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ピリオドを打つ.


好きな人がいる。
相手は年上で、同性である。

「同性を好きになったんじゃない、好きになった人が同性だったんだ」
という綺麗な言葉を使いたいけれど、どうしても受け入れてもらえない悪いことをしているような気分になる。
やっぱり「同性を好きになってしまった」なんだろうか。

この"しまった"を捨てきれないのは、世間的な問題だけじゃなくて相手が私に振り向いてくれる確率が低いのもあるんだと思う。
好きになってもらえるかもらえないか以前の問題で、そもそも恋愛対象じゃないかもしれない。
可能性が0.00%ではなかったとしても、僅かな可能性にかけるほどの勇気が私にはあったかな。

それなりに好きアピールはしてきたつもりだ。でも虚しいことにアプローチすればするほど、仲良くお友達になっていくのだった。
ご飯に誘ってくれたり、誕生日プレゼントを用意してくれていたり、一緒に帰るためにいつも待ってくれたりしたのは、可愛い後輩だからって分かってるはずなのに舞い上がってた。少し期待してた。

「いつか良い人が現れたらいいね」という彼女の言葉が何よりも、誰に言われるよりも心に刺さって苦しかった。まだ告白もしてないのに振られたような気持ちになった。
その良い人に一番なってほしかったのに。

本当は、私が仕事を辞める時点で縁を切るのが正解だったのかもしれない。
でもどうにか繋ぎ止めたくて、叶うかどうかも分からない約束を何個もした。遊園地に行こう、旅行をしよう、電話で話そう。
その日付がすぎたら会う理由がなくなる気がして、あえて予定を立てずに放置した約束だけが有り余って。
もはや約束というより私の一方的なお願いに近い。どうか私を忘れないで、ずっと心の中に置いてという願いだけが独り歩きしている状態。

いっそ伝えてやろうかと何度も考えた。私の退職なんてまさに絶好のタイミングだと思った。
私のことで悩めばいい。どんな形でも印象に残ればいい。彼女が私のことをどう思っていたとしても、予期せぬ告白によって心を引っ掻き回してやろうって。
…考えては留まってを繰り返し。
結局手元に残ったのはフワッとした約束だけ。


見返してみると、彼女を好きになってからというもの、想いを書き綴ったnoteが幾つもあった。公開していない記事を含めると5、6はあるだろう。まるでストーカーだけど、溢れて仕方なかったんだと思う。本人にぶつけられない想いを全てここに詰め込んで発散させていた。
でもそれもここで終わり。

約1ヶ月ぶりに会った彼女は、新しいプロジェクトを任されて忙しそうで、どこか逞しくて、なんだか別人のように見えた。

いや、彼女は何も変わっていない。一番近くにいたはずなのに、確かに彼女の毎日に私は存在していたはずなのに、少しも変わっていない。「明日会える」が当たり前じゃなくなったことに押し潰されながら、この日を待った私とは違う。
ああ、私がいなくても彼女にとっての「毎日」はあるんだと痛感した。

その時やっと、職場が一緒だったからこそ成り立っていた関係なのだと気づいた。
彼女との年齢の差も、物理的な距離も、日々の忙しさも、お互いの存在の大きさも、全てが関係を続けていくには違いすぎる。

引っ掻き回してやろうだなんて、そんな考えを持っていた自分が途端に恥ずかしくなって消えてしまいたかった。
片想いを断ち切る時がきたんだと、そう思った。




好きな人がいた。

相手は年上で、同性だった。

いつか完全に吹っ切れたら、「一時の気の迷い」とか言い出すかもしれない。
気が迷った1年間は楽しくて嬉しくて、悲しくて虚しくてぐちゃぐちゃで、幸せだった。


本当に本当に先輩が好きでした。

という記録。

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