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オーディオのお話(8)DCD-2500NEのレビュー

前回の記事(7)で、DENON のCDプレーヤーDCD-2500NEを購入したことは書きました。自宅に届いてしばらく経ちますので、今回はそのレビュー記事を書こうと思います。

オーディオ評論家でない私は、いわゆるハイエンド・オーディオとは無縁です。今回購入したDCD-2500NEでさえ、庶民派オーディオファンの私にとっては、極めて高額な部類です。しかし、大量のCDを保有し、今後CDプレーヤーの供給が先細りすることが予想されるため、思い切ってこのレベルのプレーヤーを入手したのです。

日本のオーディオメーカーDENONはCDプレーヤーをドライブメカから自社で開発する貴重な存在です(おそらく同社のドライブメカは、他のオーディオメーカーに供給されているはずです)。

そのDENONのCDプレーヤーDCD-2500NEは、コロナ禍で一度生産終了が発表されながら、2023年秋に突如として販売が再開されたモデルです。デジタル入力端子を省いて、ディスク再生に特化しているので、D/Aコンバーターとしては使えません。メーカーのスタンスは、その機能が欲しければ、「同シリーズのアンプPMA-2500NEの方を買ってください」という考えなのでしょう。また、DCD-2500NEにはヘッドホン出力もありません。あれこれ機能を詰め込まない潔さに清々しさすら感じます。

ドライブメカは最上位モデルDCD-SX11と同一のものを使っているそうで、ディスク再生の音質をひたすら追求したモデルです。さすがに動作が滑らかで、静かにスーッと開閉します。後発の下位モデルDCD-1700NEと実勢価格が3〜4万円しか価格が変わりませんが、その違いは、ドライブメカだけではなく、電源トランスをデジタル・アナログそれぞれ一つずつ搭載したり、頑丈な筐体を奢っていたりしていて、重量はDCD-1700NEより4キロ以上重いのです。価格差以上におカネがかかっていると思います。

昨年末、都内の家電量販店で、DENONのCDプレーヤーを聴き比べた時、DCD-900NEから聴き、次にDCD-1700NEを聴きました。CDはヴァイオリンとピアノのデュオだったのですが、DCD-900NEと比べて、DCD-1700NEは別のヴァイオリン奏者が弾いてるのではないかと思うほどの違いを感じました。音像が大きく感じられ、弓が弦を擦る音が生々しくて、演奏者の表現が饒舌です。さらにDCD-2500NEを聴いてみると、900NEと1700NEほどの違いは感じません。DCD-1700NEより、ややおとなしめの印象を受けました。第一印象はDCD-1700NEの方がインパクトが大きいのですが、しばらく聴いていると、DCD-2500NEの方が、重心が低く落ち着いた印象で、聴いていて安心感があるのに気づきました。

不思議ですね。このSACD対応機2機種に耳が慣れてくると、初めて聴いたときは好印象だったDCD-900NEの音がキツイ音に聴こえ、我慢ができなくなってしまいました。カタログスペックではわからない音が違いです。これだから、オーディオは「沼」なのです。

自宅でセッティングした後のレビューに移りましょう。

再生機器は以下の通りです。

CDプレーヤー:(新)DENON DCD-2500NE (旧)マランツ CD-5001
プリメインアンプ:マランツ PM-8006
スピーカー:FOCAL Chora806
ヘッドホン:JVC HA-MX10、SATOLEX DH297ほか

これまで使ってきたCDプレーヤーは、20年前の廉価モデルMarantzのCD-5001。価格差5倍以上なので、明らかな差が出ることを承知の上の比較です。再生するのは、SACDではない一般の音楽CDです。

結論から言いましょう。全く勝負になりませんでした。

CD-5001は、20年前の最も廉価な価格帯のプレーヤーです。その割に頑張っていますが、音の滑らかに劣ります。ギスギスした音になりがちです。適切な表現かわかりませんが、数値で例えるなら、4.6も5.2も「だいたい5」でまとめられる感じになります。

DCD-2500NEは、先述のドライブメカ、筐体、電源、個々のコンデンサーに至るまで、上質なものをふんだんに投入しているだけあって、上記のような問題を見事にクリアしています。ピアノの単音を聴いても、そのタッチから余韻に至るまでリアルで精緻です。また、付帯音が無く静かです。良いオーディオ機器になればなる程、「静かだ」と感じてるものですが、この機種にもそれが当てはまります。

千住真理子さんが、愛器ストリディヴィス「デュランティ」を弾いているCDで聴き比べると、音の奥行きと拡がりが全く違います。学校の多目的ホールとコンサートホールくらいの差があります。

DCD-2500NEで、ルイ・ロルティの弾くラヴェル「クープランの墓」を聴くと、響きの繊細さが見事に表現されて、ここまで細やかで魅力的な演奏だったのか!と唖然とします。こうした優れた音源の場合、二度とCD-5001では聴けません。

久しぶりに、長谷川陽子さんのバッハの「無伴奏チェロ組曲」を聴いてみると、これほど起伏に富んで、聴き手に迫ってくる演奏だったのかと驚きます。今まで何を聴いていたのでしょう?

オーディオ試聴の際、ピアノとヴァイオリンの音は録音や再生が難しいので、機器の実力差をわかると感じていました。その考えは間違っていなかったし、ようやく納得できるレベルの音を手に入れた気がします。

このプレーヤーを買ったことで得られたことは、1000枚を超える音楽CDのコレクションを一枚ずつ聴き直す気になったことです。これは大きい。

また一歩、オーディオ沼にハマっていくすえきちであります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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