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Amazon Go in サンフランシスコでキャッシャーレス体験

(こちらは、Mediumで2018年11月27日に投稿された記事のnote転載です)

株式会社クロスデジタル 代表取締役・株式会社ブロックチェーンハブCommunity Manager & Industry Analyst の増田 剛です。

今回は、レジなし店舗として知られている「Amazon Go」について取り上げてみたいと思います。

2018年1月、シアトルに1号店をオープンしたAmazon Goですが、その6号店がついにサンフランシスコにオープンしました(2018年10月23日)。
今月シリコンバレーに出張する機会があり、体験してきました。

Amazon Go サンフランシスコ店の住所は 300 California St Ste 100, San Francisco で、Wells FargoやFirst Republic Bank等の金融機関が集まっている、いわゆる「フィナンシャルディストリクト(金融街)」に位置しています。

観光地の Ferry Building Marketplace からほど近いこともあり、来店客は一般買物客半分、観光客半分といったところでしょうか。おかげで、店内で写真を撮っていても特段不審がられることもありません。

営業時間が月曜日〜金曜日の午前7時〜午後9時で、週末は閉店。金融街という土地柄でしょうか。割り切っていますね。

さて、入店に先立っては、各自スマホに「Amazon Go」アプリをインストールする必要があります。

このアプリはAmazon.comの米国アカウントの情報と連携し、本人確認・決済が行われます。従って、日本国内アカウントとは別に、米国アカウントを作成する必要があります(国内住所や国内発行クレジットカードを登録することで問題ありません)。

入店時には、自動改札機のような機械にアプリ上に表示されるQRコードをかざします。スマホが必要なのはこの時だけです。

初来店の人はここでかなり戸惑うようで、サポートの為に店員1名が張り付いていました。

店内は非常に整然としています。通路は広く、天井は高く、商品が整理整頓されて並んでいます。カメラで正常に認識する為にはある程度の空間が必要なのでしょう。

商品の種類は他のスーパーマーケットに比べれば、かなり少ないようです。基本的にパッケージに入った商品ばかりで、野菜・果物のような生鮮食品の取り扱いはありません。カメラで認識しにくい為でしょうか。尤も、オフィス街なので、品揃えの点で特段不便はありません。

店員は揃いのオレンジ色の制服を着て、フロアに常時2〜3人。商品棚の整頓、品出しを行なっています。商品棚の整然っぷりから、かなり整頓をしっかりやっている印象です。

そして、肝心のカメラ。

天井に沢山設置されていると聞いていましたが、本当に沢山。このカメラ群が商品棚の重量センサーと連携して、誰が何を手に取ったか、を判別しているようです。試しに、商品棚から取って戻して、カバンに入れて出して、他の棚に置いて戻して、をやってみましたが、しっかり認識されていました。

品物は一旦棚を離れると、棚から取った人のバーチャルカートに入るらしく、注意書きには

Any item you take from the shelf is automatically added to your virtual cart, even when you hand that item to another shopper in the store.

とあり、人から人に手渡しされてしまうとさすがにそこまではカメラで追えないようです(重量センサーと連係できないから?)。

興味があるのが、成年のIDに紐付いたQRコードを未成年が持って(スマホを借りる等)店に入り、アルコール飲料を持って店を出たらどうなるのか、ということ。プライバシーの観点で顔認証は導入されていないので、スマホ(QRコード)の持ち主が真の持ち主かどうかは峻別出来ず、レジがないので年齢確認をする関門もありません。残念ながら(?)、テクノロジーでは解決できなかったようで、Amazon Goでは、アルコール飲料売場付近に店員を配して、有人でのチェックを行っているようです。

店を出る時は、”Just Walk Out”するだけ。いや、分かっているんですが、結構緊張します。決済完了してメールで送られてくる決済内容を確認するまでは、本当かな?という感じが拭えませんでした。

しっかり、買った分だけ決済されていました。Trip Time(店内滞在時間)が記載されているのは面白いですね。何かに使うのでしょうか。

慣れてくると、棚から手に取って、そのまま店を出る、という行動は自然に、何の感情的な摩擦もなく(frictionless)なっていくのかもしれません。決済というアクション・プロセスが、消費者からはどんどん「視えなく」なっていく。入店時のQRコードによる認証も、遠からず不要になるものと思います(技術的にはそんなに難しくはなさそう)。

この体験のなかで、ふと、「限界費用ゼロ社会(The Zero Marginal Cost Society)」の議論を思い出しました。決済というアクション・プロセスが不可視になるどころか、決済の背景たる費用(Price/Cost)という概念自体が消えていく世界へ。今はまだ絵空事のように思えるものですが、技術水準のエクスポネンシャルな進歩を考えれば、有り得る未来かもしれません。そうすると、商取引のツールとしての貨幣システムはどうなるのか、興味深いところです。