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vol.08 Whose City Is It?...“映え”トイレ、都心部での養蜂、宮下公園

2020/08/27 配信記事
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お盆があったようで、なかったような今年の8月。
皆さんも少しだけでも肩の力を抜いて、大切な人とゆっくりできていたらいいなと想う、今日このごろ。個人的には突然の別れがあり、会いたい人に会いに行けなかったこの数ヶ月間を、もどかしく思いつつも、人とのつながりの中で自分たちは生きているのだなと、改めて実感する瞬間がいくつもあった。オンラインではやっぱり埋められない、心を使う作業をオフにしてはいけないなと考えさせられた。そんな今週のニュースレター。

by Yukako

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【#21】MY CITY BOOKS 📖紹介!都市にまつわる私のオススメ本
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今回は、前回も好評だった、都市に関する私たちのオススメ本をご紹介している。前半は、さまざまな空想都市(巨大都市、無形都市など)の奇妙で不思議な世界を描く、 イタロ・カルヴィーノの幻想小説『見えない都市』について。そこからインスパイアを受けて空想上の都市を描いたアーティストたちの話にも触れる。後半は、自分の生きる表現として、家をつくる人々を描く『セルフビルドの世界—家や街は自分でつくる』について。消費ではなく創造することの面白さ、彼らの生き様から学べることとは何か、考えてみた。

👀 Good News of the Week

「映え」まくる、渋谷区の公共トイレプロジェクト
海外から帰ってくる度に、成田空港のピカピカのトイレに入ると妙にほっとする。「やっぱりトイレはこれがいい」そう感じる自分に、日本人というアイデンティティを再認識する瞬間だったりする。日本財団が実施する「THE TOKYO TOILET」は、渋谷区の公共トイレを著名な建築家やデザイナーとコラボし作り変えるプロジェクトだ。それぞれが一つの作品のような、ある意味過剰とも言える「トイレ建築」である。もちろん、それぞれのデザインはユニークなのだが、トイレという存在に着目した点が面白い。Tiktokでは早速、女子高生たちがトイレをぐるぐるまわって撮影している。トイレと日本社会、年々その関係性が更新されている気がするが、果たしてトイレの進化は、どこまで続くのか...。

アムステルダムのDOCKING STATIONは、「物語」を運んで走る
DOCKING STATION」は、移動式の仮設コンテナハウスに、世界中から選ばれた写真家を月に1人載せて街を移動するプロジェクトだ。シンプルなキャラバンの壁面には、「Space for Stories(物語のための空間)」の文字が。写真家は1名ずつ、1ヶ月ここに滞在し、アムステルダムで現地のクリエイティブや専門家と交流しながら、ビジュアルストーリーテリングの制作と発表を行う。2020年8月はカナダ出身の写真家・Ryan Walker。どんなストーリーもインターネットですぐに消費できてしまう時代に、「物語のためだけの空間」が街中を循環するのは、良い意味で効率性が悪くて、素敵だ。

👭 Our Urban Diary

都市における養蜂 by Mariko
京都に住むドイツ出身の友人で、養蜂について研究をしている人がいる。京都市・中京区役所の屋上を利用してみつばちを育てる京都みつばちガーデン推進プロジェクトや、銀座の銀座ミツバチプロジェクトなど、都市における生物多様性を目的とした都市型養蜂について、彼が先日教えてくれた。自然がない場所に蜂は住めないし、自然は蜂が花粉を運んでくれないと成長できない。蜂が、グリーンで健やかな都市の指標になってくれるようである。世界中で蜂が大量死している異常現象を、環境問題と織り交ぜて分析したドキュメンタリー「More Than Honey」を観てから蜂に興味があったが、都市や建築といった自分の専門と結び付けて考えたことがなかった。渋谷ハニー、銀座ハニー、京都ハニー。どれが美味しいんだろう。どんな味がするんだろう。人間のためだけの都市ではなく、蜂も住みたくなるようなBee Landscape(蜂のランドスケープ)が、サステナブルな都市のヒントになるかもしれない。

宮下公園は誰のものか by Mariko
最近Twitterで、最近開発されたばかりの渋谷の宮下公園についてのあれこれをよく目にする。宮下公園改め「MIYASHITA PARK」という名前でリニューアルしたこの公園。開発が始まったばかりの2017年頃に、物凄い数の警察が入り口に立ってホームレスを追い出していたのを目撃したことがある。キラキラとした新しいホテルと商業施設にお洒落な人々が集まり、アーティストによる発信も積極的にしているとのことだけど、渋谷区が宮下公園でやってきたことにきちんと目を向けると、なんだかなと複雑な気分にもなる。渋谷は最近、YOU MAKE SHIBUYAというクラウドファンディングも始めたそうだ。私も数年前まで渋谷区民で、数年とはいえ区民税を渋谷に納めた人間。見かけの華やかさやとって付けたような横文字にごまかされず、市民のための「公」を、それをめぐる政治や権力のあり方を、きちんと理解し、声をあげられる人間になりたいと思う。

写真家、土門拳 by Yukako
山形県酒田市にある土門拳記念館を訪ねた。昭和を代表する写真家で、徹底したリアリズムにこだわった報道写真や、寺院仏像など日本の伝統文化を独特の視点で切り取った作品を数多く発表している。仏像写真のライティングは圧巻で、一つ一つの表情が息を呑むほど、迫力を持って近づいていくる。昭和の子供たちを撮影した「こどもたち」のシリーズも、なんでこんな瞬間がこの人には見えていて、捉えることができるのだろうと思うほど、鮮明で力強い。どちらも、そこに映る人の「目」が印象的な写真だった。記念館の建物は、建築家・谷口吉生氏の設計(葛西臨海公園水族館やGINZA SIXなどを設計)で、池の辺りに静かに佇むコンクリートを基調とした空間が、土門氏の力強い写真を重厚感を持って支えているのも心地よい。身体の奥の方をどきっとさせられる、そんな作品の数々だった。

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石川由佳子 / アーバン・プロジェクト・ディレクター(WEB/instagram) 
杉田真理子 / 編集者・リサーチャー(WEB/instagram

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