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30代からの遺言のススメ



1「そうだ、遺言書いてみよう。」
 前回のnote執筆から「自分自身の相続をどうするか?」という思いが募り、まずは自分で遺言を書いてみることにしました。
(前回のnoteはこちらをご覧ください。

 「そんなに財産がないから…」「うちは相続ではもめなそうだから…」と遺言作成を先延ばしにしている方(私もそうでした笑)の参考にしていただければ幸いです。

2 なんで遺言が必要なのか?執筆者gommeの場合。
 遺言を書く理由としてよくあるのは、「相続発生後のトラブルを避けるため」だと思います。例えば、既に相続人間で仲が悪い場合等は、是非遺言を書いていただき、「争族」を予防していただきたいところです。
 私自身が遺言を書いてみようと思った理由は、トラブル防止というよりはもっとライトな理由で、「相続人の手間をできるだけ省くため」です。
 まずは前提として、私自身が亡くなった場合、相続人は夫及び子(1人 4歳)です。私の両親は健在(他県住まい)です。
(1)実家の「負」動産問題
 私の実家はN県の田舎で、父方で田畑・山林を所有しています。
①父死亡→②私死亡となった場合は、父の所有不動産を私が相続するか相続放棄するか(田畑・山林の管理負担を考えながら)検討することになります。
 問題は、①私死亡→②父死亡となった場合です。この場合、私の子(=父にとっての孫)が父の相続人になります(法律用語で「代襲相続」といいます。民法第887条2項)。
 遠方の田畑・山林は固定資産税の支払いや管理負担が生じますので、私自身は相続放棄も含めて検討しなければならないと思っているところですが、万一、父より先に私の方が先に死んでしまったときに、子が軽々に相続の承認をしないよう注意喚起しておきたいと思っています。
 なお、「負」動産問題については、相続土地国庫帰属制度の利用も考えられるところです。稲垣経営研究所様の↓の記事が大変勉強になりますので、是非ご覧ください。

(2)遺言なく私が死んだ場合、原則、遺産分割協議は夫、子のみではできない。
 現状、私の子(4歳)は未成年であり、遺産分割協議を含む法律行為は原則、親権者(=夫又は私)が代理して行うことになります。私が死亡した場合、夫が単独の親権者となり、子の代理人として法律行為を行うことになります。しかし、遺産分割協議においては、夫自身の相続財産の取り分を増やすと子の取り分は減ってしまいます。即ち、夫自身の利益と夫が代理する子の利益が衝突してしまいます(法律用語で「利益相反」といいます。)。
 利益相反にならないように遺産分割協議を行うためには、家庭裁判所に申立てて子の特別代理人を選任し、特別代理人と夫の間で遺産分割協議を行うことになります。
 ここまでの内容は、相続発生による諸手続きをこなしながら行っていくには、かなりハードルが高い内容かと思います。
 この点、遺言があれば、遺産分割協議を省略して相続人の負担を軽減できるのではと思ったことも遺言を書くきっかけでした。

4 遺言の種類
 遺言の種類は次の3種類です。
○自筆証書遺言
○公正証書遺言
○秘密証書遺言
 このうち、秘密証書遺言は現在、年間で100件ほどしか利用がなく、かなり稀ですので、今回は省略します。
 自筆証書遺言はその名の通り、自筆で作成する遺言です。おそらく一番よく利用されている形式だと思います。作成方法は後述しますが、気軽に作成できること、費用負担が少ないことがメリットです。デメリットとしては、一定の要件を満たす必要があり、不備があると無効になってしまうこと、保管中に紛失や改ざんの恐れがあること、家庭裁判所での検認の手続き(民1004条)を行う必要があること等があげられます。但し、これらのデメリットについては、令和2年7月10日に新設された法務局の「自筆証書遺言書保管制度」の活用により相当程度、解消可能です(これについては今後noteに記載予定です。)。
 公正証書遺言は、遺言の文案を考えた上で、公証役場で公証人に遺言を作成してもらうというものです。公証人は法曹OB/OGで、専門家に内容を確認してもらえること、遺言を公証役場で保管してくれるので、紛失や改ざんのおそれがないこと、検認の必要性がないことがメリットです。ただし、相続財産や分割方法によって、作成費用(数万円程度)が発生します。公正証書遺言の報酬については、こちら↓をご覧ください。
https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02/2-q13

