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UXデザインとサービスデザイン

おはようございます。

本業では医療機器の制御ソフトを開発している私ですが、よりユーザーから喜ばれる機能を開発していきたいというきっかけから、UXやHCDに興味を持ちました。

そこから、2021年度のXデザイン学校大阪分校ベーシックコースを受講し、この1年間、UXデザインについてとことん学んできました。

総括として、私のUXデザインに対する理解がどのように変化したかを記録に残したいと思います。

一言で変化をまとめると、企業でやっていくべきことは、「ユーザーのためのUXデザイン」から、「企業とユーザーのためのサービスデザイン」という理解に変わりました。

1.研修受講前のUXデザインに対する理解

そもそも私がこの研修を受講しようと思ったきっかけは、「よりユーザビリティの高い機能を開発したい」でした。

研修受講前に書いた自己紹介の記事でも、UI設計能力を向上させるために、UXデザインを学ぶ。みたいな書き方をしていました。

1年前にどんなことを考えていたか、思い出しながら、書き出してみます。

まず、私は本業で医療機器のソフトウェアを開発して4年目を迎えていました。ほぼ丸3年間ソフトウェアの設計開発をしてきたのですが、以下のようなモヤモヤが常に付き纏っていました。

・ユーザーが自分の開発している医療機器を使用している場面に立ち会ったことがなく、どのように使われているのかを知らない。
・自分が設計したGUIの使いやすさに自信がない。
・そもそも開発する機能がトップダウンで、本当に必要な機能なのかわからない。

多分このまま自社に留まってソフトウェア開発だけをしていたら、このモヤモヤは一生解消されないだろうと思い、そこで出会ったXデザイン学校に通ってみようと決めました。

その時に考えていた、UXデザインの研修を受講した後になっていたい姿といえば、まずユーザー調査を行うことによってユーザーが既存製品をどのように利用していて、利用シーンごとにどんな要求があって、既存製品で満たせていないポイントを見極める。

次に、上記の既存製品で満たせていないユーザーの要求をどのような機能で満たせるかという目線で新機能を検討する。

最後に、検討した新機能をユーザビリティテストを行うことによってユーザーの要求が満たせていることを確認する。

このような、既存のユーザーの運用は大きく変えずに、既存の運用の中で困っている課題を解決するための手段くらいの認識でした。

なので1年前に考えていたUXデザインとは、ソフトウェアのユーザビリティを向上させるための手段であり、開発の域からは出ていませんでした。

さらに、UXデザインを本気でやろうとするとかなりの工数がかかるし、既存製品で大部分のユーザー要求をカバーできていると考えており、細かい要求を新しく発見してそれを解決するための機能を実現するための手段くらいの認識があるUXデザインを時間をかけて実施することに抵抗がある会社の方針もなんとなく納得していた自分がいました。

ソフトウェアエンジニアとしては、自分が設計開発したソフトウェアによってユーザーにとってのユーザビリティが向上したと言いたいけれど、会社としては誰にでもわかりやすいスペックを上げて、短期スパンで製品を世に出していきたい。この溝がどうやったら埋まるのかなぁ。とモヤモヤしていたのが1年前です。

2.勘違いに気づいた

上記のような意識でいざXデザイン学校の研修が始まると、思っていたのと全く違いました。

ユーザーの要求をどうやって拾ってきて、それをどうやって機能に落とし込んでいくのかの手法を具体的に学んでいける場だと思って受講したのですが、まず最初に言われたのが世の中のあるべき姿を考えて、それを企業が目指す姿と一致している必要があると。

企業にとってのビジョン・パーパス・ミッションがあって、それをまず明確に定義してそれに見合ったサービスを考えていくと。

まずこの研修では全ての軸がユーザーだと思っていましたし、当初は「企業」という言葉なんて出てこないと思っていました。

そんな衝撃を1発目に受けた後、企業目線とユーザー目線を行ったり来たりしながら新サービスを考えていくという、思っていたのとも違うし、めちゃくちゃ難しいし、という課題に苦しみ続けた1年間でした。

研修を終えて、企業で新規サービスや新機能を考えていく中で実施していくべきことは、UXデザインだけではないと気付けました。1年前に私が理解していたUXデザインだと企業に浸透しないのはなぜか、「UXデザインを企業に浸透させるにはどうしたら良いか?」と質問する人が、UXデザインに対してどのような理解を持っているのかが少しわかった気がします。

