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【感想記事】あと少し、もう少し(瀬尾まいこ)

今回読んだ本はこちら。

  • あと少し、もう少し

  • 著:瀬尾まいこ

  • 新潮文庫

以前、同じ作者の作本「あの夏が君を走らせる」を読んだことがあります。ここで登場する主人公の太田が実は今回読んだ「あと少し、もう少し」に登場しているらしい。

そんなことを知りまして、今回手に取りました。

以前からずっと読みたいと思っていたので、ついに読めたという感じですね。


はじめに

この作品は、ある田舎町にある中学生が駅伝をするために仲間を作ったり、切磋琢磨をする中での思春期特有の心の揺らぎを繊細に描いている作品です。

本作の主人公である桝井を中心とした駅伝メンバー6名の心情描写、人間関係が駅伝の襷にかけて紡がれていく書き方がされています。
どのキャラクターも平等に深掘りされていて、読みやすいのに、読み応えもあるように感じました。

書く登場人物について思ったことを少し書きます。
すみません。ネタバレ注意の内容となっていますので、ご注意ください。

1区 設楽

いつも自身なさげで、周りに流されて生きているように見える人物であると思います。実際に、学校へ入学したら、自分たちはランク付けされる。

学力、スポーツ、性格の良さ等。そういった目に見えるもので画一的にランクづけされるものではなく、教室で過ごしている間に自然に順位が決まっていくもの。

設楽はそんな自然にランク付けされる学校の中でも下の方に位置付けられており、いつも自身なさげな様子です。

いつもおどおどしているけど、必死に取り組んでいる陸上においてある程度情熱があって、芯のある少年だと感じます。

そんな芯のあるところを周りの駅伝メンバーにも認められているところが心が温まるストーリーだと思いました。

2区 太田

冒頭でも書きましたが、太田は、別作品「あの夏が君を走らせる」で登場します。

この作品は、高校生の不良少年太田の夏休みを描いた作品です。
概要を言いますと、太田の高校の先輩に第二子が誕生し、仕事からも離れられないため、子供の面倒を夏休みの間面倒を見るというハートをーミングなストーリーです。

不良少年ですが、先輩の子供と過ごしていくうちにやわらかくなり、人としても成長する様子が描かれていたのですが、中学生の頃の太田はかなり尖っていて、ギャップがかなりありましたね。

さて、手もつけられないと言うほどではないですが、典型的な不要の太田が駅伝メンバーとのコミュニケーションを通じて走ることの喜びを再認識していく、ラストには自分の力を出し切る描写があるのですが、そこが一番本作の中では熱い展開だったと思います。

3区 ジロー

どんなんことをお願いされても断れない男、ジローです。

皆さんの周りにも頼まれると断れなくて、なんでも引き受けてしまう人っていますよね。

ジローはバスケ部に所属していたため、陸上はやったことないにも関わらず、メンバーが足りないからと言いって、半ば強引に駅伝に参加させられてしまいます。

いやいやながらも、元来から持ち合わせている明るくて陽気で、かつ前向きな性格であるがゆえ、チームの盛り上げ役をしている。そんな描写に彼の人も良さが描かれています。

最終的に、ジローは貧乏くじを引かされたなんて思うことはなく、参加してよかったと心から覚えるようになっていました。

私は少しでもやりたくないと思ったことは絶対にやらない性格です。なので、ジローは今後生きていくうえで貧乏くじ引くことが多くなるし、大変な人生を送ることになってしまうのではないか。そんなことを考えていまいた。

しかし、何事もなってみなければわからないものです。

初めは嫌でも、思わぬところに出会いがあったり、発見があったり、適正があったり。

新たな発見があり、人生をより豊かにしてくれるものかもしれませんね。ジローの姿勢を見て、少し今後の生き方について学んだ気がします。

4区 渡部

いつも気取っていて、どこか他人を見下しているような、壁を築いているようなそんな性格で、孤立しているキャラクターです。

なぜ、そんな態度をとってしまうのか。それは彼自身に触れられたくない、悟られたくないことがあるからです。

彼の場合は、7歳の時に両親が離婚をして、それ以来、ずっと祖母と生活をしていることが他人に触れられたくないことでした。両親がいないと言うことで、哀れみや同情を向けられたくないという理由でした。

自分の中に誰にも踏み込まれたくない部分、オープンすることによって、哀れみや同情時には失望されることがあるからこそ、他人を遠ざける。事情を知らない人からすると気難しい根暗な人物だと思われてしまうかもしれません。

これは、中学生という多感な時期に限らず、いくつになってもあるのではないでしょうか。特に学生の頃は多いのでしょうかね。

誰にも踏み込まれたくないところってありますよね。

私にももちろんあります。それを踏み込まれまいと他人と距離を取るようなことはしませんが、踏み込もうとされると、急に心の壁を作ることが多いです。

それは、人間として普通の心理状態なのではないかなと思うので、あまり気にしていないと言うか直すつもりはないですね。ずけずけと入ってくる方が悪いと思っていますので。

それはさておき、ここの物語で、渡部は踏み込まれたくない問題に関して、人懐っこい後輩に話します。一度口に出してしまうと、一気に吐き出してしまいます。

自分の心の内側を見せることができる人が親友。というフレーズが出てきますが、なるほど、確かにそうかもしれないと感じました。

渡部はかけがえのない親友を駅伝を通じて得られ、彼自身の人生に大きな影響を与えた出来事だったのではないかと思います。

第5区 俊介

駅伝メンバー唯一の2年生です。部長の桝井に憧れて陸上部に入部している、ザ・後輩キャラでした。

憧れだと思っていた桝井への思いが、尊敬の念ではない、形容し難いものであることに気づき、混乱している様子が描かれています。

渡部とのやりとりを通じてそれは「好き」という想いであることを知った。という場面は少し衝撃的でしたね。

この作品では、駅伝終了後各々がどのような人生を送ることになるのか描かれていませんが、どのような結果になって幸せになれたら良いなと感じました。

第6区 桝井

彼は、本作の一番の主人公である、陸上部の部長です。各々の視点で、桝井について描かれていますが、そこには共有して「さわやか」「誠実」「リーダーシップがある」などプラスの要素で語られることが多かったです。

しかし、桝井視点の話では、それとは逆の「イライラした感情」「焦り」「不安」と言ったマイナスの感情で語られることが多いです。

どんなに優秀な人であっても人間であることに変わりはなく、気持ちの浮き沈みはありますよね。

やはり周りにいる人ってとても需要で、桝井はその点仲間に恵まれていると感じます。

マイナスの感情をコントロールして、誠実に駅伝に取り組んでいる彼だからこそ人がついてきたのかもしれませんね。

ラスト、ゴールした際には、「よく頑張った」そう声をかけてあげたくなりますね。

終わりに

本作品は、登場人物それぞれの背景や心情について深掘りされている上に、区間を繋ぐ人との関わりを描いているところがパズルのピースが優しくはまっていく感じがします。

基本的に、暗い、ジメジメした描写がなく、暖かくて心温まるストリーで非常に読みやすい作品だと感じました。

2区を走っていた太田については、続編があるので、他の登場人物のその後の作品があれば、ぜひ読んでみたいと思います。

それではまた👋

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