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【前編⑹】情報の影響

前回のあらすじ

人がマウントを取りたがる背後には、マウントを通じて他者より優れていると感じ、自尊心を満たすと考えられており、その心理に至る要因は『社会的比較』『過去の経験』『社会的期待』『内部的な規範』『情報の影響』の5つが考えられ、その中の『社会的比較』『過去の経験』『社会的期待』『内部的な規範』について述べました。

今回は、情報の影響についてみていきましょう。


5.情報の影響:

情報の洪水が美の概念や成功の定義を形成し、個人に対する期待を高めることは、現代社会において深刻な影響を与えています。『メディアと広告』、そして『ソーシャルメディア』が個人の心理に及ぼす影響に焦点を当て、その複雑性を考察してみましょう。

まず、メディアと広告が個人の期待を形成する要因となる点について考えます。メディアや広告は美の観念や成功のイメージを提示し、これが個人の価値観や期待を形成する一因となります。例えば、ファッション雑誌やテレビ広告が一定の体型や容姿を美として提示すると、これに合致することが美しさや成功の象徴とされ、個人はこれに適応しようとする傾向があります。

具体的な事例として、モデルやセレブリティがSNSや広告で美のスタンダードとされる場面が挙げられます。これに触れた個人は、その美の観念に合わせようとし、これに適応することで自分を受け入れるハードルが上がります。結果として、達成感や自己承認の難しさが生まれる可能性があります。

次に、ソーシャルメディアが引き起こす比較の影響に焦点を当てます。SNSでは他者の成功や幸福な瞬間が強調されることが一般的であり、これが個人に比較心を引き起こします。例えば、友人やフォロワーが豪華な旅行や素敵なイベントに参加している様子を投稿すると、これに触れた個人は自分の生活と比較し、不足感や不安を感じることがあります。

具体例として、あるSNSユーザーが他者の成功体験や幸福な瞬間を見たと仮定します。これにより、彼らは自分の生活や達成に対して不安や焦りを感じ、自分に対する期待を高めることがあります。このような比較が積み重なると、自分を受け入れることが難しくなり、心理的な負担が増すことが考えられます。

情報の影響を踏まえた上で、個人が健全な心理を維持するためには、情報を適切にフィルタリングし、自分に合った評価基準を築くことが不可欠です。また、他者との比較を避け、自分自身を客観的に見つめ直すことが大切です。さらに、メディアやソーシャルメディアとの適切な付き合い方を学ぶことで、健康な自己評価を保つことが可能です。


総じて、美の概念や成功の定義が一般的に提示されるメディアや社会の影響が、個人に対する期待を高めることは現代社会の深刻な問題です。メディアと広告、ソーシャルメディアが個人の心理に及ぼす影響には多様性があり、それらが相互に絡み合いながら個人の自尊心や自己受容感に影響を与えています。情報社会においては、これらの影響を理解し、適切に対処するスキルがますます重要となっています。


前編はここまでですが如何でしたでしょうか?
これまで5つの要素について考察してきましたが、これらの要因は複雑に絡み合い、個人の生活環境が自尊心や自己受容感に与える影響は多岐にわたっていることがわかりました。
極端に言うと、そうした様々な規範や情報が膨らんだ現代の環境が心理的欠陥を生み出しているということとも捉えることが出来るのではないでしょうか。


後編では、こうした現状に対し、望ましい社会を構築し、心理的な健康を促進するために必要だと思われる要素について考察していきます。

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