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東京から岡山まで、バイクの旅。

バイクに乗って少し長い旅に出た。かれこれ一ヶ月以上も前の話だ。

行き先は岡山県。瀬戸内海を目指して東京からずっとバイクを走らせた。

ホンダ・クロスカブという名の小さなバイクだ。原付ほどは小さくないけれど、高速道路に乗ることはできない。

そんな相棒と共に、東京から岡山までずっと下道を走りながら旅をした。

事前にルートをざっくり調べてみると、片道800km近くあった。ぼくのバイクだと3日以上かかるけど、新幹線ならたった3時間半だ。

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照りつける日差し、突然降り始める雨。

寒さを感じるほどの向かい風、トンネルの中で響く車の音。

前を走るトラックからの砂ぼこりや、走る車の排気ガス。

新幹線や飛行機、列車や車の旅ではなかなか感じられないものを、小さなオートバイに乗ったむき出しの身体ですべてうけとめた。

箱で覆われた乗り物の旅とは違って、バイクの旅は道中のすべてを直接肌で感じることができる。

もちろん車と比べて危険な目に遭うことは多いし、事故を起こしたらただではすまない。命の危険はほかの乗り物よりもずっと高い。

でもそうやって、旅の最中のあらゆる体験を全身で受け止めることで、なんとなく生きている実感のようなものを得られる気がするのだ。

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旅をしている最中、バイクだからこそ感じられる景色にも出会った。

峠越えの曲がりくねった国道を、こまめにギアを動かしながらゆっくりと上る。車では入れないような細い道を通って、昔の街道をなぞるように移動した。

知らない町の知らない道を走りながら、この街で暮らす人たちの生活について想像したりもした。

突然降り始めた雨のせいで、何時間も足止めを食らった日もあった。雨の中をバイクで走り続けると、顔に雨粒が当たってチクチクと痛い。

どんな乗り物に乗って移動するかは、旅の印象をがらりと大きく変えてしまう。

道中の小さな街で体験した出来事の積み重ねは、ゆっくりと進む旅だからこそ得られるものだ。新幹線や高速道路ではあまりにも早すぎる。

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旅をしていると、うまくいかないことや突然のトラブルもたくさんやってくる。

走っている最中にタイヤがパンクしたり、スマートフォンを道路に落下させ、後続車にはね飛ばされて粉々になってしまったりもした。

日常生活のレベルを超えた事がおこること自体に、旅の面白さがある。少し大袈裟な言い方かもしれないけど、家を飛び出した瞬間から、何が起きても自分で決めて前に進むと決めるしかない。

すべてを自分で決めなければいけない一人旅だからこそ、前に進むことの感動が大きいのだ。

たくさんの人が、旅は人生と同じだと言っている理由がまた一つわかったような気がした。

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出発から4日目。ゴールの岡山県に到着した。

1日休んだあとは、さっそく東京に向けた帰りの旅が始まる。

めんどくさいなという気持ちもある。今日はサボっちゃおうかなと感じた日もあったし、このままバイクを置いて自分だけ帰ろうかなと思ったこともあった。

でも、楽しいことだけじゃなくて、めんどくさいこと、嫌だなぁと思うことも含めたものこそが「旅」なのだ。

そうやって道中多少の弱音を吐くことはありつつも、トータルで考えたら間違いなく楽しかった。人生というのもそうなのかもしれない。そうだといいなと思う。

旅の日数を重ねるにつれて、日常で起こる細かいトラブルはどんどん気にならなくなった。

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帰りは海沿いを走って、東京まで戻ることにした。

岡山から四国に渡り、香川、徳島、和歌山、奈良、三重と少しずつ東へ進んでいく。

伊勢湾フェリーに乗って愛知県に入った辺りで、だんだんとゴールが近づいていくのを実感した。

静岡県に入れば、あとは国道1号線をひたすら走るだけだ。

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出発から9日目、ついにバイクは多摩川を渡り、東京都世田谷区に戻ってきた。すっかり日が沈んで夜になっていた。

メーターを確認したら、行き帰り合わせて2000km近く移動していた。一日あたり200km以上だ。人生でこんなに長い距離をバイクで走ったのは初めてだった。

ゴールデンウィークをフルに活用したとはいえ、日常のできごとをすべて忘れて思い切り旅に出ることができてよかった。9日間の旅はまったくの非日常で、ぼく自身にとっても大きな体験になった。

いろんな場所へ移動して、いろんな場所で写真を撮って、初めての場所に足を運んだり、時にはじめましての人たちと話をしたりする。

そういった経験を積めることは無上の喜びだ。ひょっとするとぼくはずっとそんな風に生きていたいのかもしれない。

これからどんな仕事をするにせよ、誰とどこで暮らすにせよ、この旅で味わった喜びを胸に刻みながら、ぼくはこれからも過ごしていきたいなと感じた。

久々に長い旅をすることができて楽しかった。また行きたいなぁ。

今度は北海道から九州までバイクに乗っていこうかなと思う。

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