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主人公がスケープゴートにされる物語

皆さんはスケープゴートという言葉を聞いたことがありますか?

スケープゴートとは、ある集団に属する人がその集団の正当性と力を維持するために、特定の人を悪者に仕立てあげて攻撃する現象を指す。少数民族の迫害(ホロコーストなど)はこの一例であるし、より卑近な例を挙げると、学級におけるいじめや家庭における虐待も同様であろう。

CiNii

今回紹介するのは、主人公がスケープゴートにされてしまう物語です。


あらすじ

主人公の多崎つくるは高校生の時に行ったボランティア活動で一緒の班になった4人の同級生と仲良くなった。その関係性は卒業した後もしばらく続いていたがある日突然その4人の友達から理由も教えてもらえないまま拒絶され疎遠になってしまう。
大人になった多崎つくるは、ホームパーティーで知り合った沙羅という女性と親しくなる。話の流れで高校時代の友人と疎遠になってしまったことを打ち明けると真相を突き止めた方が良いと助言され、友人たちのグループから追放された理由を聞くために、友人に会いに「巡礼の旅」に出ることを決める。

感想

村上春樹さんの本の中では、比較的読みやすく万人受けする内容だと思います。
謙虚で頭脳明晰なアカ・スポーツ万能でリーダーシップのあるアオ・内気でで美人なシロ・聡明でユーモアのあるクロという4人の友達がキャラ立ちがしっかりしていて、自分が友人たちのグループから追放された真相に迫っていくのがミステリーっぽくもあり、ハラハラしました。
急に友人から拒絶されたつくるの悲しみは想像以上に深く、過去の経験がもたらす影響力の大きさを痛感しました。
つくるは自分のことを取り立てて個性のない面白味のない人間だと言っていましたが、駅を作りたいその一心で閉鎖的な環境である名古屋を一人飛び出して東京に進学し、その夢を叶えたつくるは素敵だと思いました。
沙羅という女性の正体や大学時代に仲良くなった年下の友人灰田の行方など真相が分からないまま読者の想像に委ねる感じで終わっているのが、村上春樹さんらしい終わり方だと思いました。

皆さんもぜひ読んでみてください。

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