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2024石川・福井旅行記その4

4日目:福井~大聖寺~金沢~上野

 福井駅近くの民宿で目覚めた。今日は最終日だ。
 ありがたいことに、その民宿では朝食も用意してくれた。トーストにサラダ、スープと豪勢なものだ。素泊まりで予約したのにこの待遇は破格だと思う。そういえば廊下の壁に宿泊客たちの手紙がいくつも並べられていた。人気のある宿なんだろう。
 朝食のあと民宿の主人に車で福井駅まで送ってもらい、電車に乗った。ハピラインふくいという名称の路線だ。2024年3月16日開業とあったので、最近できたばかりのようだ。やはり新幹線が通るとなると、いくつものプロジェクトが同時進行で動き出す。福井駅だけを見てもそれがよく分かった。いつか敦賀駅まで行ったらもっとそれを実感するのだろう。なんだか希望にあふれた雰囲気を感じて、こちらまで気分が上がるようだ。交通インフラというものはただの移動手段ではなく、地方を盛り上げる牽引役、旗手のような存在なんだなと改めて実感した。

 大聖寺駅でやることは1つ。深田久弥 山の文化館に行くことだ。
 本当は駅の近くにある九谷焼美術館にも行きたかったが、定休日なので断念した。
 深田久弥の名前は、登山を趣味にする人なら聞いたことがあるだろう。もしくは「百名山」という言葉なら、登山をしなくても聞いたことがある人が多いかもしれない。
 山の文学者・深田久弥。代表作『日本百名山』で読売文学賞を受賞。私はテレビ番組の『グレートトラバース』でこの名前を知った。登山を趣味とする者として、記念館があるなら行ってみたいと思っていたのだ。
 大聖寺駅からタクシーに乗り、山の文化館へ。大きなイチョウの木が目を引く立派な建物だった。絹織物の工場を修築したものらしい。中に入ってチケットを買うと、案内人の男性が先導しながら館の各所を説明してくれた。
 その中で私の興味を最も引いたのは資料文献室だった。深田久弥の自著はもちろん、寄贈されたという山に関する本や雑誌が大量に収められている。『山と渓谷』や『岳人』のバックナンバーも並べられていた。ここの資料だけで日本登山史のいくらかは語れるような勢いだ。深田久弥が研究していたというヒマラヤに関する本もいくつもある。
 高まったテンションを落ち着かせつつもいろいろな本に目を通し、1時間弱ほど過ごしただろうか。そのあとも展示室などを見て回り、文化館をあとにした。正直、時間が許せばもっといたかった。しかし図書館というわけでもないので長居は迷惑かもしれない。とにかく満足してまた歩き出し、帰りに深田久弥生誕の地も訪れてから大聖寺駅に戻った。

深田久弥 山の文化館の入り口。大きなイチョウが目を引く
『山と渓谷』『岳人』それぞれの第1号。貴重な資料。保存状態もいい

 電車で金沢駅へ。着いたのは昼前、新幹線に乗る時刻にはまだ1時間ほど余裕がある。
 せっかくなので何か買って帰ろうと思い、駅中にある金沢百番街というショップを見て回ることにした。
 ……のだが、人が多すぎる。月曜なのに大人気だ。食事をどこかで済ませようとレストラン街をのぞいてみたものの、どこも人が並んでいる。東京にだって支店があるゴーゴーカレーすら行列だ。こりゃ食事は無理だと判断し、自分用の土産を選ぶことにした。
 実は2日目、加賀温泉駅前のショップに寄ったとき気になっていたものがある。九谷焼の茶碗だ。正確には茶漬け用らしいが、普通にご飯を食べるのにもちょうどいい大きさだった。同じようなものを見つけたので購入。そして茶碗を買ったのだから味噌汁用にお椀も欲しいと思い、山中温泉地区で作られているという山中漆器のお椀も購入。茶碗の倍の値段がしたが、いいものを買えた。
 車内で食べようと思って弁当も買い、ホームで新幹線を待つ。相変わらず外国人が多い。しかしどこから情報を得て石川までやってくるんだろう。ちょっと外国人向けの日本旅行案内を見てみたい気もした。
 新幹線に乗り、弁当を食べ、一路東京へ。意外と寂しい気持ちにはならなかった。また来ようと決めたからだろうか。しかし大宮に着いた辺りで「ああ、いつもの景色だ……」という落胆の気持ちは湧いてきた。いや都会は都会で便利で楽しいんだけど、やっぱり空が狭い。
 そして上野駅到着。日常に戻る。
 さようなら石川・福井。また次の機会に。

 最終日は、ほぼ予定どおりに進んだ。
 4日間トータルで見ても、いろいろと細かい失敗や日程変更はあったものの満足できる旅だったといえる。一人旅ビギナーにしては上出来と言っていい。
 石川も福井も、それぞれ堪能できた。もちろん行っていない場所がまだたくさんあるので全部を味わえたとはいえない。しかし限られた時間で希望にかなう旅ができた。そして行ったところ全て楽しかった。
 次回はもっと余裕を持って計画を立てたいが……結局どこに行くにしても、行きたい場所がたくさんありすぎて迷うのだろう。幸いにもしばらく無職なので時間はたっぷりある。日本全国どこに行ったっていい。また近いうち、どこかに旅しよう。

九谷焼の茶碗&山中漆器のお椀。めっちゃ使いやすいです

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