働かざる者食うべからず
Twitterでアリの記事が話題になっていた。
要約すると、昔からよく聞く働きアリの法則のことで、2割の怠け者のアリは不測の事態が起こったときの予備軍として普段は暇をしているということらしい。
働かざる者食うべからずーー
無職の私の心をむしばむこの言葉。
私はコロナ禍により秋から職を失った。
不測の事態になったら、クビを切られるーー
人間界はアリの世界とは真逆なのだ。
幼い頃、母から何度も聞かされた。
私の両親は共働きであったし、また私の母の両親も家業があり、朝から晩まで働き詰めであったという。
そういう家で育ったので、高校生のときもバイトしていたし、大学進学したときも一回生からさまざまなバイトを行っていた。
また私の将来についても幼い頃から何度も言い聞かされてきた。
公務員になりなさい。
「師」のつく職につきなさい。
長女なんだから婿養子をもらいなさい。
私自身のやりたいことを考えることはタブーに感じていた。
大学では教員課程を受講していたが、全く意欲がなく、また能力もなかったので、教員採用試験には受からなかった。
私は少し安心した。
大学を卒業し、契約社員として働いた。
最初のうちはお金を稼いだり、仕事の勉強をするのが楽しかったが、2年もするうちに飽き、派遣でさまざまな仕事をするようになった。
が、コロナ禍で何もすることがなくなった。
やっぱり少し嬉しかった。
問題をコロナのせいにすることができたからだ。
でも実際にはコロナのせいなんかじゃなく、私自身の能力や意欲の問題なのだ。
だれがこのしんどい言葉を言い出したんだろう。
調べてみれば新約聖書のパウロの書簡の言葉だったらしい。
新約聖書『テサロニケの信徒への手紙二』
「働こうとしないものは、食べることもしてはならない」
その後レーニンが改変し、共産主義的思想の不労所得を非難するような意味合いになった。
レーニン『競争をどう組織するか?』
「働かざるものは食うべからず――これが社会主義の実践的戒律である」
これはソ連憲法にも記載される。
では日本では?
三大義務の一つ、勤労の義務だ。
日本国憲法第27条
「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」
これらを見てわかったことは、
「働かざる者食うべからず」の「働く」の意味するところは、その能力(成果)が求められているのではなく、「働こう」という意欲が求められているということだ。
納得がいった。
無職がハローワークに行くだけでお金がもらえたり、
障害者の人が働く能力やモチベーションがなくても就労支援をされる理由を。
能力がなく、働く意欲もない私のような人間が、職についたところで、雇う方も迷惑だし、私も嫌だし、私の家族以外のみんなを不幸にしているのに。
そうやって働かない理由を見つけては、また安心している。
アリとして生まれていたら本能として働く意欲がそなわっていたのか?
それとも、私が働かないのは人間の本能なのか?
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