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2024石川・福井旅行記その3

3日目:芦原~福井~勝山~福井

 芦原温泉のホテルで目覚め、そこから福井駅へ。
 本日の予定は、まず恐竜博物館に行き、越前大仏、そして平泉寺白山神社と回る。曹洞宗の大本山である永平寺にも行けたらと思っていたが、恐らく勝山周辺で今日は終わりだろうと思い断念した。
 あわら湯のまち駅からは、えちぜん鉄道が通っている。えちぜん鉄道は大きく分けて2つの路線があり、まずは三国芦原線に乗って福井駅まで向かい、そこから今度は勝山永平寺線に乗って勝山まで向かうことにした。
 ちなみに終点の福井駅まで行かずとも、手前の福井口駅で乗り換えられたかもしれない。私はそれに気付かずに福井駅まで行ってしまったが、重いザックをどこかのロッカーにしまいたかったし、福井駅周辺を見るのも予定の1つだったので気にしないことにした。
 そういえば北陸新幹線延伸のPRポスターを上野で見たが、車両の上に恐竜が乗っかっていたのを覚えている。昔はカニだった気がするが恐竜に差し替えとなったようだ。そこまで恐竜推しなら駅前もすごいんだろうと思っていたが、予想以上にすごかった。
 そこかしこに恐竜。駅の中にも、ロータリーにも。推しているにもほどがある。特に福井で発見された恐竜が中心で、フクイサウルス、フクイラプトル、フクイティタンなどが駅を利用する乗客たちを威嚇、いや歓迎していた。

フクイティタン。たまに低い声で唸る。駅前とは思えない光景

 駅の外壁にも恐竜の絵がずらり。そして「恐竜王国・福井」と英語でフレーズも。本気すぎる。
 電車の待ち時間も含めて1時間ほどを福井駅で過ごし、またえちぜん鉄道に乗って勝山駅へ。
 列車に乗っていると、どんどんと景色が山の中へと変わっていくのが分かる。旅をしていて好きな瞬間の1つだ。失礼ながら、ちょっとガタガタするローカル線に乗っているときのほうが旅情感があって良い。聞いたことのない駅名を連呼されるのも、未知の場所を動いている感があって最高だ。ペットボトルのお茶を飲みながらボックス席に座り、なんとなしに外を眺める。『遠くへ行きたい』がBGMとして流れそうな雰囲気。こういうときは何も考えず車窓を見ていたい。贅沢な時間だ。
 しかし列車は結構な人の入りだった。日曜ということもあって家族連れが多い。みんな恐竜博物館目当てなのだろう。にぎやかなのも嫌いではないが、やっぱり日曜日にチョイスする行き先としてはまずかったか……と後悔の念がここで出始めた。
 勝山駅に到着する直前、車内にアナウンスが流れる。どうやら恐竜博物館までのバスを案内しているようだ。それに従って駅前の停留所で待つ。そこでも長い行列。もはや座るのを諦め、駅の写真を撮るなどして時間を潰してから列の後方に並んだ。
 ほどなくしてバスが到着。駅から博物館への直通で、前払い300円。案の定ぎっしり席は埋まってしまったので立った状態で乗る。バス移動の場合は仕方ない。十分想定内の出来事だ。
 街中を抜け、坂を上り、博物館へ。周囲には化石の発掘体験コーナーなどもあった。勝山という場所の特性上、体験ではなく本当に発掘できてしまいそうなところが面白い。
 恐竜博物館は人でいっぱいだった。老若男女、外国人、さまざまな人が出入りしている。この立地でこの人出というのもすごいものだ。恐竜って世代も国も性別も問わず、みんな好きなんだなと実感した。
 特にすごかったのが骨格標本の展示だ。だだっ広いステージを埋め尽くさんばかりの勢いで並べられている。ほとんどは模型だが、本物の骨が展示されているものもある。そこから回って地球の歴史、時代ごとの生物、果ては人類の進化の過程まで見ることができる。お見それしました。そりゃ王国を名乗るわけだ。

恐竜博物館内部。あくまで一部だがこの情報量

 しっかり2~3時間は堪能しただろうか。またバスに乗って今度は越前大仏へ。
 最寄りの停留所で降りると、確かに大きな建物が見えていた。あれがそうなんだろうと思って歩いてみるが、思った以上に人がいない。門前町も大抵が閉まっている。行ったときは、どうしてこんなすごいものがあるのに寂れているんだろうと思っていたが、いろいろあったようだ。イケイケの時期に大きなものを作ってしまうとあとで困るというのは夕張の実態などでも知っているが、ここも同じということか。
 しかし、そうした負のイメージを覆すほど立派な建物だった。すべてのスケールが巨大。楼門にしろ、仏像にしろ、五重塔にしろ。もっと派手にアピールすれば客も増えると思うが、惜しむらくは、恐竜博物館目当てに勝山に来る客層が求めるものとは合わないということ。でかい爬虫類を見たあとに、でかい仏様を見る気はみんなないようだ。
 しかし私のような恐竜と仏像をハシゴすることも厭わない変人もいるので、こうしたものはもっと宣伝してほしい。ここ単体だけでも行く理由にはなるだろうから。

