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無職日記その5

 当方40代独身男性、仕事を辞めて2か月経過。
 現在の心境を書いていく。

1:さすがに焦りが出てきた

 正直、仕事を辞めたらもっと解放感にあふれた生活が送れるものだと思っていた。
 しかし実際は先々の不安が重くのしかかったままだ。有休の消化期間が終わってから、その思いはさらに強くなった。
 これまでの2か月間でやったことといえば、旅行とゲームぐらいだ。しかしある程度それを楽しんでしまうと、どこか虚しさのようなものがふと頭をよぎるようになった。なんというか、忙しい合間にやるから楽しいのであって、逆に自由な時間がありすぎると作業感が増す気がする。もちろん仕事よりはよほど楽しいしハマれるのだが。
 もう物事を消費・消化するだけの年齢じゃないということだろうか。自分から何かを始めるとか、自分で何かを作り出す作業をしないとこの虚しさは満たせないのかもしれない。
 そう思って、ようやく重い腰を上げようという気にはなっている。しかし楽な生活が染みついてしまって、腰を上げかけては下ろすといった感じで毎日を過ごしている。
 いかんよなあ。とりあえず生活リズムは安定してきているから、その中でやれることをやっていくしかないか。

2:資産運用ってどうなんですかね?

 株とかNISAとかiDeCoとか、いろいろな資産運用の話をよく聞くようになった。
 まだ自分は何にも手を付けていない。やはり株は怖いというイメージがどこか頭の中に残っている。
 何が怖いって、自分の意思じゃどうにもできないのが怖い。そりゃ自分に大金を動かす能力なんてないわけだから、大きな流れを読んでうまく儲けを得る、おこぼれをいただくぐらいのことしかできないだろう。しかしそれでも必死に働いて貯めたなけなしの金だ。しばらく稼ぎもないからみすみす失うわけにもいかない。
 ほったらかしにしておいたら勝手に貯まる、みたいな話も聞くが本当だろうか。勝率9割ぐらいじゃないと正直やる気がしない。
 ただ今は円安がずっと続いている傾向だ。つまり銀行に預けた金は、金額こそ変わっていないがその価値はどんどん目減りしているということだ。たとえ今銀行に1000万あったとしても、自分が60歳になるころにその価値がどうなっているか。800万、600万ぐらいになっていてもおかしくない。
 やっぱり資産運用をしたほうがいいのだろうか。しかし、昭和の時代と比べたら今の大人がやるべきことって多すぎないか。そのくせ老人たちからは「自分の時代は~」とか「なんでこうしないんだ」みたいな話を聞かされる。ネットもろくになかった時代の武勇伝なんてなんの参考にもならないのにな。

3:きちんと人間関係を作っておいてよかった

 前述のように焦りは多少ありつつも、私が無職になってもある程度気楽でいられるのは、働こうと思えばすぐ働ける状態にあるからにほかならない。
 前職で仕事をともにしていた先輩が転職後、ある会社の取締役をしている。そこで働かないかと声をかけてくださったのだ。
 しかしネックがいくつかある。まずその会社で与えられる仕事は、私が前職でやっていたことと同じだということ。要するに会社を変えただけでやることは変わっていない。だからこそ声をかけていただいているわけだが、私としては同じ仕事を続けるのはもう疲れてしまった。というより飽きた。
 そして、その会社で働くということは、前の会社の人間を裏切るという形にもなる。いわゆる同業他社、ライバルにあたるからだ。
 紆余曲折あって……などと言い訳をしても変わらないだろう。前の会社の人間関係は良好だった。今でも仲間だと思っている。だからこそ非難されるのは嫌だ。決して向こうがそう思っていなくても、私のほうにわだかまりが残ってしまう。なのであまり乗り気にはなれない。
 かといって前の会社に復帰する気もない。長年勤めていただけに、忙しいのがよく分かっているからだ。
 しかしどうしてもほかに道がなく、金もなくなって路頭に迷いそうになったら、どちらかに再就職するかもしれない。あくまで可能性の話だが。
 ただ、この可能性が残っているからこそ無職の時期に思い切ったことができるのも事実だ。こう言ってはそれぞれの会社に失礼かもしれないが、困ったときの避難場所があるというのは大きな心の支えになる。
 私は辞める際、けんか別れにならないように気を使った。なんせ辞める1年前からその意思を役員に伝えていたのだ。そのほかの幹部にも半年前には言った。これは早めに辞める意思を伝えることで、その後の仕事量の調整や人事の整理などをしやすくなるだろうと思ったからだ。
 それに有休の取得もギリギリまで延ばした。忙しい時期まではちゃんときっちり仕事に出たのだ。
 別に辞めたあとの身の振り方まで計算に入れていたわけじゃない。ただ自分なりに会社へ敬意を持ち、キリよくけじめをつけたかっただけなのだが、こうした自分の振る舞いは悪い方向には決して転ばないだろうとも思っている。勝手にいきなりいなくなったりとか、今はやりの退職代行を使って辞めたら二度とその会社には戻れないだろうし。
 そんなこんなで、何かを終わらせるときはきれいに終わらせたほうがいいよという話だ。終わってハイさよなら、もうあんたとは関係ないよって感じの態度をとってしまったら回りまわって損をすることになる。
 思うに、つくづく人に恵まれた人生だと思う。嫌な経験もたくさんしてきたが、長く付き合いのあった人たちはみんな優秀だった。これから新しい環境になるか、古い環境に戻るかはまだ未定だが、どう転んでも良き人間関係を育んでいきたいと思う。人生に追い詰められたとき、それが最良の特効薬であることが分かっているからだ。

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