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vol.05 Once we emerge from the global pandemic…フェスの未来、ロックダウン後の生活ガイド、ジャカルタの路地

2020/07/29 配信記事
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7月も終わろうとしているのに、今年が梅雨がなかなかひかない。京都に住みながら、なんだか違和感を感じていたのだが、先日、ようやくその理由に気づいた。今年は、祇園祭の音がしないのだ。コロナの影響で今年は縮小せざるを得なくなった祇園祭だが、奇しくもこの伝統の起源は、平安時代に、疫病の退散を祈願した儀式が始まりだったという。今回コロナの影響で新しく生まれた文化は、祇園祭のように、1000年先の未来に引き継がれるのだろうか。そんなことを考えながらお届けする、7月最後のニュースレター。

by Mariko

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【#12】[#17]フェスのない夏に想う、都市と大型フェス&イベントの関係
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ギリシャ危機の原因は、2004年のアテネ五輪だったという。コロナウイルスの影響で、オリンピックをはじめ、SXSWやバーニングマンなど、今年は様々な大型フェスやイベントがキャンセルとなった。オンラインで開催されたイベントもあるが、結果影響を受けた都市経済や開発について、改めて考えてみたい。大量に来訪者を招き、大規模な経済効果を見込める大型イベントは、インフラの整備や滞在施設の開発など、都市開発とは切ってもきれない関係にある、都市間競争の武器のひとつだ。一方で、大量の人間が一同に介すエンタメであり、新しい文化ということもできる。大型フェスやイベントをテーマに、おしゃべりしてみた。

👀 Good News of the Week

ドイツ発、”クアオルト”から学ぶ都市と健康の関係性
ドイツ語で療養地・健康保養地を指す「クアオルト」にヒントを得たプログラムが、日本でも始まっている。「クアオルト健康ウオーキング」といって、2020年度末までに、20自治体・地域で69コースに拡張予定という。健康寿命の延伸やメンタルヘルス向上のため、ウオーキングだけでなく、MaaS(Mobility as a Service:サービスとしての移動)、スマートシティ、自動運転といった先進のまちづくりと連携し始めているようだ。かつては薬草の有名な産地であり、ロート製薬やツムラなど名だたる製薬会社の発祥地でもある奈良県・宇陀市は、「健幸都市ウェルネスシティ宇陀市」をまちづくりのスローガンに掲げている。これからは、「住んで健康になる」都市の需要が、高まっていくのかもしれない。

ロックダウン中の音を分析したMITのプロジェクト、Sonic Cities
MITメディアラボの研究グループ、Senseable City Labが発表している「Sonic Cities」プロジェクトのデータビジュアライゼーションがかっこいい。ニューヨーク、サンフランシスコ、シンガポール、ミラノ、ロンドンなどの都市で、人間の活動による音(サイレンや車の音など)や鳥の声など、種類別にグラフ化して比較している。各都市の具体的な公共空間を比較する3Dモデルも良い。それにしても、以前紹介した#stayhomesoundといい、最近は音をテーマにしたプロジェクトをよく見る気がする。コロナによるロックダウンや自粛期間は、聴覚に意識が向きやすいのかもしれない。

バーニングマン、ブロードウェイ、アート・フェア...主催者が語るこれからのイベントの形
フェス、コンサート、劇場...これらの表現活動の今後の活路は、果たして、本当にオンラインだけなのだろうか?世界的に有名なフェスティバル・バーニングマンの主催者Marian Goodellや、ブロードウェイのプロデューサー、ロンドン、ロス、ニューヨークで行われるアートフェア・Frieze Art Fearの主催者など、様々なイベントの立役者たちが、これからのイベントのあり方について語ったインタビューが公開された。Marian氏はこの中で、必ずしもオンラインだけが選択肢ではないと主張する。彼らはイベントをやることが目的ではなく、その中心にある理念をどう異なる方法で体現していくかを考えたいと話す。人と人とのつながりや、そこから生まれる信頼をテーマとしているバーニングマン。これらの理念は、例えば医療従事者への支援やコミュニティサービスなどの形で体現できるかもしれない。イベントを消費するのではなく、そこにある理念をどうクリエイティブに体現していけるかが、これからのリアルな場を使った表現活動に求められる価値かもしれない。

ちょっとファンキーなポストロックダウンのための生活ガイド -ロンドンのクリエイティブ・エージェンシーが発表
困難な状況だからこそ、ユーモアのある創造力が世界に余白を与えてくれる。ロンドンのクリエイティブ・エージェンシー「Impero」の取り組みもその一つだ。今週彼らが、ロックダウン後のためのユニークな生活ガイドを発表した。「チリンと乾杯したあとは各自のグラスを消毒すること」「握手の代わりに拳をぶつけ、拳を爆発させることで消毒すること」など8つのアドバイスとしてポスターとアニメーションを使って遊び心満載に表現した。また、彼らはARを使ってロンドンのストリートもハッキングし、ユーザーのいる場所によって様々な生活のヒントが表示される仕掛けも組み込んでいる。今だからこそ、現実を楽しむユーモアが日常に必要なのかもしれない。

👭 Our Urban Diary

ジャカルタの変化を描いたVR作品「Replacement」 by Mariko
フィルムメーカーであり、アニメーターのJonathan Airlangga Hagardに、先日京都で出会った。フランス人の母とインドネシア人の父を持つ彼は、京都在住歴6年。もともと建築に興味があったということで、ひっそりとした路地の様子や人通りの多い街の風景など、都市への細やかな眼差しと興味を、彼の作品からは見てとれる。見慣れた東京の風景かと思いきや、小さな違和感や不思議な要素が散りばめられたTokyo Moods他、最新作の「Replacement」は12分間のVRで、ジャカルタの街の変化を体感できるようになっている。アニメーションの美しさはもちろん、その背後にある、静かだけれど情熱的な彼のメッセージを感じ取ると、なんだか胸が熱くなる。

奈良が面白い by Mariko
先日、プロジェクトの関係で奈良に滞在する機会があった。京都からそこまで遠くないにも関わらず、特に今まで行こうという気にならなかったのが、今振り返ると不思議だ。古野にあるコワーキングスペース・オフィスキャンプ東吉野の訪問のほか、天理市にある古民家を改修した私設ミュージアム「里山文庫」が個人的なハイライトだった。建築家の長谷川豪とAirbnb共同創業者ジョー・ゲビアのコラボで生まれた「吉野杉の家」、奈良県奥大和地方のume, yamazoeも気になる。そもそも、京都よりも歴史が古いのにも関わらず、ここまで奈良県民が謙虚なのはなんでだろう。コロナが落ち着き次第、改めて奈良に足を運びたいと思った。

Meaningful City vol.02 by Yukako
デザインチーム301と昨年スタートした研究活動「Meaningful City」の第二弾のイベントを、先日オンラインで実施した。「都市の意味を考える」ことをテーマに、前回はプレイス・メイキングの研究と実践を行う園田聡氏を招いてイベントを実施した。第二弾では、公開ミーティングと称し、「リアルの場に求められる意味」をテーマにコアメンバーでディスカッションをした。抽象的で結論のない話かもしれないが、こうやって延々とあーでもないこーでもないと話せる時間があるというのは、改めて贅沢だと感じる。今後も趣向を変えながら、都市の意味を様々な方法で探っていきたい。イベントの様子は、youtubeほか、noteでも記事を公開していく予定だ。

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次回の配信もお楽しみに。
石川由佳子 / アーバン・プロジェクト・ディレクター(WEB/instagram) 
杉田真理子 / 編集者・リサーチャー(WEB/instagram

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