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新しい事業アイデアをデザインするときの「ズラシ」と「くみあわせ」のテクニック

このnoteについて

これまで新規事業の立ち上げをご支援するなかで、業種業態は違えど、新規事業をデザインするときに使っている考え方やアプローチ、テクニックはだいたい同じプロセスをたどっているような気がしましたので、そのフローをまとめてみました。
今後、いくつかのケースで、具体的に紹介していくと思います。

どんな事業について書いている?

わたしはWebサービス事業であったりSIerであったり、クライアント様の事業遂行をご支援する仕事にたくさん携わってきました。その中で、「新しい部署の立ち上げ」や「新しい製品を活用するプロジェクトの立ち上げ」にも参画し、製品コンセプトを固める併走プロジェクトもご支援してきました。

ここではリーン・スタートアップやMVPを考えるときと同じような方法で、プロダクト・サービスをスピーディに組み上げる場合の、最初の発想段階からビジネスモデルを固める部分までにフォーカスしてご紹介してみます。

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プロジェクトのきっかけについては、
技術アイデア先行の場合もあり、ユーザーファーストもあります。

そして、私自身のコンピタンスであるHCDサイクルやデザイン思考の考え方もつかいつつ、一方でそれメインにならない発想のしかたをしていたと思うので、詳しく書いてみようと思います。

ただ単にプロダクト・サービスを市場にフィットさせようとするものではなく、どうすれば、ユーザーと開発側とサービス運用に折り合いをつけて継続的にサービスを提供していけるのかの視点も、あわせて考えています。

ポイント1:視点・視座をずらしてみる

新しいプロダクトやサービスを市場フィットさせるにあたっては、経営陣が力強くコミットされている場合がおおく、そのほとんどがロジカルな思考で組み立てられていることがほとんどです。ロジカルな思考は便利なのですが、ロジカルな故に皆が同じ結論にたどり着きがちです。

ただ、そのロジカルからすこし踏み出すと、みんなが気づいていないだけで、ちょっと視点をずらせば見えてくるものがあります。
それも、ただ徒にずらすのではなく、顧客となる対象者の行動を観察したうえで、インサイトを理解したうえでずらすという作業をしています。

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それをデザイン思考だとかいう言葉でまとめるつもりはないのですが、ロジカルから一歩ふみ出すにあたって、使っている脳の部位や身体の部位は、もしかしたらいつもと違うものかもしれません。

このあと具体的に書き記してみます。

ポイント2:なにをして、なにをやめるか

向き合い方なのですが、「なにか新しい事業を創出するぞ!!」と肩肘張って考えるのをやめることに、気を配っています。

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たとえば、道端に落ちている花の種を、どうやったら芽をださせることができるか?考えるような感じです。

しかも化学肥料とか、ビニールハウスでブーストしようとするのをやめ、
目の前にあるこの植木鉢でできる、シンプルな育て方を考えることを、しています。


だいじなもの

デザイン ビジネス テクノロジー の交点の意識です。

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デザイン+ビジネスだけでは すぐ模倣されやすい
ビジネス+テクノロジーだけでは 使ってもらいにくい
デザイン+テクノロジーだけでは お金になりにくい
全ての交点にある部分が競合優位性になると思っています。

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そしてそれが感情に伝わるものでないといけないと思います。


問題解決ではなく、未来旅行

世にある製品・サービスの問題解決というのは、出し尽くされていると思います。すでに顧客にとっては現状に特に困りごとはなく、日常はつつがなく進行していくのです。

そこに未来からやってきた波紋がひとつ。それが世界を変えて生きます。

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問題解決では到達できない、日常へのあらたなフレーミングの提供がイノベーションといえると思います。

問題解決でイノベーションが起きる時代はとうに過ぎ去り、何年か先の当たり前を未来旅行して、お土産として持ち帰る、そんな向き合い方が必要になると思います。

でも未来旅行なんてできないと思っていませんか?

