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小説を書くときに気をつけるささやかなこと〈タオルの真実を伝えるには〉

何匁がいいですか?」

仕事中に電話で話していて、尋ねられて「?」となってしまったことがある。
タオルについて話していたのだけれど、意味がわからない。
恥ずかしながら尋ね返して、おお!と瞠目しました。

タオルを口で言い表したいと思ったとき、サイズだけでは全部が伝わらない。厚みも伝える必要がある。そこで、「もんめ」の出番となります。

尺貫法の目方の単位。貫の千分の一。一匁は3.75グラム。

スーパー大辞林

タオルの場合は1ダース単位の重さになる。布地の場合、一枚一枚が同じ重さになることはまずないため、ある程度まとめて量った方が現実的だからです。
つまり、同じ十二枚という枚数でも、重ければタオルは厚く、軽ければ薄い。

小説を書くときに、この視点を持っていただろうかと考えました。
当たり前ですが、物にはすべて重量があります。でも文章で書き表そうとするとどうしても、見た目の色や形ばかりを書いてしまいがち。そこに重さを加えてみれば、物の真実はもっと伝わるはずなのです。

「重そうな」とか「重々しい」とか、ありきたりな表現を使わずに、その物の重みを伝える表現をもっと考えてみたい。
タオルの質感を表現するため、「」という単位を持ち出すように、誰が見てもわかるものと比較することで、言葉だけでも重さは十分に伝わるはずです。
そうして読み手の目を「重さ」に向けることで、場面の伝わり方を変えたり、物自体に含みを持たせたりすることも、また出来る気がします。

そこにある物を書き表そうとしたとき、もう一つ、違う尺度を持って来てみる。
表現の幅はきっと、大きく広がるのではないでしょうか。



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