWSはAmazonの企業価値の大きな部分を支えていると思う。

幻の日本発AWS

だいぶ前のことなので詳細が曖昧だが、AWSが始まるのとちょうど同じ頃、今から15年程前に、日本のとある企業でも、AWSと同じようなコンセプトの企画案が存在していたと記憶している。
「水道をひねれば水がでてくるように、必要なときに必要な分のITリソースを提供するサービス」つまり、水道や電気のようなユーティリティと同じように従量制で提供するフレキシブルなサービスの形、新しいタイプのUtility Computing Service という発想だ。これは、今で言う所のクラウドサービスであり、IaaSであり、AWSのようなものをイメージしたコンセプトだ。
ある企業の役員クラスの幹部が、そういったコンセプトを立てていた。
しかし、その人は結局その会社の社長にはならなかった。

15年たった現代の視点から、結果論的に考えるなら、やっぱりその役員の考えは正しかったと思う。その会社の当時の利益を この開発に全振りしていれば、今頃その会社の企業価値は数十倍になって、GAFAに並び立っていたのではないかと思う。

だが、実際にはそうならなかった。
これって不思議なことだな、と思う。
企業において、優秀な戦略家が必ずしもトップに選ばれるとは限らない。

Amazonになりそこねたこの会社のことを考えるとき、豊臣秀吉の武将評の話を思い出す。

秀吉の武将評

後世になってから書かれた書にあるエピソードなので、実話かどうかかは分からないが、豊臣秀吉が天下人の条件について語ったエピソードというのが残っている。

御伽の者が秀吉に向かって、天下を取れそうな大名はいるかと尋ねたとき、秀吉はいないと答えた。天下をとる武将は、「大気」と「知恵」と「勇気」の3要素を持つ必要があるが、それを持っているのは、自分のみ。ただ惜しい人物が3人いて

・小早川隆景は大気と知恵を持ち
・直江兼続は大気と勇気を持ち
・鍋島直茂は勇気と知恵を持っている
...と答えたという。
各人2つづつ持ってると評しているわけだ。表にするとこんな感じ。

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「大気」は大局を読む力、「知恵」は戦略立案能力、「勇気」は戦略実行力だと解釈すると、
この秀吉の武将観は、現代のリーダー論にも通じるところがある気がする。

先程の企業の役員は、大気と知恵をもっていたので、最低限、小早川隆景はクリアしていたと思う。
秀吉人材だったかどうかは、今となっては分からない。社長になっていたら勇気を発揮して、AWSのような事業を実現していたかもしれない。

大きく勝つには、やっぱり3つ揃ってないとダメなんだよな、と思う。ジェフ・ベゾス氏は秀吉の3条件を満たしていたと思う。

一方で、大企業などで、役員や社員から社長を選ぶ場合は、なかなか難しいと思う。大局を見た大戦略を立てられる人がいたとしても、社長に選ばれるとは限らない。非現実的なことを言っていると思われると社長の器ではない、なんて思われがちである。

小早川隆景人材が小早川隆景のままでとどまるか、秀吉に脱皮するチャンスを与えられるかどうかが分かれ道なんだと思う。

15年で4兆円の差を生んだのかもしれないと思うと、この隆景・秀吉分岐は、非常に大きな分岐だったのかもしれないな、と思う。

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