大仏殿内の様子。周囲にも小仏群が安置され、身の引き締まる思いがする

 しっかり五重塔にも登って、バスの時間を確認しながら停留所に戻る。
 そしてふいに足を止めた。まずい、次のバスは1時間後だ。
 別に待つのが嫌いなわけではないが、場所がいけなかった。ほとんど車のない駐車場。観光地ではあるのだろうが人がほとんど入っていないことを示すように、駐車場の周りに店などない。そりゃ門前町も閉まっているのだから当然か。
 要するに、待つにしても場所がない。停留所前で1時間粘ることも考えた。しかし歩きで白山神社まで行った場合を検索してみたら40分と出たので、思い切って歩くことにした。普段は趣味の登山で山道を2~3時間歩いているわけで、そこまで苦ではない。
 もしかしたらタクシーが通るかもと一縷の望みを託してみたが、結局は神社にたどり着くまで1台も見かけなかった。この辺は都会の感覚がまだ残っているようで正直落胆もしたが、期待するだけ無駄だった。これが地方の現実。
 コンビニで栄養補給しつつ歩き続ける。この日の昼飯はファミマで買った生コッペパンとウィダーのラムネ味だった。観光にあるまじき食事内容だ。
 歩き続け、やっとのことで平泉寺白山神社に到着。結局は1時間近くかかったのでバスを待っていてもあまり到着時間は変わっていない。しかし頑張って歩いてきたのだ、その分ご利益があるだろうと勝手に思い込みながら神社の階段を上がっていった。
 この白山神社、非常に厳かな素晴らしい雰囲気だった。越前大仏とは対極をなす。越前大仏は人工の美があった。しかしここは自然の美だ。あるがままの自然の中に建てられた静謐な神域。鳥居も古いし、本殿も支えのような骨組みに囲われている。しかしそれでも特別な力を感じてしまうのはなぜだろうか。神社に対して言うのも変だが「いい年の取り方をしている」とでもいうか、人を引き付ける引力のようなものが働いている気がする。

平泉寺白山神社の入り口。引き込まれるような感覚がある

 帰りもまたバス待ちの状態になったので、神社近くにあるそば屋で食事をすることにした。
 ソースカツ丼とおろしそばのセットを注文。有名な越前おろしそば、初体験だ。カツ丼はご飯の上にシンプルにカツがのっかっている。キャベツが敷いてある福島のものとはちょっと違うようだ。
 ボリュームたっぷりのカツ、やわらかくておいしかった。おろしそばもさっぱりしていて良い。恐らく店によっていろいろ違いがあるだろうから、次来たときは福井駅の周辺で食べてみるかな。

ソースカツ丼&おろしそば。おいしかったです。ごちそうさまでした

 バスに乗って勝山駅へ。えちぜん鉄道でまた福井駅に戻り、ザックをロッカーから取り出して宿泊場所へ。もう空は暗く、夜を迎えていた。
 この日選んだのは民宿というか民泊というか、普通の一軒家を貸し出しているところだった。こういうのもまた面白いだろうと思って予約してみたが、設備もしっかりしているし、無料でカップ麺やお酒なども飲めるというサービスあふれる場所だった。しかも駅から送り迎えもしてもらえるという。そして安い。ここ重要。
 まるで親戚の家に来たかのような感覚でシャワーを浴び、眠りにつく。翌日は旅行の最終日。予定なしの自由時間と決めた日だ。
 昼の新幹線で金沢から上野に戻るので、それまでどうするか。頭の中ではしっかり考えがありつつ、すんなりとは行かないんだろうなと思いながら眠りについた。

 3日目の反省点。永平寺を除けばうまく回れた日であったが、旅先での移動の難しさをかみ締めた日でもあった。
 やはり旅先での移動はマイカーやレンタカーが有利だと言わざるを得ない。今の時代ナビもあるし、そんなに困ることはないはずだ。
 しかし旅情を感じるなら電車やバスの移動もいいものだ。別に乗り鉄というわけでもないが、なんとなくそこに住む人の生活感が感じられるのもいい。たまに学生が大量に入ってきて困ったことになるが。
 それから当たり前だけど、やっぱり人気の観光地に行くときは土日は避けるべきだ。3~4日にまたがる旅でも平日のみでやるべきだな。今回はゴールデンウィーク前に行ってしまおうと思って急遽組んだ旅程だったので仕方なかったものの。
 しかし振り返ってみると行き先にメリハリがありすぎる。何を目当てに福井まで行ったんだ?と聞かれても特に答えられない。まあ、旅なんて「なんとなく行ってみた」というだけでいいのかもしれないが。

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