![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38896077/rectangle_large_type_2_6e03f7f8f56e2aa38d6b481183509e32.jpg?width=800)
縁 ―エン―
BIWAKO BIENNALE 2020
彦根が多彩な芸術をみるなかで、
私の人生にも新たな機縁が描かれた。
総合案内所――元ノムラ文具店。
閉店していることをその場で知る衝撃。
小学生のころ、よく図工でつかう絵の具を買いに行ってたけれど、
自宅近くにカインズができてからそっちに浮気して…。
この世は油絵みたい、塗りたくっても混ざらない
けど残るのは〈いちばんうえ〉の新しいものばかり。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38613714/picture_pc_834190d1cc5f136d5c4381bbb81a2410.jpg)
でも新しい発見もあり。
お店だったころは絶対に行くことのできなかった地下に潜入。
内は真っ暗――かと思いきや、
風刺な3作品がガラス張りまるごと闇のなかからこの世に訴えかけていた。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38613754/picture_pc_3381e2e653d4c00bd621944890490a9e.jpg?width=800)
なかでも心惹かれたのが、
ゲルニカ風なモノクロモチーフと「アベノマスク」との コラボレーション。
「アベノマスクをリメイクしました!」なんてことはよく聞いたが、
まさか「アベノマスクごと作品にしました」事例はきいたことがない。
はじめはクスッと笑ってしまったが、
目下、悲劇に抗おうにも無力なまま時間と苦しみだけが流れる、
悲しみというべきか、虚しさやもどかしさを秘めたやるせない感情を
観客に奮い立たせる作品にしばらく時間をゆだねていた。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38613757/picture_pc_61ee3b29250e9225577bce9ec2b29b97.jpg)
そこから一転、ノムラ文具店の横の裏路地を抜けた先には、
レトロを切り取った風景がひらけた。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38613761/picture_pc_12486cc4beca3eba3ea886d311fb2d1a.jpg)
山の湯。
明治創業から令和まで、5つの元号をまたにかけた彦根唯一の湯跡。
まさか去年まで屋根上の煙突から湯気が立っていたとは、
驚きで逆上せそう。
しかし実は、銭湯なんて数えるほどしか行ったことなくて
「これぞ銭湯!」の基準がまるでわからない。
だからこそ入ってすぐの番台(というらしい)と脱衣所の境界が
皆無な粋っぷりに感嘆した。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38613767/picture_pc_25da33598c1aa2fa55630ec45149b197.jpg)
今のプライバシーがちがちの世の中なら、一発お縄頂戴になりかねないのに
(でも去年まで営業されていたからOKなのか…)
なかでも一番興味がわいたコレ。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38613771/picture_pc_084cb0cf499211c2898c81d5e2b31c73.jpg)
ウソ発見器かと思った。
見に来ていた別の お客さんに聞いたら大爆笑、ゲッラゲラ笑ってはった。
正解は手を使わず髪を乾かせるドライヤー椅子。
もはや一周回って最先端、そして電気代がヤバい。
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38613776/picture_pc_1e5653da43511fd2bd63bcae4ed4bd61.jpg)
肝心のアートは風呂場とはかけ離れた〈ふかふか〉にあふれた、
これまたピンク尽くめの空間。
浴槽はもちろん、椅子も桶も、アヒルも
ぜーんぶピンクのふかふかに侵食された空間。
でも自然と合っているところがまた面白い。
ちなみに、罪悪感なかば覗き込んだ男湯。
人がいた軌跡に群がるように、蝶ともみえる白い花弁のようなモチーフが
脱衣所をノスタルジックに描いていた。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38613781/picture_pc_7e8485930bd457566e1703337b48ad5e.jpg)
それに相反するかのように、
浴室の大きさにつり合わない無機質な船が一隻。
けれどタイル床が青海を描き出し、
今にも船を沖につれていきそうな不思議な空間が
140年続いた小さなまちの銭湯に現れている。
![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38613785/picture_pc_c772473df51d08ff08925b21cc9baf6d.jpg?width=800)
どんなに慣れ親しんだまちでも、一手の芸術が加わるだけで
全く別の空間になる。
そしてそれは縁がなければ、出会えなかった空間でもあり、
そんな場所がまだまだここ彦根にはある。
2020年10月24日、次はどこに行こうか。
(写真・文 小林 真紀子)
BIWAKOビエンナーレ2020
森羅万象 COSMIC DANCE
10月10日(土)~11月23日(月・祝)
開場時間:10時~17時
休場日:水曜日
(最終入場:16:30 村雲御所瑞龍寺門跡のみ16時)
http://energyfield.org/biwakobiennale/