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不合格者が語る「東大の入試問題が難しい理由」

今回は「東京大学の入試はなぜ難しいのか」について。


巷では「東大の入試問題は難問ではないが、本質を突いた問題が多い」「当たり前すぎて受験生が見逃してしまう定理や原則を問うてくる」など、様々なことが言われている。


たとえば有名どころで言えば、次のような2003年の数学での出題があげられる。

「円周率が3.05以上であることを証明せよ」


これに対しては「円周率の定義を理解していないと解けない、数学の本質的な理解を問うている」とか「単なる受験勉強の枠に留まらない向学心を求める東大らしい良問」などと評価されている風潮がある。


さらには、この問題の出題年がゆとり教育の導入により円周率の簡略化(3.14→3に)が行われると囁かれた年だったこともあり、「これは日本最高学府からの、入試問題を通じたゆとり教育への反対声明だ」といった嘘か本当か判断しようのない主張もみられる(東大は何も言っていないので本当に判断のしようがない)。


そのほかにも、三角関数の加法定理の証明だったり、あるいは他教科での出題を部分的に取り上げて「東大の入試問題は素晴らしい!」「東大入試で思考力を鍛えよう」などと、いささか持ち上げ過ぎなのではないかと思ってしまうような言説が溢れるほどではないにしろあったりなかったりする(出版社や塾業界もビジネスだからね)。


今回はそのあたり=「東大入試は良問ばかりなのか?」について、受験生時代に30年分の東大の過去問を解き、各予備校の東大模試を5度受験し、果ては東大入試に2度不合格になった筆者の見解(独断と偏見に満ちた、ただし恨みや学歴コンプレックスは1ミリも混ざっていない、時の経過によって獲得した客観的な視点から)を述べようと思う。




東大の問題は「本質的」という嘘


東大入試では本当に「本質を問う問題が出題される」のだろうか?


答えはイエスでありノーでもある。
より正確に言えば「たまにはそういう年もあるけど、ほとんどは普通の問題ばかり」である。


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