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読書感想文 樋口清之『自然と日本人』

この本はは、日本人の風習や迷信の由来を科学的に分析し、日本文化の奥深さとその背後にある自然との関係を明らかにする書籍です。この書籍を読んで、私は日本人がどのように自然を理解し、それを生活の一部として取り入れてきたのかに強く感銘を受けました。

まず、樋口氏は日本人の風習を科学的に解明しています。例えば、日本の伝統的な祭りや儀式の多くは農業に関連しており、その季節ごとの風習は、農作物の成長や収穫のタイミングと深く結びついていることを示しています。これは、日本が四季の変化がはっきりとした気候帯にあるため、農業が生活の基盤となっていた歴史が影響しているのです。このように、自然との共生を図るための知恵や工夫が、風習として根付いていることが理解できました。

次に、迷信に対する科学的分析も興味深いものでした。例えば、「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」という迷信も、夜間の明かりが乏しい時代には、怪我のリスクが高かったことから生まれたものであると樋口氏は説明しています。このような迷信は、科学的根拠を持つものが多く、生活の知恵として先人たちが伝えてきたものだと感じました。

さらに、日本人が自然の脅威をどのように後世に伝えてきたかについて、樋口氏は神道や「祟り」という概念を通じて説明しています。自然災害の多い日本では、その恐ろしさを後世に伝えるために、神道の神々や「祟り」という形でその教訓を残してきました。例えば、津波や地震といった自然災害を神の怒りや祟りとして語り継ぐことで、次世代に対する警告として機能させているのです。これは、現代においても防災意識を高めるための重要な教訓として受け継がれています。

総じて、『自然と日本人』は、日本文化の根底にある自然との関わりを科学的視点から解明することで、日本人の生活様式や考え方に新たな視点を提供してくれる一冊です。自然と共に生きる知恵を理解することで、現代社会においてもその教訓を生かすことができると感じました。樋口清之の洞察力と分析力には、深い敬意を抱きました。

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