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【セミナー参加】「デザイン経営と社会の関わり方」を考えてみよう

2020/4/8にオンラインで開催された『「デザイン経営と社会の関わり方」を考えてみよう』に参加しました。合計2時間ほどの、グループディスカッションを交えたzoom討論会で、30名を超える多様な業種からの参加者がありました。

どんなセミナー?

ちょうど4/1から弊社にジョインしたエイマエダカツタロウ @katsutaro  さんがファシリテートされるということを、ジョイン前に教えていただき、即 peatixで参加をポチしました。題材は以下の通りで、先日経済産業省から発表された「デザイン経営ハンドブック」「デザイン経営の課題と解決事例」をオカズに、みんなでわいわいやろう。です。

目的
デザイン経営が社会にどのような影響を与えることができるかを事例やディスカッションを通じて考える
詳細

2018年に経産省から出された「デザイン経営宣言」から2年、現場ではどのような導入が進んでいるでしょうか?また、デザイン経営はどのように会社という組織を超え社会を関わることができたでしょうか?
2020年3月同省から出された、「ビジネスパーソンに向けた、デザイン経営の事例集を取りまとめました」を元に、オンラインでデザイン経営と社会課題について対話するディスカッション型オンラインイベントを開催いたします。zoomなどのいくつかのオンラインツールを使用し開催いたします。また同時にグラフィックレコードを実施し議論内容を可視化しながら進行いたします。
対象者
・デザインや経営、社会課題解決に興味のある方
・デザイン経営ハンドブック、事例集について話したい人
日時&場所
日時:4月8日(水)19:30~22:00
場所:オンライン


何を期待した?

近年の個人的な動きとしてサービスデザイナーを標榜し、グラフィックデザインやスタイリングの領域でない、コミュニケーションのデザイン、システムのデザイン、構造のデザイン、組織のデザインにフォーカスする中で、企業が新たな価値を創造していく中においての「マインドセット」や「方法論」、「組織論」の重要性に気づくようになりました。また、2017年に経済産業省・特許庁より発表された『「デザイン経営」宣言』を読み込んでいく中で、単なるデザインの活用にとどまらない、組織の総体としてデザインの意識で取り組んでいく必要があるとの思いを強くしていました。

デザインのもつ力である「可視化の力」と「伝達する力」を存分に活用しながら、社内外にむけて働きかけていく、それができる組織構造なり、報酬体系にしていくことが、グローバルでは、もうすでに求められており、それが利益を生み出す源泉となっているのです。

しかしながら、企業の現場では「デザイン経営、なにそれ」といった反応も多く、デザイン経営宣言でも言及されている「デザイン⼿法による顧客の潜在ニーズの発⾒」でよく使われるデザイン・シンキングについても、本来とは違う形で消費されていくさまを見るにつれ、「意識高い系のBUZZワード」的な一過性ではいけないのだと考えています。

この問題意識をもとに、どうすれば「デザイン経営」がより身近に、より深く浸透していくのか、現状の世間との認識のギャップを確認し、答えの切れ端でも持ち帰りたいと考えて参加しました。

何を学んだ?

前半はILY,株式会社 代表の辻原 咲紀さんによる話題提供、とくにデザイン経営ハンドブックの中身と、実態についてのコメントとディスカッション、
また参加者からの事前質問である「デザイン経営と企業の規模」「優先するのは、会社の成長?社会的インパクトは?」についての対談でした。

後半はグループ対話として、zoomでいくつかの分科会にわかれ、テーマディスカッションとして、「デザイン経営が実践できている」とはどういう状態を指すんだろう?、理想的な「デザイン経営と社会の関わり」とはどんなものだろう?ということについて会話しました。

前半

辻原さんの話題提供の前半では、ハンドブックから、デザイン経営実践企業の実態を取り上げました。デザイン経営の取り組みをしている企業が多数あるとの回答が掲載されていますが、これはヒアリング対象のバイアスがかなりかかっているのではないか?とくに経済産業省の息のかかっている超大企業や先進IT企業のみの事例なのではないかと考えました。

また「デザイン責任者が経営に参画しているか?」は、実態はもとより、外形的には外部から招聘したデザイン責任者をCXO等の地位に据えるだけで「達成している」と言えてしまうわけですが、デザイン経営宣言の本質である組織変革の重要性が浸透しているとは言い辛い結果だなと感じました。