じつはかんたんに未来旅行させてくれるものがあります。
映画とかアニメとか漫画とか文学とかに、そのヒントがあります。
なのでたくさん本を読み、漫画を読み、映画も見ましょう。


では具体的にどのように発想していくか?を、私が数年前に構想した例をもとにご紹介できればと思います。ネタは少し古いのですが、ご了承下さい。

お題「顔検出できるカメラをつかってなにか」

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きっかけは、とあるメーカーのカメラ売り出し時に『顔検出機能のAPIを使ってアプリをつくろう!』コンテンツがありました。
ロジカル脳だと、まず分野を決めて、顧客の困りごとを探索しよう!となると思いますが、そうではない向き合い方で、おもに女性向けのサービスを発想した手順をご紹介します。

進め方

(0)観察

これは、検討を始まる前の、日頃からの筋トレのようなものです。
いざ筋肉を使おうとしても、トレーニングなしには使えないので、日頃から力をためていく意識です。何気なく日々を過ごすのではなく、少しの変化に驚きを感じる感受性を持っておきましょう(惰性のようにスマホゲーを見ながら俯いて歩いていてはもったいないと思います。)

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観察には、大きくは3つの視点があると思います。

①待ち行くひとや、社会の生態を観察する
 ・通勤中とか買い物中など普段から、他の人の行動を観察して、
  思ったことを心にとめておく

②日常のなにげない経験をストックしておく
 ・近くの人が家族が困っていることを気づいて書き溜めておく
 ・自分がこまったことをなにかにアウトプットする

③海外の事例などを取り込む
 ・海外のニュース事例を取り込んでおく
 ・テクノロジーに関するインプット、キャッチアップをしておく

ストックしたものは、あえてマッピングなど分類をしないで、Twitterなりに、とめどなくアウトプットするのもよいでしょう。

今回のケースでは、
生態
  日頃からバスや電車に乗っており、そのときに女性が化粧をされている
  のがたまにあるのを見ていました。
経験
  鏡のかわりに、スマホの自撮りモードで化粧をされていて、
  おどろいた、という記憶がストックにありました。
事例
  テクノロジーとしては、SNOWなどの加工アプリで、
  整形のようなことをしたり、メイクできることを知っていました。


(1)現象の抽象化

ここから発想のフェーズに入っていきます。
まず問題解決脳だと、発生している一つ一つの課題となる事象に対して、一対一で解決策を考えてしまいます。
あるいは、いくつかの課題をまとめて解決する(それがデザインであると仰る場合もあります)が、それらは課題をあたえられてはじめて解がでるのでしょう。課題のない場では、なにもできません。

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ここでは、課題ではなく、現象を抽象化していきます。

①ひとのやっている行動を抽象化し、
②抽象化したモノのメンタルモデル的競合ってなんだろう?と考えます。
③メンタルモデル的競合に勝つ、超えるには?を考えます。

今回のケースでは
行動
  電車で化粧しているな。化粧するとき鏡を見ているな。
  鏡の代わりにスマホを見ているな。
メンタルモデル競合
  スマホは鏡なのだな。
  言い換えれば、この人の中では、鏡の競合がスマホなんだな。
競合優位
 スマホが、鏡に勝てるところってなんだろう?
 ・スマホは鏡とちがって、顔に仮想的に色をマッピングできるな
 ・スマホは鏡と違って、顔のパーツを変更できるな
 ・スマホは鏡と違って、未来の形を見せられる
 ・鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?の悪い王女は
  鏡にどうしてほしかったのかな?

(2)組み合わせる IDEATE

ここでは先程の発想のフェーズで出てきた断片をこねくり回していきます。むやみやたらにこねくり回すのではなく、カンペをつかいます。
オズボーンのチェックリスト等を使います。

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今回のケースでは
・スマホは鏡とちがって、顔に仮想的に色をマッピングできるな
・スマホは鏡と違って、顔のパーツを変更できるな

結合 →色をマッピングする機能と、
    メーカーの化粧品は組合せられたら、
    シミュレーションできるな。
置換 →今の状態が見えるのではなく、
    未来の状態が見えるようになったら、
    メイクの完成後がわかるな。
結合 →化粧品ライン毎のお化粧後の顔が見えるな。
転用 →その化粧品ごとに、お手本どおりやったら楽じゃないか?
変化 →アフターが分かるなら、手順毎をしめして上げれば、
    プロのメイクを自分で再現できるな。
結合 →メーカー化粧品のラインや、シーズンを選ぶと、
    そのラインでのメイクのお手本が出せないか?

