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ひだまりの唄

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約十年前にラノベ風に作った学園青春物語です。貴方の暇のお相手に。
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2022年11月の記事一覧

ひだまりの唄 40

ひだまりの唄 40

一月一日



『明けましておめでとうございます 今年もよろしくお願いします』『謹賀新年』『A HAPPY NEW YEAR』と、どれもこれも見慣れたフレーズになってしまって、新年になっても新鮮味など微塵も無いが、この一枚だけは、特別だ。

俺はスマートフォンを開いた。

『明日の初日の出、一緒に見たいな。東の岬に七時に集合。どうかな?』というメールと共に確認したのは時刻だ。

今は六時、まだ

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ひだまりの唄 41

ひだまりの唄 41

一月二十一日



冬休みも終わりを迎えて、今日は三学期初日だと言うのに、冬休みの浮わついた気持ちがつきまとって、離れていないのか。

夏の真っ只中って訳でもないのに、紺の短パンと白い半袖で、俺は浜辺の砂の上に、ただ茫然と立っている。

『…ここは…?』

風が心地よく吹いて、果てしなく続いている虚空に手を翳す。

蒼天の空。目の前には広漠とした海がある。だが、それだけだ。

俺はその海に近付い

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ひだまりの唄 42

ひだまりの唄 42

二月十四日



今日は二月十四日、バレンタインデー。

三学期が始まったと言うもの、Yとねむちゃんと俺は練習に精を出している。

俺もYも、目の前のギターをひたすら抱えて、弦を弾いていた。

ドラムとボーカルの兼任をするねむちゃんも、最初は細く弱々しかった腕が、今ではすっかり細いながらも逞しくある。それも綺麗に声を発しながら。

マリア先輩が描いた『ひだまりの唄』。俺達はマリア先輩の理想とする

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ひだまりの唄 43

ひだまりの唄 43

三月三日



白銀が消える。その代わり、緑が顔を出す。

二月から三月へ。その一ヶ月と言う歳月は、景色を一変させる曙が、それを浮かばせる。

それに滲ませた光景は、自然の新たな門出すら感じさせるのだ。

あれからと言うもの、練習にも精を出しながら、俺とYはねむちゃんに手を合わせて、俺の家で家庭教師をしてくれた。

三学期末のテスト。ねむちゃんが丁寧に教えてくれた分、分からなかった問いもスラスラ

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ひだまりの唄 44

ひだまりの唄 44

三月九日

ーーーそれから幾日が経った春休み、三月。

音楽室、所謂、俺達の部室では、マリア先輩に向けてのライブの準備をしていた。

『よし、これで準備完了だ』

『よし、いつも通りだよ…ね!日野くん!』

『うん!そうだよ!』と、ふとYを見てみると、何度も深呼吸をしているYがいた。

『どうしたんだよ』

『…いや、大丈夫かな…ってさ』と、いつもの調子のいいYが、今日は見ない。

『何心配してる

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ひだまりの唄 45

ひだまりの唄 45

四月九日

そして、始業式。

いつもより高くから窓を眺めて、机の中に忍ばせたスマートフォンからイヤホンを伸ばし、教科書を開いたまま、それに耳を傾けている俺がいる。

『どうも皆さん、こんにちは!日野まりでございますぅ~!一週間のご無沙汰、如何お過ごしでございましたでしょうか!

それでは、本日は冒頭からお手紙を読ませて頂きますね。

こちらは…ラジオネーム、『マリー』さんから頂きましたね。

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