感想 『黒くてでかいリュックを背負った女』


黒でかリュックを背負う女たち、そしてその疲れた顔という、なんてことない彼女らの生活の現象から、その現象のなかに結実している彼女らの生活という全体が見通されている。そしてその見通しからの記述がこれまた明快で、かつ、配慮に富んでおり、鼻持ちならねぇ感がまったくない。
「しかじかな人はぺけぺけなんだよ」みたいな、いわゆる「ハッとさせ」るような文体ではないってのも鼻もちならねぇ感のなさの由来かな。炭酸ジュースってか抹茶ラテみたいな感じだ。
黒でかリュックがいかなるものであるか、それがあらかじめ書かれていることにより、たしかに色々と気にかける人は黒でかリュックを選びそうだとすんなり入ってくる。これが後から黒でかリュックの説明があった場合だとなんか論理武装感あっていやらしかったかもしれない。そして序盤の黒でかリュックの良いところの記述がそのまま黒でかリュックを背負う女たちの在り方に繋がっていて、ちょっした伏線みたいになっている。やっぱ狙ったんじゃないか。

知的だし読みやすいし良い文章だなと思いました。


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