基本となるアイデアがだいぶでてきました。

(3)さらに要素を組合せてみる

そこに主にビジネスモデルとなる要素を組合せられるか?を試してみます。
・ゲーミフィケーション要素
・ソシャゲー課金要素

などを参考に、どうすればユーザーである自分はお金を払ってしまうのか?を考えます。

ゲーミフィケーション要素は以下のようなものです。
参考:「ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義」ケビン・ワーバック、ダン・ハンター(2013)
https://www.amazon.co.jp/dp/B00I2HKLM0/

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今回のケースでは以下のような組合せをしてみました。
・新しい化粧品をトライできる
  →アプリ上で買うか、実際の商品を買うとアンロックされる
・化粧品を買う前に自分でメイク後の顔を確認できる
  →規定回数を設けて、時間猶予または有料にする
・プロのメイク技をフィルター化する
   →いくつかのフィルターは有料にする

(4)絵を描く

具体的にデバイスを想像して絵を描いてみます。
場合によっては、プロトツール等を使用します。

今回のケースでは
プロトツールを使ってワイヤーフレームを作成しました。

(5)着眼点をまとめる

ここでは、こねくり回したアイデアについて、
誰に、どんな体験を与える アイデアなのかを一言でまとめます。

そこのことにより
「何が優れているか?」
「ほかと違う価値はなにか?」そして
「自分たちはなにをしたいのか?」を可視化します。

一般的な例としてしては、
スクラム開発で用いられる『インセプションデッキ』にある
エレベーターピッチ

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リーンキャンバス

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How might we?

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When: いつ Where: どこで Who: だれが Whom: だれに What なにを
Why: なぜ How:どのように How much:いくらで

など整理するフォーマットがありますのでTPOに合わせ適用してください。

今回のケースでは
忙しくてメイクの時間を短縮したい
 けど
新しい化粧品は楽しみたいし、メイクが上手になりたい 
女性
 
向けに
鏡が、メイク後の自分を見せてくれて、メイクする手順まで教えてくれる
 ことで
美しくなりたい願望
 を叶え、
化粧品メーカーに対しては店頭・Web以外の販売手段を作り出す
 事業アイデア
と整理しました。

※これ自体は数年前の企画であり、バーチャルメイク等に関してはすでに大手他社が取り組まれているのは存じております。ここでは一例としてあげています。

(6)ビジネスが組み立てられるか?

どこにビジネスができるポイントがあるか?を、ユーザーのインタラクションと、課金するポイント・タイミングから考えます。

また、その時にお金を払いたくなる衝動は生まれるか?も重要です。
主に以下のような状況で、ユーザーの課金意識は最大化します。
 ・楽になる。
 ・スキップできる。
 ・ブーストされる。
 ・優越できる。
 ・交代できる。
これらはゲーミフィケーションやソーシャルゲームの専門書をご確認ください。

これらの関係性は、CVCA(Customer Value Chain Analysis)シートにまとめることが多いです。

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(7)説得・プレゼン資料の用意

自社であれば、自社メンバー共有用に。
企画コンペなどであれば、コンペの形式に合わせて。
ご支援における事業企画であれば、背景・目的を明確にしたうえで採算性や開発計画などもそろえていきます。

発想や計画化からは離れていきますので、このnoteではここまでとします。


まとめ

イノベーションを起こすぞ!と取り組んで起こったイノベーションがないように、
事業を起こすこと、それ自体が目的になっていると、事業構想は難しいように思います。

事業を考えるにあたっては、以下がポイントかなと思います。

・視点・視座をずらすことを意識する
・なにをして、なにをやめるかを意識する
・デザイン ビジネス テクノロジー の交点を意識する
・日頃からの脳の筋トレを意識する
・抽象化と組合せを意識する

つたない記事でしたが、ぜひ何かの参考になればと思います。


書くのにあたって参照したノート



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