5 執筆者gommeの遺言作成
 私の場合、自筆証書遺言での遺言作成を行なってみることにしました。中長期的に私の保有資産や家族の変動があった場合、遺言の書き直しも検討したいと思っており、公正証書遺言だと費用がちょっともったいないなぁという思いがありました。また新しく始まった自筆証書遺言書保管制度にも興味があり、利用してみることにしました。

6 自筆証書遺言の作り方
 私の場合、法務局での自筆証書遺言書保管制度を利用する予定であるため、こちらの法務局のホームページを参照しながら作成しました。https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html

【用意するもの】
○紙(法務局自筆証書遺言書保管制度を使う場合、一定の条件を満たしている必要があります。法務局のホームページに掲載されている様式を印刷して利用するとスムーズです。)
〇ペン(ボールペン等。鉛筆やフリクション等消せるものは×)
〇印(実印でなく認印でも可)

【書き方】
 自筆証書遺言なので、とにかく自筆で書かなければなりません。遺言のうち、財産目録部分のみについては自筆でなくてもよくなりましたが、財産目録1枚1枚に署名、捺印が必要です。
 まず、相続財産を洗い出した上で、相続財産それぞれについて、相続人に対しては、「相続させる」相続人以外に対しては、「遺贈する」と書いていきます。
 遺言の最後に必ず作成した年月日を書き、本人の署名、捺印を行います。
 間違えないように書いていくので、落ち着いて書ける時間(最低限1時間くらい)を確保して作成することをおすすめします。また、資産を指定して相続分の指定を行う場合、預金通帳等を手元に置いておくと、預金を特定して記入する際に便利です。

7 注意事項 
(1)遺留分について、
 民法の考えとして、相続財産は遺された相続人らの生活保障の役割があると考えられています。例えば、配偶者、子(仮に1名とします。)がいるのに「全財産を愛人に相続させる」と遺言してしてその通りになるとしてしまったら、配偶者、子は生活に困窮してしまうことが考えられます。
 そこで、相続財産のうち一定割合を、相続人らの最低限の取り分(遺留分)として保証するという制度があります(民1042条)なお、遺留分については、配偶者、子、直系尊属にはありますが、兄弟姉妹にはありません。遺留分は相続人の法定相続分の1/2(直系尊属のみが相続人となる場合には1/3)となります。
 遺言との関係では、遺留分の主張の方が勝ちます。例えば上記のケースでは、配偶者及び子はそれぞれ相続財産の1/4ずつを愛人に請求することができます。
 私の場合、夫、子が遺留分請求することは考えにくいのですが、それぞれ1/4以上は相続財産が渡るように遺言を書き、遺留分の問題が生じないようにしました。
(2)付言事項について
 遺言には法律上の効果が生じない事項(付言事項)についても記載することができます。特に法定相続分とは異なる配分をする場合、「なぜその分け方にしたのか?」や家族への思いを記載しておくと、自身の思いが伝わりやすく、相続手続きをスムーズに進めやすくなります。
 私の実家の負動産問題は、付言事項として遺言に記載しました。
(3)遺言執行者
 遺言執行者とは遺言内容を実現させるため、諸手続きを行う人です。
 遺言内で遺言執行者を指定してもいいですし、指定しなくても無効ではありません。ただ遺言執行者を定めておくと、相続に関する手続きが簡易にになるメリットがあるため、私の場合は夫を遺言執行者として指定しました。

7 実際に自分で書いてみた感想
 当初は相続人である夫、子の相続財産の分け方を指定できればと思っていましたが、実際に書いてみると「これまでお世話になった母にも遺産を残したい」という想いが生じ、遺言内に母への遺贈の文言を入れました。法定相続ではできないことだったので、書いてよかったです。大げさかもしれませんが、自分の人生を振り返るきっかけとなりました。
 これまで「やらなければ!」と思っていたことが一つ終わりましたので、肩の荷がおりた感覚です。
 それでは自筆証書遺言保管制度利用のため、法務局へ提出してきます!

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