【短編小説】アンチ狩り #1
迎えが来た。
今日も朝の6時からドラマの撮影。
現場が少し遠いため、5時すぎには家を出る。
撮影期間に入ると朝早くから夜遅くまで現場に入り浸る。
しかも、それがほぼ毎日続いていく。
台本を覚える時間すらままならない。
眠い目をこすりながら携帯をいじる。
Mitter(ミイッター)を開いて、自分の名前を検索する。
僕はエゴサーチをする方だ。
なぜなら、自分の演技の評価や前作の評判などが本音で知ることができる。
現場の監督やスタッフは、いつも褒めてくれるばかりで本当のことを言ってくれない。それが、凄く嫌だった。
それに比べて、ネット民は正直だ。
自分の思ったことを素直に書いてくれる。
だからこそ、褒められたら嬉しいし、酷評されたら凄く落ち込むけれど、それが自分に足りないものであると言い聞かせて、もっと頑張ろうというモチベーションになる。
今日のMitterもいつも通り。8割くらいはファンの方が応援のコメントを投稿してくれている。
事務所が爽やか系で売り出していたため、女性ファンが比較的多かった。
また18歳のときに俳優デビューしてから、主演もいくつかやらせてもらったこともあり、コメント数も比較的多く投稿されている。
こういった暖かいコメントを見て、仕事のスイッチを入れることが、いつの間にか朝のルーティーンとなっていた。
ボーっとしながら、画面をスクロールしていく。
すると、また見つけてしまった。
アンチコメント。
演技に対する批評や僕自身が不快な態度をとって、それに対する批判なら理解できる。
しかし、アンチコメントというのは根拠のない言いがかりや容姿・存在自体を否定するようなコメントである。
どうせ、直接会えば言えないくせに、姿が見えないことをいいことに言いたい放題がよくできるなと呆れる。
それと同時に怒りもこみ上げてくる。
どうせ、リアルをネットで憂さ晴らししているのだろう。
俺はお前たちのサンドバックではない。
なぜ、このような形でアンチのストレス発散に付き合わなければいけないのか、納得できずイライラが募った。
まあ、それでアンチにそういったコメントを自粛するように促したところで、火に油を注ぐようなものであることは分かっていた。
他の芸能人もそれは分かっていて、基本的にスルーすることが一般的になってしまっていた。
でも、それではアンチのいいようになり不快だった。
警察に通報すればいい、と言う人は良くいるが、正直ネット界隈の法整備が全然進んでいない中で、相談したところで焼け石に水だろうなと、アテにしていなかった。
はぁ~…。
僕は、○○に電話する。
「あ、もしもし。いつも通りお願い。アカウント名はあとで送るから。」
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