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言葉遊びについて

1.はじめに

「「ふとんがふっとんだ」」

これはいわゆる“ダジャレ”というもので、
一種の「言葉遊び」です。
しかし、“ダジャレ”と聞いて舐められては困ります!

言葉遊びは、隠喩や反語のように言語生活を豊かにするための修辞的効果を担ったレトリックの一つです。

今回は、言葉遊びを独自の分類法をもって、
実際にどのように使われているかを分析します。

その際に、主に自分の過去作である『【韻文詩】お呪い』を用いて説明します。

2.「言語娯楽」と「言語遊戯」

言語学者であるピエール・ギローは、
言葉遊びを以下の2つに区別しました。

①言語娯楽
→なぞかけやしりとりなど言葉を用いて遊ぶもの。

②言語遊戯
→地口やもじり、語呂合わせなど言葉について遊ぶもの。

ここでは、②言語遊戯について検討します。
私は、②言語遊戯をさらに以下の3つに分類しました。

①音韻的言語遊戯
②語彙的言語遊戯
③表記的言語遊戯

ここからは、この3つの分類について述べていきます。

3.音韻的言語遊戯

→主に頭韻や脚韻、同音異義語など、音声的な類似がある語を並べたもの。

「子種/kodane/」と「空音/sorane/」のように母音が一致しています。
音の響きに心地良さが生まれ、言葉と言葉のつながりを強固なものにさせます。

「それともなに、うぶなあららぎくんは、私のチャーミングな私服姿に見とれちゃって、至福の瞬間ってわけ?」

西尾維新『化物語 上』

上のように、同音異義語を用いたものもあります。
序文で述べた「ふとんがふっとんだ」はこの分類に当てはまります。

4.語彙的言語遊戯

→①文脈とは別に、それぞれの言葉が持つ意味同士が連鎖しているもの。

スーツの上からトレンチコートを羽織り
密集したビルのあいまを縫い歩く

ごましお「【詩】小石とクレヨン」

↑衣類関係の語彙で連鎖しています。

上の画像は、すべて語彙的言語遊戯の①です。

→②同義語。意味の二重性(ダブルミーニング)。

その顔が石鹸と摂津大掾せっつだいじょうを聞こうという希望との二つで、有形無形の両方面から輝いて見える。

夏目漱石『吾輩は猫である』

上の引用は、語彙的言語遊戯の②であるダブルミーニングの例です。
漱石も言葉遊びを用いていたのですね!

5.表記的言語遊戯

→漢字やアルファベットなど、文字の表記の特徴を利用したもの。また、同じ漢字を用いて意味が異なるもの。

「崇」と「祟」は非常に似ている漢字だが、一部形が異なります。
その違いが、手を上げ下げして、まさに祟り神を崇めているように見えなくもないですよね。ですよね!

「それにしても、見蕩みとれるの蕩れるって、すごい言葉よね。知ってる? 草冠に湯って書くのよ。私の中では、草冠に明るいの、萌えの更に一段階上を行く、次世代を担うセンシティヴな言葉として、期待が集まっているわ。メイド蕩れー、とか、猫耳蕩れー、とか、そんなこと言っちゃったりして」

西尾維新『化物語 上』

漢字の表記による言語遊戯は、視覚を利用した特殊な言葉遊びです。書かれたものでしか表現できないレトリックもあるのですね!

6.おわりに

言葉遊びは、単なるユーモアを誘うものではなく、表現の幅を広げる一つのレトリックです。
以上のように分類した言語遊戯を上手く使いこなして、自分にしかできない言語表現ができたらいいなと思います。

こうして考えてみると、「【韻文詩】お呪い」は、言葉を介して発動する呪文のように、言葉を介して我々に呪いをかけるお呪いだったのかもしれません。

みなさんも是非さまざまな言葉遊びを用いて創作活動をしてみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


参考文献
ピエール・ギロー(中村栄子 訳)『言葉遊び』(白水社、1978年)
小松原哲太『レトリックと意味の創造性』(京都大学学術出版会、2016年)
西尾維新『化物語 上』(講談社、2006年)
夏目漱石『吾輩は猫である』(新潮社、2003年)

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