小さな無人販売所の話ー６＜たかがトマト、されどトマト＞

那須高原で毎年３０種類くらいのトマトを作っているこたろうファーム。
他の野菜もたくさん作っているけれど、やっぱり人気はカラフルなミニトマトたち。
今年もトマトの種子選びの時期になった。
7月のトマトシーズンスタートから10月の終了まで、トマト好きなお客様が無人販売所にはたくさん来てくれる。
小さな無人販売所ではトマトトークに花が咲くことも多い。

「赤くて丸いトマトしか食べない女の子」

こたろうファームのミニトマトは「トマトのプチマルシェ」という名前でいろんな色や形のミニトマトが入っている。それが人気の理由でもある。
ある日、お客様に声をかけられた。
「すみません、赤いミニトマトだけって買えますか？」
もちろんできます！なので、赤いミニトマト、丸いのと細長いのと・・と袋に詰めてたら
「すみません、丸だけで・・うちの娘、トマトは赤くて丸いのしか食べないんです」
そうか、やっぱりトマトのイメージ通り、ってことね。幼稚園でもそういう絵本見たりするよね。
お母さんは自分用にカラフルなトマトを購入して満足顔。
さて、今年彼女は赤以外も食べるかな？

「トマトなの？何なのこれ？」

毎年ファンを増やし続ける不思議トマト「プチぷよ」
もう知っている方はお馴染みですが、初めて食べるとびっくりする食感と味が魅力。
トップシーズンには、お客様に試食を出すのも私の楽しみのひとつ。
まずトマトを持ってちょっと押してもらう
「あれ？柔らかい〜ぷよぷよ〜」
それからひとくちでパクリ
「うわ〜皮が・・ない？！なにこれ？」
いろんなリアクションがあるけれど、小さなお子さんや高齢の方向けにも購入されることの多いプチぷよ。
作業小屋でいるとたまに聞こえるお客さまの会話。
「これ知ってる〜？プチぷよ、って柔らかくて美味しいんだよ〜」
とちょっと得意げなのも、なんだかうれしい。
プチぷよの黄色と緑色も作ってて、味や食感はやっぱり赤が一番美味しい気がするけど、カラフルなプチぷよも可愛い。
今年もがんばろう。

プチぷよ

「どのトマトが好き？」

トマトシーズン中にお客さまとよく話すのはやっぱりトマトの種類の話。
こたろうファームではトマトは１種類ではないのが当たり前。
トマトには名前があって、色や形、味も違って、個性がある。
みんな今年の推しトマトがあったりする。
「やっぱりプチぷよだよね〜」
「私はトスカーナバイオレットが好き」
「キラーズ、甘いよねぇ」
なんてお客さまがトマトの名前も覚えてくれる。
7月のはしりのトマトから10月のなごりのトマトまで、味が変わっていくトマトを楽しく味わい、好きなトマトも変わったりする。

そして、地味だけど根強いファンが多いトマトが「サンマルツァーノリゼルバ」
生で食べても美味しいんだけど、加熱すると旨みが倍増するイタリア系の中玉細長トマト。
BBQする夏には「トマトの肉まき」少し涼しくなってきたら「トマトのすき焼き」そして王道の「トマトソース」
どうやっても美味しい。
お客さまとどんな料理にしたら美味しかったとか、桃太郎トマトとミックスにしてトマトソースしたら美味しいとか、そんな料理トークをするのも夏の楽しみのひとつ。

サンマルツァーノリゼルバ

「実はミニトマト苦手だったんです・・」

こんな告白？をしてくれるお客様も多い。
夏に野菜を買いに来て、たまたま私にミニトマトを買いに来たと思われて(笑)、勧められるままにミニトマトを買って帰ったとか。
「食べたらね・・・美味しかったんです！！」
最初は子供たち用に買ってたミニトマト、いまでは野菜が苦手なお父さんが楽しみにしてる、なんて報告も。
個人的には、嫌いな野菜は無理して食べなくてもいいと思っている。
生のトマトは食べないけど、トマトソースやケチャップは食べるんです、ならそれでいい。
食べたことのない野菜、ちょっと苦手だった野菜、でもちょっと気になる野菜。
無人販売所では、量を少なめにして販売することで、試しに食べてみようかな、って人を増やしたい。
美味しかったら、また食べたくなる。
やっぱり食べ物は「美味しい」が基本。

小さな無人販売所は夏はけっこう忙しく、仕事が早朝から夜遅くまでになることもある。
ちょっと畑に行ったり、配達に行ったりしてる間に売り切れちゃってて、急いで冷蔵庫から野菜を取り出して並べることも多い。
そして私は、その合間にお客さまと雑談に花を咲かせる（笑）
7月に入り、初めてトマトが無人販売所に並ぶ週には、お客さまの
「わー！トマト始まってるー！」の歓喜の声や
「トマト〜トマト〜🎵」の鼻歌など、
隣の作業小屋でニヤニヤしながらこっそり聞いている私。

たかがトマト、されどトマト。
みんなの笑顔を想いながら、今年もトマトの種を選ぶ。