都会
あの人は、わたしにとってどうでもいい人だ
わたしは、あの人にとってどうでもいい人だ
その冷たさの中に息をひそめて
わたしたちは生きている
好き、嫌い、憎い、死ね
言葉が、想いが、ナイフみたいに飛び交って
みんなが知らないうちに傷つけあって
冷たい、暖かい
そんな感覚がどんどん麻痺していって
自分のなかに流れる血の生臭さだけが
よくわかる
これが当たり前だった気もするし
これが異常だった気もする
どっちなんだろう
もうわからなくなってしまった
みんな誰にも興味がなくて
みんな誰かに恋焦がれている
それに気づいてしまったら
きっとおかしくなってしまうから
みんな知らないふりして生きている
あの人は、わたしにとってどうでもいい人だ
わたしは、あの人にとってどうでもいい人だ
その冷たさの中、息をする
のどを通って肺にたどり着いた空気が
わたしの心臓を凍らせる
痛いけれどわたしは確かに生きていて
この冷たさが本当は心地よいことに
わたしたちはもうとっくに
気づいている
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