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相続の基礎

初めまして!金融機関で企業内診断士をしていますgommeと申します。
突然ですが、皆様は「相続」にどんなイメージをお持ちでしょうか?
「うちは家族仲がいいから大丈夫」「まだそんな年齢じゃないし…」
といった思いの方も多いでしょう。

学生時代の法律相談経験、金融機関での相談経験から、私自身は、「相続はむしろモメるもの」と認識しています。モメない相続を見聞きするとむしろびっくりしてしまうくらいです笑
ともかく、多くの人にとって「親族の死→相続」はいつかは向き合わなければ事柄だと思います。
今回は、相続発生時に検討すべき基本的な事項についてまとめました。

(1)相続発生!まずは何をする?
まずは、現状把握をしましょう!
①相続人は誰か?
被相続人(亡くなった方)の出生〜死亡までの戸籍謄本を取得します。
法改正による改製(戸籍の作り変え)、婚姻等があるため、多くの方の場合、現在戸籍謄本+改製原戸籍謄本(過去の戸籍謄本)で合計2〜3通程度になることが多いです。
結婚や離婚、転籍によってによって他市町村へ本籍を変更している場合、転籍前の市町村にも改製原戸籍謄本を請求する必要があります。
ここまでで、それなりの手間がかかってしまいますが、今後金融機関などに対して相続の手続きを行う場合、出生~死亡までの戸籍謄本一式を取引金融機関等それぞれの窓口に提出する必要が出てきます。

そこで便利なのが、「法定相続情報一覧図」です。
法務局に戸籍謄本一式等を提出→登記官が書類一式を確認→相続人に対して法定相続情報一覧図の写しを交付するという制度です。
この法定相続情報一覧図の写しは金融機関での手続き、不動産の相続登記の手続きに用いることができます。交付にかかる手数料は無料です。詳しくは法務局のホームページをご覧ください。

なお、相続人が判明したときの法定相続割合は次のとおりです(民法第889条)。
(法定相続割合)
配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人。
その上で、
第一順位 子【配偶者1/2 、子1/2】
第二順位(子がいない場合)直系尊属(被相続人の親、祖父母)【配偶者2/3 直系尊属1/3】
第三順位(子も直系尊属もいない場合)兄弟姉妹【配偶者3/4 兄弟姉妹1/4】

②被相続人の資産、負債を調査
 相続は被相続人の資産も負債もすべて引き継ぐことになります。
そのため、被相続人がどのような資産、負債をもっていたのか調査する必要があります。
 資産としては、預金、不動産、有価証券などが考えられます。また、被相続人の契約していた生命保険についても調査が必要です。
 負債としては、被相続人自身の借入のほか、保証債務についても相続の対象となることに注意が必要です。
 被相続人が資産・負債について記録を残していてくれればいいのですが、記録がない場合には、通帳の有無や銀行からの郵便物を調べる等が必要になってきます。

③遺言があるか?
遺言にも種類がありますが、
〇自筆証書遺言、秘密証書遺言:家の中を調べる。
なお、自筆証書遺言については、法務局に保管できる制度もあるため、法務局にも照会する。
〇公正証書遺言、秘密証書遺言:公証役場へ照会
により、遺言の有無を確認します。
遺言がなければ、相続人間で遺産分割協議をしていくことになります。
なお、遺言書を自宅で見つけたとしても、その場で開封するのではなく、家庭裁判所に提出して、検認を受けてください(民法1004条)
(R5.3.16訂正 秘密証書遺言についても、公証役場で有無を照会できます。ただし、秘密証書遺言は作成後本人保管となるため、遺言がどこにあるかは、相続人が探さなければなりません。)

(2)相続承認、放棄の検討 
(1)の調査の結果、被相続人の資産より負債が多いならば、相続放棄も手です。
相続放棄は、相続があったことを知ったときから、3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります(民法915条、938条)。相続放棄をした場合、最初から相続人ではなかったものとみなされます(民法939条)ので、被相続人の借金を支払う必要がなくなります。
ただし、相続放棄を検討しているのであれば、被相続人の預金を引き出したり、資産の売却を行わないことをお勧めします。法定単純承認(民法921条)とみなされて、相続放棄ができなくなる可能性が高いです。

(3)相続に備えて…
争族を防ぐという観点からは、できれば「遺言書を書く」ことが望ましいです。
ですが、親にいきなり「遺言書を書いて」というのは、親の反発を招く可能性もあり、なかなか子としても言いだしにくいのではないでしょうか?
また、自分自身が遺言を書こうとしても、遺言書は法律上も備えるべき要件が様々あり、作成するのにハードルを感じる方も多いと思います。
(ただ、今では様々な手引書が販売されておりますので、できればチャレンジしていただきたいです。)

そこで、まずは今日からできる対策として二点提案です。
①まずは自分自身の資産・負債の棚卸をして、記録にしておく。
先述の通り、遺言を書いてもらうのが一番いいのですが、それが難しい場合、資産・負債の棚卸をして、それを記録に残しておく、未来の自分の相続人と共有して「見える化」しておくことをお勧めします。
 例えば、
 〇ノートに一覧を書いて、わかるようにしておく。
 〇家計簿アプリで、どこの銀行に預金があるのか日ごろから情報共有しておく。
 〇銀行からの通知や保険の書類等はわかりやすいようにまとめておく。
等は資産・負債の調査の手間を減らしてくれます。

②日ごろから家族とのコミュニケーションを行っておく。
 親としては、普段あまり話さない、めったに帰省しない息子・娘から「遺言を書いたら?」等と言われると、反発してしまう気持ちも分かります。
 日ごろから家族のコミュニケーションをおろそかにせず、信頼関係を気づいておくことも重要です。
 家族の会話の中で、子から「実は自分(子)も相続に備えて遺言を書いたんだ。」「将来的に実家はどうしようと思っているの?」等の話ができれば、それが呼び水となって、親の思いを聞き出し、実のある相続の話ができるのではないかと思います。
 家族は一番身近な人間関係でありながら、どうしても(それ故に?)ちょうどよい距離感が難しい関係と感じています。日ごろのコミュニケーション・信頼関係の蓄積が、遠回りでも、争族の防止になると考えます。


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