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それが明らかだと思ったのは、デザイン責任者が経営に参画しているにも関わらず、デザインに期待するものが「サービスの企画設計」や「プロダクトの外形」であったからです。

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当然、その「デザインする対象のミスマッチ」は課題として浮かび上がってきます。「デザイン経営の課題と解決事例」では全社的な意識の不統一、さらに言うと、やることはブランディングなのかイノベーションなのか組織改革なのか、といった点の解決には至っていないということがみてとれました。

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このような日本国内での問題意識のなかで、4つの新しい視点について、辻原さんから情報提供がありました。

1.パブリックリレーションとデザイン
パラオ観光局での入国時の誓約書類では、デザインの力で人びとの意識に働きかけ、行動を起こさせる(逆に行動を制限させる)こと。それにより自国の環境を護るという取り組みをしている。

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2.「システム」としてのデザイン
フィードバックループ、報酬体系をデザインすることで、自己強化を起こさせるということ。

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3.ビジネス“の”デザイン
ナチュラルローソンやECOALFなど、新しいしくみをデザインすること。

4.ビジネス“と”デザイン
 組織とその成長をデザインするということ。

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Level 1 製作者
彼らのデザインは「見た目の良さ」をもたらす。keyになる活動はワイヤーフレーム、デザイン方針、インタラクティブプロトタイプ。
keyとなる利点は、プロダクトのユーザビリティ。

level 2 デザインマネジャー
彼らは「職場をワークショップ」に変える。keyとなる活動は、ワークショップ、ラピッドスケッチ、ステークホルダーインプット(ヒアリングとかかな)、デザイナーと開発者をつなぐ。
keyとなる利点は、プロダクトユーザビリティ、顧客満足。

Level 3 デザインストラテジスト
彼らはデザインをスケーラブルなものとして捉える。これらの企業はデザインプロセスやオーナーシップ、明確な役割、基本的な役職を超え、キーパートナーと接続し、彼らの現在のデザインプラクティスをさらに開示します。keyとなる活動は、デイリーセッション、計画と優先順位づけ?、デザインブリーフ、ドキュメントライティング。
keyとなる利点は、プロダクトユーザビリティ、顧客満足、収益(成長)。

Level 4 デザインサイエンティスト
彼らは仮説検証というデザインの力を使う。彼らはでデータ・ドリブンデザインのマスターであり、分析や調査などのプラクティスに長けています。keyとなる活動は、コンセプトテスト、A/Bテスト、データ分析。
keyとなる利点は、プロダクトユーザビリティ、顧客満足、成長を伴う収益、プロジェクト特化の指標、目標達成とコンバージョン思考、コスト削減(節約)、市場投入までの時間、新規市場参入、従業員生産性、ブランドエクイティ。

Level 5 ビジョナリー
彼らにとってデザインとはビジネスを意味する。これらの企業にとって他企業と一線を画すのは、デザインの事業戦略への関与についてです。彼らのkeyとなる活動は、トレンドトラックと先見性(未来視)、プロダクトのマーケットfitテスト、ビジョンアーティファクト(理想を具現化する能力、みたいな感じかな)、領域横断戦略。
keyとなる利点は、プロダクトユーザビリティ、顧客満足、成長を伴う収益、プロジェクト特化の指標、目標達成とコンバージョン思考、コスト削減(節約)、市場投入までの時間、新規市場参入、従業員生産性、ブランドエクイティ、ブランドパテント、株価。

https://medium.com/@sakitsujihara/design-frontier-315e7e6ce122

くわしくは辻原さんのmediumをご参照ください。

個人的には、この5段階を知れたことだけでも価値がありました。我々はLevel1をLevel3に引き上げようとすることを目指し、それをデザイン経営と呼ぼうとしていたが、そうではなくLevel5の領域で、デザインの力によってビジネスの効率性を上げる、それを再現性のあるものとし、先見性をもって事業を切り開く、そのための組織開発であるのだ、という決意を新たにしました。

データドリブンデザイン、デザインドリブンビジネス

デザインを数字で語れるようになることの重要性。

そして、デザインの効果はおそらく、行為と現象における一対一の直結ではなく、定量化できないユーザーの感情・心理・誘導などによる相対的な行動変容として現れる。それを実際のKPIの定量変化とつなげ、数字と理論で説明できるスキルを持ったデザイナーが強いし、今後求められるようになっていくとの思いを強くしました。