3.研修受講後のサービスデザイン&UXデザインに対する理解

Xデザイン学校を1年間受講した後にUXデザインに対して、どのような理解に変わったかを書きたいと思います。

最も特記すべきことは、UXデザインを実践して成功させるためには前提条件として、企業を含めたステークホルダーのためのサービスデザインがセットで考えられていることが重要だということです。

1つのサービスを作るためのUXデザインを実践する前に、まず以下のような観点でサービスをデザインしなければなりません。これにわかりやすい順番はなく、何回もイテレーションしてサービスを形にしていくものという理解なので、以下の3つ検討を繰り返し回していくものだと考えています。

①企業のビジョン・パーパス・ミッションを定義する
②自分ごと化してある観点でのあるべき姿を考える
③生存戦略となるビジネスモデルを考える

ビジョン:未来のありたい姿
パーパス:企業の存在意義
ミッション:企業戦略

それぞれ上記のように定義されますが、まずは企業が目指す方向を自分自身が理解しないといけないのがスタート地点にあるべきだと知りました。

今まで私が理解していたUXデザインはここをすっ飛ばして、いきなりユーザーから話を始めていたことが、企業への導入に壁がある一番の原因だったのだと思います。まずはサービスデザインからでした。

サービスデザインは、その企業が将来どのような世界を作りたいのかを定義することがスタートです。そのためには、企業が今現在どのようなビジネスを行っているかとか、どのようなサービスを展開しているかとか、そういった知識をまずとことん調べて理解することが必要でした。

そうして企業が目指す未来のありたい世界を理解し、自分ごと化して考えられるようになった上で、企業のアセット(強み)である技術や販売網、販売チャネルなどを活かしてどのようなサービスが提供できるかをとことん考えるのです。

そのサービスを考える時に取りこぼしてはいけない観点が、生存戦略となるビジネスモデルを作ることです。

生存戦略と対になるのが成長戦略です。成長戦略は既存事業を成長させていくことであるのに対して、生存戦略は新規事業を探索し、生き残るための戦略を作ることです。

では生存戦略とは具体的にどんなことを考えないといけないのかですが、私は以下がキーワードになると理解しています。

・データ活用によるビジネス展開
・プラットフォーム化によるビジネス展開
・参入障壁の高さ

まず、上2つについては、その新規ビジネスが将来的にスケールアップできる可能性を示すことが重要だということです。

ユーザーの行動データや購入データなどのさまざまなデータを取得できるようなサービスにすることによって、取得したデータを活用して次の新規サービスを探索することができます。アプリケーションを提供してそれを用いるとユーザーが得をする形で、個人と紐づけたサービスの形にすることが多いのではと思っています。

もしくは、サブスクリプションというサービスの形が最近多くなっていますが、買い切りではなく、サブスクリプションのサービスにすることによって、継続的にユーザーのデータを取得することができるようになるので、サブスクリプションの形にできるのであればより良いでしょう。

少し前に読んだ「アフターデジタル」という本では、中国のアリババやテンセントがどのようにデータを活用してビジネスを展開してきたかが書かれていて、まさにこのことを言っているのだと思いました。

また、新規事業をプラットフォーム化して、他の企業・事業が乗っかって来れるような形にすることによって、その事業が頑張らなくても勝手にそのビジネスがプラットフォームビジネスとして拡大してく形を作ることも重要な観点であると学びました。

そして3つ目ですが、参入障壁の高さはもちろん重要です。どれだけ良いビジネスを作り出しても、参入障壁が低く、他の企業がすぐに真似できるようなビジネスでは短期間のうちにレッドオーシャンになってしまうからです。

UberEatsやメルカリはかなり成功した新規ビジネスだと思いますが、参入障壁が低いばかりに今は競合のサービスが溢れてきていると感じています。このままいつまでも成長し続けるには、かなりの努力や工夫が必要になってくるのだろうと思います。

大きくは上記3つの観点で、まずはステークホルダーのことを考えたサービスデザインをしっかり行うことが、後に続くUXデザインに意味を持たせるために必要不可欠なのであるということが、この研修を受講しての一番の学びであると考えています。

Xデザイン学校大阪分校2021 ベーシックコースを受講しての全体に対する振り返りは以上にします。

また、UXデザインやサービスデザインに関する気づきについて、どんどんnoteに書くことで整理&アウトプットによる理解の深化に努めていきたいと思います。

それでは。

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