台湾の思い出
お盆休みの日本を飛び出して、お隣の国台湾へいってきた。
海外旅行自体は2年ぶりで、最後に台湾へやってきたのはもう4年も前らしい。パスポートのスタンプにはそう書いてあった。
久しぶりとはいえ、台湾にはそれなりに来たことがあったので、来たらいろいろ思い出すだろうと思っていた。だけど、実際に4年もブランクがあっては、ただでさえあやしい僕の記憶なんてなんの役にも立たなかった。
こういうときは、あまり知ったような顔をしないで、素直な気持ちになって街を歩いたほうがたのしいのかもしれない。
そんなわけで、カメラ片手に台湾のいろいろな場所を歩いてみた。
台湾のお寺はおもしろい。日本と違って建物全体が鮮やかでカラフルだし、そもそもお釈迦様自体が全身金ピカで豪華に見えるし、なんとなくより一層ありがたそうに見えた。
日本に帰ってから調べたことだけど、このお寺は仏教だけではなくて、道教や儒教も含めて、いろいろな宗教の神様が集められたところだったらしい。神様のオールスターチームと思えばわかりやすいのかな。
もし本当にオールスターが集まっていたなら、きっとたくさんの神様が同時に僕のお願い事を叶えてくれて、日本でお寺や神社に行くより数倍のご利益があるんじゃないかと思う。
そういう自分はいったい何をお願いしたのか、書きながら一生懸命思い出そうとしたけどすっかり忘れてしまった。
日が暮れてからは、夜市へ行った。
僕は台湾の夜市が大好きだ。あちこちの屋台から、美味しそうな食べ物の匂いが漂ってきたり、屋台と屋台の間を行き交う人たちのにぎやかな様子が、見ていてたのしい。
しょせん路上なので、誰も気取って食べたり飲んだりするような人はいなくて、みんなリラックスしてご飯を食べながら楽しそうに、そして素直な気持ちでくつろいで、思い思いの時間を過ごしているのもいいなぁと思う。
台湾の夜市みたいなところが、東京にもあちこちあったら楽しいよね。きっと僕は毎日いくと思います。
ロープウェーに乗ってお茶を飲みに出かけたり、台北から少し足を伸ばして田舎の方へ行ってみたりもした。
行く前まで何も知らなかったところが、少しずつ頭の中の地図に描き足されていくのが楽しい。もしもそこに予備知識がなければなおさらだ。
もちろん、旅行するまえに最低限必要な知識をたたきこんでおくことは大切だと思うけど、旅することが「予習してきたことの答え合わせ」になってしまったら、現地で得られる感動はうすくなってしまうと思う。
きっと旅の準備というのは、最低限必要なことを少しだけ知っていたら、それで十分なのかもしれない。
台湾人の友達が住んでいたので、台北から高速鉄道に乗って、台南へやって来た。
台南という街は、日本で言えば京都のように、街中に歴史が詰まっているような場所だ。そして何よりごはんがおいしい。
台南は海にも近いので、カキとかシーフードも多いし、それ以外にも食材が豊富だ。そしてこの街の朝ごはんとして有名なメニューは、なんと牛肉スープ(牛肉湯)なのだ。
台湾の人は基本的に外食が多く、朝から外でご飯を食べたり、お店の朝ごはんを買って会社や学校へ持っていったりするらしい。そう聞くと、グルメだなぁとは思いつつも、自分で料理するわけじゃないのだから、朝から牛肉スープを食べていてもそんなに不思議ではない。
僕たちはそれを、夕ごはんとして食べた。牛のテールや野菜でとったスープと、スープに入った薄くスライスされた牛肉、そこにたっぷりの生姜をのせて食べるのがおいしかった。
最後に、台南の「神農街」という場所へ行ってきた。
ここは、台南の街の中でもいちばん歴史が古いエリアの一つで、100年近く前につくられた建物が、まだまだたくさん建っている。
ただの観光地といえばそれまでだけど、友達が台南出身だったので、いろいろ地域の歴史的な話も聞きながら、台南そして台湾のことについても勉強することができた。
同じ街を見ていても、そこに知識があるかどうかで見える景色は全然ちがってくる。ただの「インスタ映えする場所」としてみるだけなのか、そこに歴史や文化を見出しながら街を歩くのか。
せっかくだから、僕はいろいろなことを知った上で街を歩いてみたい。そのためには旅に出る前の準備がいろいろと必要だ。いろいろ知っておいたほうがきっと旅を深く楽しめる。
と、そんなことを書いてみたら、そのすぐ上に「旅の準備は少しでいい」と自分で書いていたのを思い出した。
さっきと全然違うことを言っている。どうやら僕は忘れっぽいうえに、コロコロ意見が変わるようだ。どうかあまり気にしないでほしい。
そんなわけで、2年ぶりの台湾旅はあっという間に終わってしまった。
しばらく日本の外に出ていなかったけど、やっぱり外国に来ると楽しいなぁと思う。たとえ飛行機で数時間の国であっても、それは変わらない。
月並みな結論になってしまうけど、旅するっていいなぁと改めて思った。
それは楽しい非日常を味わえるからでもあるし、何よりふだん自分が東京で生活しているときに、旅の中でで出会った街や人のことを、心の片隅で少しでも思い出すことができるようになるからだ。
それは退屈で平凡で、「つまらない」日々を過ごしている人こそ、持っておいたほうがいいものなのかもしれない。この世界のどこかに、自分が今いる場所とは全然ちがうところがある、ということを知っているだけで、いろいろなことから開放されたり、気持ちが楽になることだってあるんじゃないだろうか。
たぶんそれを知るためには、見たり聞いたりするのではなくて、自分で足を運んでみないといけないのだ。
とはいえ、そんな理屈を抜きにしても、旅するってやっぱりいいよね。
もちろん、台湾にはまた近いうちにやって来るはずだ。なんて言ったって、飛行機でたった数時間なんだから。
再見、台湾!
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