「デザイン経営と企業の規模」のテーマディスカッションでは、やはりCDOやCXOを据えるだけなの?という意見がでていました。実態としては、ただのデザインマネージャーに過ぎない、とも。表面的で対応した気になるのは危険で、最終的に目指すところは「デザイン手法による発見・思考法によってより豊かになる」ことなのだろうと思います。それでいくと、事業規模も大きく豊かである大企業よりも中小・零細規模のほうが(現在やっていないぶん)効果が出やすいのではと考えました。

実際大事なのは道具を使うことより、道具でなんの料理をつくるか、もっというとその料理おいしそうか、を組織で共有することですよね。
熱量のない人をあつめてポーズだけしても変わらない。

「優先するのは、会社の成長?社会的インパクトは?」については、成長カーブが平坦になった先の次の打ち手としてデザイン経営が有効で、その成長が社会的インパクトを引き起こすことが健全だ、という意見が出ました。社会的インパクトだけでは一過性で、SNS社会ではすぐにボロが出る、持続的な成長により豊かになることはできないだろうと思いました。

ここまでを、グラフィックレコーダーの @hhhhhhiroko_ さんがデジタルグラレコしてくださっていました。議論の深化をタイムラプスで見せる試みは、とてもわかり易いとおもいました。こんど詳しくきこう・・・

後半

グループ対話として、zoomでいくつかの分科会にわかれ、テーマディスカッションをしました。

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というテーマについては、様々な意見が出ました。
個人的には、デザイン経営を考える中で、デザインの最大の力として「可視化の力」と「伝達する力」があると考えており、
社内に向けると文化の醸成、
社外に向けるとブランディングとなり、
その効果を最大化させるための組織変革をすることが、デザイン経営が実践できているということだろうと考えました。

また、デザイン経営を実践せずとも、すでに事業成長やSDGsできているなら、あらためてデザイン経営いらないんじゃないか?という意見も出ました。できないところが限界を感じて手を出す、もしくは次の成長を見つけるためのものだという意見でした。

ロジカルの対極と捉える意見もありました。既存の方法論では到達できない、ユーザーのインサイトにこれをもってアプローチして、両方の結果をもって経済成長や幸福社会の実現につなげる、それができていることが実践であろうということでした。

グループごとのブレイクアウトセッションだったので、他チームの内容に関してはアウトプットしか見ることができないのですが、このフィードバックもしたいな、と思いました。

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については、社会に対する「新たな発見」ではなく、「実はもう存在してるものを掘起こす」ことであり、ロジカルとアート・デザインの両輪がうまくまわるといいという意見が出ました。

社会の関わりとして大切なのは「社会のニーズに寄り添う」ことであり、自社の「提供できるもの」と「必要とされてるもの」のマッチングを発見していくことがデザイン経営の利点であろうと思います。

そこに対して、デザインの力で可視化できてれば、わかるし、気づく人も増えるのだろうと思います。

組織論としては、ピラミッド組織で定期的に組織長が異動する組織において、社会のニーズに継続的に寄り添うことができるのだろうか?という疑問も呈されました。
異動が決まっており、そこまでの目先の利益の追求がインセンティブになるような組織では、継続的な成長はできない、定量化できないユーザーの感情・心理・誘導などによる相対的な行動変容を継続的に経営に活かしていくことはできないのだ、という組織構造変革の重要性にも到達できました。個人的に収穫でした。

最後のまとめでは、サプライズとして参加者としてハンドブックの編集に携わった方がいらっしゃったことが判明し、zoom上では騒然となりました笑

どうだった?

最初は2時間半、長いなと感じていたのですが、予想以上に濃く熱い回だったので、時間の経つのも忘れるほど熱中した、というのが感想でした。

ひとりでデザイン経営宣言やハンドブックをみて思考するのではなく、多くの人の経験や知恵を集合させて感想を言い合うこの会は、個人的には非常に意義がありました。ぜひ、今後の提案や講演に活かしていければと思います。

最後に、会の終了後も余韻を楽しみたい人たちが残って、オンライン飲み会のようになりました。そこでも、グラレコの話しや資料の構造化の話し、ビジュアルシンカーとテキストシンカーの違い、みたいなのでもりあがりました。別れ際にみんなでfacebookの個人ページのリンクを貼りあって、フレンド申請が飛び合うなどしました。笑

運営の皆さん、ありがとうございました。

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デザイン経営に関する参照note


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